精神科Q&A
【0237】短期精神病性障害とはどのような病気ですか
Q: 夫(32歳)のことで質問します。2001年の12月に、「家の外でたくさんの人が自分の悪口を言っている」という幻聴が出て精神病院にかかりました。症状は発病する2カ月くらい前からうつ病のような感じが続き、そのうち思考がまとまらず、職場で今までできていたことができなくなりました。
発病後、服薬により、1週間か10日くらいで幻聴は消えました。医師からは短期精神病性障害と診断されましたが、これはどのような病気なのでしょうか。
また、その後服薬を続け日常生活はしていますが、どこか以前と違い、意欲がわいてきません。夫は学生時代は大学野球の選手で、卒業後は忙しくて野球そのものは出来なくても、時間をみつけて観戦に行ったりもしていたのですが、今はテレビの野球にもあまり興味がないようです。ほかのことにも全体に意欲がなく、なんとなく一日が早く終わるのを待っているような感じです。そんな状態がもう三ヶ月も続いています。
今かかっている医師は信頼しているのですが、診察はただ様子を聞いて(それ自体、よく聞いてくれることはくれます)薬を出すだけ、という感じです。カウンセリング等を受けた方がいいのでしょうか。
林: 短期精神病性障害とは、統合失調症(精神分裂病)にかなり類似(または同一)の症状があるものの、経過が非常に短いものを指します。診断基準では精神病症状(幻覚、妄想などの症状)の期間が一ヶ月未満です。これは統合失調症の一種なのか、統合失調症そのもので、たまたま非常に軽かっただけなのか、それとも全く別の病気なのかは今のところわかりません。ただこういうこと(つまり一ヶ月未満のうちにきれいに治ってしまうこと)があるのは確かです。
そこであなたのご主人の経過ですが、結論から言うと短期精神病性障害というよりむしろ統合失調症(精神分裂病)と診断すべきと思います。
まず、最初はうつ病のような症状だったこと。これは統合失調症の前駆症状として非常に多いものです。(たとえば【0244】もお読みください)
また、自分の悪口を言われているという内容の幻聴(これを被害的内容の幻聴といいます)は、統合失調症で典型的に見られるものです。
さらに、この幻聴がよくなったあとの漠然とした意欲低下は、統合失調症の陰性症状と考えられます。
そしてこれまでの全経過が、前駆期を含めて4ヶ月ほどですので、短期精神病性障害とは言えません。
それではなぜ短期精神病性障害と診断されているのか。それはわかりません。メールからは判断できないような情報があるのかもしれません。または、先生も本当は統合失調症と診断していて、しかしこの病名を告知した場合のショックが大きいと配慮されたのかもしれません。
今後は今の先生の治療を続けて受けるのがいいと思います。陰性症状だとした場合、カウンセリングの効果はあまり期待できません。通常の外来診療で、薬を出してもらいながら話をする(これももちろんカウンセリングと言えます)のが最善だと思います。
ただしこちらもお読みください