精神科Q&A

【0645】20歳の息子の症状はうつ病? 薬の副作用?


Q20歳の息子(大学3年生)について質問いたします。私は父親(50歳代)です。
 息子はまじめな子で、遊びもこの年代の子と比べたら範囲がせまく、正直友達も少ないです。
それでもゼミの一環として、大学2年の冬にスキーに合宿で行ってきましたが、どうもいまいち乗り切れず帰ってきてから、落ち込んでる様子で、よく寝ていました。
新学期を迎える前の3月後半から非常に神経質な様子になり、テレビもあまり見ず、よく寝ていました。
 そんな状態を見て妻が聞くと「生きたくない」といったそうです。
それでうつ病ではないかと思い、近くのクリニックに行き診断したところうつ病といわれ薬を頂きましたが、その時の先生の対応があまり良くなく(あまり対話も無く、ぞんざいだと妻は言っておりました)同席して聞いていた、子供も納得をしなかったようで薬を飲みませんでした。

 それで2日後に別のクリニックに行き、再度診断してもらいました。この時は最初息子の診察があり、それから私と妻が呼ばれました。
 先生によると、中学生のころ、クラスの人の視線が非常に気になっていたと言ったそうです。この事は私と妻も初耳でした。それで先生によると話すときの目の動き、首の振り方など気になるところがある。以前からあるかと聞かれましたが、特にそのようなことはありませんでした。先生の見立てはうつ病ではあるが精神分裂病(統合失調症)の疑いも少しあると言っておられました。ただ私も妻も家系にそのような人はいません。
それで帰宅しその日から薬を飲むようになり今日で3日目です。飲んでる薬はセルシン2MG、ドグマチール50MGトリプタノールです。
 少し前書きが長くなりましたが、昨日、今日と気になることがあります。
 昨日、夕食時(あまり食はすすみません)左足で貧乏揺すりをしていましたが、その内両足で始めました。食事の間ズーっとです。それも大袈裟にいえばガタガタ音がするくらいの調子でした。
 それと今日ですが、妻が午前中外出して帰ってくると「おかあさん、どこに行ってたの」と聞いたそうです。
おかあさんという言い方をしたのは、小学生以来です。
 あと「うがい」を何回もしたり、部屋の中を行ったりきたりしていたそうです。夕飯時もまた両足貧乏揺すりをズーとしていました。
 このような行動はうつ病の特徴でしょうか。ぜひ知りたいのですが。
宜しくお願いします。



: 記載されているような行動は、うつ病の特徴とはいえません。かといって、うつ病でないともいえません。うつ病による不安焦燥が、同じ行為の繰り返しや(「うがい」を何回もしたり)、落ち着き無く歩き回るという形で出ることもあります(部屋の中を行ったりきたりしていた)。
しかし、全体を通してみると、あまりうつ病らしくない症状です。むしろ統合失調症(精神分裂病)を考えるべきところでしょう。また、貧乏ゆすりに関してのみは、薬の副作用ということも考えられます。

統合失調症が疑われる理由としては、まず現在の行動がやや奇異であること、すなわち、

「うがい」を何回もしたり

部屋の中を行ったりきたりしていた

おかあさんという言い方をしたのは、小学生以来


などです。また、

中学生のころ、クラスの人の視線が非常に気になっていた

というような症状(これは漠然とした被注察感と解釈できます)は、統合失調症(精神分裂病)の初期にはよく見られるものです。
さらに、

話すときの目の動き、首の振り方など気になるところがある

と先生がおっしゃったのは意味深長です。統合失調症(精神分裂病)の初期には、このようにはっきりと表現できない奇妙な外見的行動が見られることがあり、経験ある精神科医ならそれを観察するだけでもかなりの確度を持って統合失調症(精神分裂病)と診断できるものです。

以上より、息子さんの診断名は、うつ病よりは統合失調症(精神分裂病)の可能性の方が高いと思います。それを頭におかれて、息子さんの今後の言動に十分注意し、気になる点があればすべて主治医の先生に報告し、適切な治療を受けるようにしてください。

もっともこのように説明されてもなかなか息子さんが統合失調症(精神分裂病)の疑いが強いとは納得されないかもしれません。しかし現実から目をそらすことは良い結果にはつながりません。ご家族がこの診断を信用しなかったことによる帰結の例としては【0440】をご参照ください。
 また、最初はうつ病と思われていて、後から統合失調症(精神分裂病)であることがわかってきた例としては【0537】(このケースは息子さんと同じように大学生です)や【0244】を参考にしてください。さらに、合宿のように、日常を離れた環境で発症した例として【0524】のようなケースもあります。

 もちろん、息子さんの診断名はまだわかりません。しかしいずれにせよ主治医の先生とご家族が密接なコミュニケーションを取りつつ、最も適切な治療を受けられることが第一です。


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