精神科Q&A
【0027】 お酒を飲み始めると止まらないのは、アルコール依存症なのでしょうか。
Q: 24歳の女性です。仕事の関係で週に1,2回必ず飲み会があり、日本酒2合とウィスキー4、5杯(シングル、ストレート)くらい飲みます。もっと多いかもしれません。いつも少しだけにしようと思っていても、飲み始めると止まらないのです。私はアルコール依存症の可能性がありますか。久里浜式アルコール症スクリーニングテストでは12.7点でした。
林: アルコール依存症になりかかっている状態だと思います。一番のポイントは、「少しだけにしようと思っていても、飲み始めると止まらない」ということです。これは「コントロール喪失飲酒」であると言えます。つまり自分の飲酒行動を自分でコントロールできないということです。依存症と診断するためにもっとも重視するのは、このコントロール喪失飲酒があるかどうかということです。久里浜式アルコール症スクリーニングテストでも2点を大幅に超えていますので、ますますアルコール依存症の疑いは強いと言えます。ただし、飲酒量からいうと、大量飲酒者には入らないようです。大量飲酒者というのは、毎日、日本酒に換算して約5合以上飲む人のことですので、あなたの場合はこれには該当しないと思います。とは言うものの、依存症かどうかということは、飲酒量もさることながら、コントロール喪失があるかどうかのほうが問題ですので、今は特に問題が出ていないとしても、将来はかなり危険だと思います。
Q: 私の場合、一日中アルコールを飲まなければいられないということはないので、アルコール依存症ではないと思っているのですが。
林: アルコール依存症でも、一日中アルコールを飲まなければいられないような人はなかなかいません。大部分のアルコール依存症の人は、何日間かは平気で断酒できるものです。ですから、「一日中アルコールを飲まなければいられないことはない」ということは、決してアルコール依存症の診断の反証にはなりません。それともうひとつ、アルコール依存症の人の多くは、自分より飲酒量が多い人のことを考えて、「あの人は依存症かもしれないが、自分はあの人に比べたら大した飲み方ではないので、依存症ではない」と自分を正当化することも特徴のひとつです。あなたの場合も、「一日中飲まなければいられない人」を想定して自分と比べることで、無理に安心しようとしているのではないでしょうか。
Q: それでは私は今すぐにお酒をきっぱりやめるべきなのでしょうか。仕事の関係で、お酒を全く飲まないというわけにはいかないのですが。
林: アルコール依存症の人は、飲むのをやめられない理由を色々と見つけてくるものです。仕事の関係でどうしても飲まないわけにはいかないというのも、よくある理由です。客観的に見て、それが本当に理由なのか、それとも言い訳なのかをよく考えてみてください。
それから、あなたの場合、今やってみるべきことは、本当に飲酒をコントロールできないかどうか、もう一度真剣に試してみることでしょう。具体的には、その日の会で飲む量を前もって決めておき、それが守れたかどうかを後で振り返ってみてください。どうしても決めた量が守れないようなら、やはりコントロール喪失飲酒であることは間違いないので、断酒すべきです。アルコール依存症は進行性の病気です。悪化してからでは、断酒することはかなり難しくなります。自分がアルコール依存症か心配になった時が、断酒のチャンスです。