精神科Q&A
【0392】「どうしていいかわからない、死にたい」を繰り返す「うつ病」の妻
Q: 私の妻(33歳)はメンタルクリニックに通っていますが、診断は「うつ病」で生い立ちでの出来事が複雑に絡んだ難しいケースと言われています。極度の寂しがりやで傷つきやすく、自分が悪い、自分のせいだ、自分がいなければいいいと自身の心を傷つけています。
薬を大量に飲んだり、手首を切ることをします。その反対に、うまくいかないことは人のせいにします。自分のやっていることに問題ないと思っています。周りの人間が非常識なのだと主張します。
側で見ていて、妻の努力が足りないのは見えています。
人とのコミュニケーションを円滑にするために自分が何を治せばいいのかを考ようとしません。相手が悪いとしか言いません。
「自分自身で治せる部分はあるよ」といくら話しても聞きません。そして「どうしていいかわからない、死にたい」を毎日繰り返します。子供がいますが、「一緒に死ぬ」ということを繰り返します。このようなことをまともに聞き入れると彼女のペースにはまってしまい危険と思いながらこのような状態で会社に通うことができず、私自身も限界です。
妻の理解不能な言動に黙っていられず、「何がしたいのか!はっきりしろ!どうすれがいいかしっかり考えろ!考える事をやめるな!」と怒鳴ってしまいます。上記のように厳しくいうと、「死ぬ」といいます。優しく対応すれば、「非常識な人間がいるから私はよくならない」といいます。
うつ病が改善する先が見えず困った状況に陥っています。実家のサポートも拒み、育児サポートを拒み、医師は私の話を聞いてくれないといい、本当のことを話せない。といいます。
もう4年続いています。「うつ病」とは本当に治るものなのでしょうか。
林: 奥様はうつ病ではないと思います。ご質問のポイントが最後の一行、「もう4年続いています。うつ病とは本当に治るものなのでしょうか。」にあるとすれば、答えははっきりとイエスです。うつ病は治ります。もちろんすべてのうつ病が治るとは言えませんが、大部分のうつ病は治ります。ただし、奥様はうつ病ではないと思います。
そう私が判断するのは、決して、「治らないから、うつ病ではない」という論理ではありません。あなたのメールに記された奥様の状態の、ほとんどすべてがうつ病にはあてはまらないものだからです。
奥様の本当の診断は、おそらく何らかの人格障害だと思います。境界型人格障害かもしれません。
奥様のような症状の方を「うつ病」であるとする誤解から、「うつ病は治る」というのは本当だろうか、という疑問が生まれることになります。まさにあなたのご質問がそうです。
うつ病についてのこういう誤解を解消するために私が書いたのが擬態うつ病です。奥様をうつ病ではないとなぜ私が判断したかは、この本をよく読んでいただければわかると思います。また、擬態うつ病に関するQ&Aもご参考になると思います。
もう一度繰り返します。奥様はうつ病ではないと思います。ですから、うつ病についてのあなたの知識は、奥様への対応にあてはめることはできないとお考えください。