精神科Q&A

【0017】 70歳の父が、うつ病で入院治療を受けましたが、退院してからもぼんやりした状態が続いています。薬のせいでしょうか。


Q: 父は若いころからずっと健康でしたが、2年ほど前からだんだん元気がなくなり、うつ病と診断されて通院治療をしていました。なかなかよくならず、不安や不眠も強くなったので、去年3ヶ月ほど入院しました。それで落ち着いたことは落ち着いたのですが、退院してから気力がなく、ほとんど外にも出ず、毎日ぼんやりした生活を送っています。それが半年続いてます。不安や不眠は確かによくなり、それは薬の効果だと思いますが、こんな状態ではこのままぼけてしまいそうで心配です。薬をやめるとか、変えるとかした方がいいと思うのですが。

林: まず第一に重要なこととして、お父様の病気が本当にうつ病かどうかということがあります。お父様は70歳ですね。高齢の方のうつ病は、認知症(痴呆)と区別がつきにくいものです。主治医の先生はなんと言っておられますか。

Q: 今の時点ではうつ病か認知症(痴呆)かはっきりわからないと言ってます。でも入院中のCT検査では、特に脳の萎縮とかはないとのことですが・・

林: i認知症(痴呆)でも初期は検査しても萎縮は見つからないのがむしろ普通ですので、「今の時点でははっきりわからない」というのは正しい見解だと思います。

Q: 薬のせいで性格が変わるとか、ぼけはじめているということはないですか。入院前は、不安な様子はあっても、ぼんやりしたり元気がなかったりということはなかったのです。入院してからぼんやりしてしまったので、原因は薬だと思うのですが。

林: 薬で性格が変わるとか、ぼけるということはありません。ただし、のむ量が多いと眠気が出るので、その時は一時的にぼけてしまったように見えることはあり得ます。お父様のケースがそうかどうかは、薬の量にもよりますので、主治医の先生にお聞きになるのがいいと思います。

それから、入院前には不安が強かったということですが、そういう時は不安のほうが目立つので、気力のなさはそれに隠れていたという可能性もあります。

Q: 実はこの一週間は薬をやめてみてるんですが、変わらないんです。だから、量がどうとかということではなくて、薬で性格が変わったんだと思うんです。脳に作用する薬なんだから、性格を変えないとは言い切れないでしょう。

林: 絶対にあり得ないかと言われれば、誰にも答えられないとは思いますが、まずあり得ないとは言い切れると思います。

それより、薬をやめてみていることは主治医の先生にお話したほうがいいですよ。

Q: 年齢も年齢ですから、このまま家の中にいるだけだとぼけてしまうと思うんです。だから薬をやめてから、少し強制的に外に連れ出したりしてるんです。表情とか見ると、多少は元気になったように見えますよ。

林: これは難しいところです。

もしうつ病だった場合には、薬をやめて、しかも強制的に動かすことはかえって悪化させる可能性が大です。薬をやめた直後は、副作用が消えた分だけは多少よくなったように見えることもよくあることです。日がたつと悪化してくるものです。

もし痴呆であった場合は、強制的にでも(「強制的」の程度が問題ですが)散歩させたりするのはプラスになることもあります。結局、はじめにお話したように、診断がうつ病か認知症(痴呆)かという問題に戻ります。高齢の場合、この区別はとても難しいことがあるものです。かと言って、いつまでも診断を決めないわけにはいきません。医者の立場としては、うつ病ならまず確実に治りますので、うつ病の治療を辛抱強く続けたいところです。

 

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