精神科Q&A

【0186】 5年前から「うつ病」が続いている夫は擬態うつ病でしょうか


Q: 主人は57歳の会社員です。上司に目をかけられ出世街道を歩んでいましたが、5年ほど前に胃潰瘍になり、その治療をしていたのですが、二ヶ月ほどして何もする気にならないと言うようになり、神経内科で軽いうつ病と診断され、その後ひどくなって医者からも勧められ一ヵ月半ほど会社を休みました。それまで仕事もバリバリやっていて会社を休むなんて本人も不本意だったようです。辞めさせられると困ると言って全快してないのに仕事に復帰し、毎日疲れて帰ってきました。で、翌年又七ヶ月ほど休み、入院もしました。医者は結局6回かえたのですが どこでも薬を出してくれるだけで特に効いた薬も無く今に至ってます。最近は悪い頃から比べると 良くなっているように思うのですが 本人は変わらないと言ってます。やる気が起きないとか言ってます。本当に何もせずゴルフも行かなくなったし集中力が出ないと言って、新聞も読みません。何をするにも丁寧というか要領が悪いと言うか時間がかかり見ているこっちがイライラするほどです。何か読んでも字を追ってるだけで 頭に入っていないようです。私が言ったことも忘れてしまうこともあります。笑うようにはなってきましたが、顔が笑っていないように思います。とにかく暇があると寝てます。仕事は窓際族になったのですが そこの上司と相性が悪いのかイヤミを言われたり怒られたりして、毎日いやいや出勤しています。
 私は本も何冊も買って読みました。本を見るともっと早く良くなるはずなのに・・・と 最近ではどうしてよいのか分からなくなってしまいました。あまり長くて良かったころの主人のことが分からなくなってきていて 前からこんな人だったのかも?って思ったりして・・・
 今回先生の本を読んで、主人は擬態うつ病なのかもしれないと思いましたが、なにしろ本通りの症状ではない部分もあったりして・・難治性のものかもしれないとも思うし・・・。他に心配してくれる人も無く、ずっと一緒にいる私もホトホト嫌になってきていて、早く良くなって欲しい!!と そればかり考える毎日です。今も主人はコタツで寝ています。 ちょっとうんざりです・・・。  

: 御主人は、うつ病だと思います。擬態うつ病の可能性は低いと思います。
 もともとバリバリ仕事をなさっていた方が、中年前後に発症するのは、うつ病としては典型的です。うつ病がはっきりする前に胃潰瘍が出ることも時々あることです。いったん休んでも、何とかご自分から頑張って出勤してしまったこと、それに今の症状(ほとんど何に対しても意欲がない、笑いがない)も、かなり典型的なうつ病と言えます。
 とすると、明らかに経過が長すぎるので、難治性うつ病かなと考えておられるのも理解できます。ただ、うつ病が長引くことの一番多い原因は、抗うつ薬の量が不十分なことです。これはうつ病の医学部講堂にも書きましたし、擬態うつ病の175ページにも書きました。まずこれまでの治療で十分な量の抗うつ薬を十分な期間お飲みになったかどうか振り返ってみる必要があると思います。数年間で六回医者をかえたとのことですが、もしかするとどの先生にも十分な期間治療を受けずにかえたのではないでしょうか。
 それからもうひとつチェックすべきことは、脳の他の病気がないかということです。症状がかなり典型的なので、他の病気の可能性は低そうですが、もしこれまでに検査を受けていないのであれば、脳のCTかMRI、それから甲状腺ホルモンの検査などを一度は受けるべきでしょう。
 脳の他の病気がなく、また抗うつ薬ですでに十分治療して、それでも長引いているのであれば、難治性のうつ病ということになります。その場合は、抗うつ薬に他の薬(リチウムなど)を追加するか、それでも効果がなければ電気けいれん療法を考慮するべきです。
 うつ病が長引くと、家族の方が参ってしまうことはありがちですが、ご本人の方がもっとつらいということを常に頭において、最善の治療を続けることが大切です。「うんざり」というような気持ちは、ご本人に伝わり、さらに回復を遅らせることもよくあります。



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