精神科Q&A
【0384】 酒を飲むと何者かに乗り移られたかのように変身してしまいます
Q: 30歳の女性です。現在は無職です。『アルコール依存症』のように、毎日飲んだり飲まずにはいられない状態ではありませんが、飲むと酒乱の症状があります。
複雑酩酊?のように、人格が多重人格のように変貌し、後から教えられておぼろげに覚えているときもありますが、そのほとんどの記憶は見事にありません。
自分でも普段なら考えても、思いつきもしないようなことを話すそうです。
例えば、自分は実は中国人だとか、旅館のおかみ、奏者など、何物かが乗移っているとしか思えない、思わず笑ってしまう変身を遂げるそうです。
慣れている友人たちは、『また始まった!面白い』と笑える時と、暴力的になり、収拾が付かず、手におえない時があると言います。
もちろん、次の日に物凄い自己嫌悪に陥る事は言うまでもありません。
変身してしまう時のお酒の量ですが、一貫しておらず、ビールやサワー5杯程度で変わってしまう時と、それ以上の量を朝まで飲んでも意識がしっかりしている時とがあり、自分でもいつ変わってしまうのか、なぜそんな作り話?をするのかが分りません。
友人曰く、突然瞬間的に変身するそうです。
ただの飲みすぎかとも思いますが、ボーダーラインを超えてしまったのかとも悩みます。
お酒は好きなので、いつも今日こそは楽しく飲もうと心がけているのですが、コントロールがききません。やはり、アルコール依存症になるのでしょうか?
林: 病的酩酊です。アルコールは止めることをお勧めします。
病的酩酊とは、比較的少量の飲酒で、人格に異質な変化をきたすもののことです。激しい興奮を伴うこともよくあります。普通の酩酊の症状、つまり足元がふらついたり、舌が回らなかったりといったものはほとんど認められません。そしてあとでその時のことをほとんど覚えていないのが普通です。つまり、あなたの記載は典型的な病的酩酊です。(複雑酩酊とは違います)
病的酩酊の原因はわかっていません。そういう体質であるとしか言いようがありません。そして最大の問題は、病的酩酊の時に、人を傷つけてしまう可能性がかなりあることです。あなたのメールにも、「暴力的になり、収拾が付かず、手におえない時がある」とありますが、いつその暴力によって人を傷つけてしまうかわかりません。アルコールを止める以外の方法はないと思います。
病的酩酊そのものは、アルコール依存症とは直接の関係はありません。つまり、病的酩酊があるからといって、アルコール依存症であるとは言えません。
けれども、上の説明をお読みになって、アルコールを止めるべきであると理解され、それでも止められない場合は、アルコール依存症と診断せざるを得ません。もし止められないのだとすれば、アルコール依存症として治療を受けるべきです。