精神科Q&A

【2317】リスペリドンを飲みたくない 


Q: 40代女性です。近所の精神科に通い始めてもうすぐ2年になろうとしています。独身で母と弟2人の4人で暮らしています。リーマンショックで派遣の仕事を失ってからは、ダイエットや簿記の勉強をしながら役所等で短期の仕事をするのみでした。その頃から早く死にたいと思うようになり、以下のような傾向がありました。 ・死ぬ前に何も残して行くまいと、身の回りの品や本を捨てまくる。・死ぬ時に身につけようと分不相応な装飾品を買う。・ダイエットに成功した後は、いずれ人の上に立つ人間になれると根拠も無く思い始める。 ある日、高校時代の尊敬していた先輩から納得できない行為への加担を強要され、断ってもしつこくされたのを機に、極度の人間不信に陥りました。周囲の人への考え方がゆがみ、以下のような状況になって行きました。 ・自分の考えている事が周囲に筒抜けになっていると感じる。・自分がツイッターでつぶやいた事が、ビジネス雑誌の特集にそっくり掲載されていると思い込む。・自分が身に着けた服の色で、いい事をしたり悪い事をしたら評価され、スコアが上下し、その値が賭けの対象になる。人のプライバシーを侵害して賭けをするような人は最低だと不特定多数の人に憤りを感じるようになる。・完全なネット(ツイッター)依存で普段の生活が疎かになる。 外を歩いているときも、ツイッターのタイムラインに浮かんでくる誰かの事を考えながら、一人空に向かって色々と話しかけたりしていました。そしてある日、家族に「あなたは病気だ」と指摘され、母と2人で精神科の門を叩きました。最初は2週間おきに薬の内容が変わっていましたが、薬を飲むのを拒否してもらって来ても捨ててしまうような状態が2ヶ月ほど継続。その後、同居している母に促され、きちんと処方された薬を飲むようになりました。初診から1年が経過した際、病名を尋ねたら双極性障害2型と言われました。 リーマスやデパケンRを飲んでいた時期もありましたが、全体的に鬱状態で、辛くなるとうわごとを口走ったり、母を呼び続けたりしていました。薬の量はリーマスやデパケンRでも200mgが上限です。無気力状態が長く続き、リスペリドン0.5mgが追加されましたが、頭にもやがかかったような状態が続くだけで、きいている気配はありません。医師の判断でリーマスもデパケンRも効果なしという事で中断されました。今年の4月にドグマチール50mg(1錠)が追加され、若干の改善が見られたので週3日ほどで短期の仕事をしました。リスペリドンは0.5mgの半錠に減薬されましたが、短期の仕事が終わると状態が悪化。医師から薬の量を戻す提案がありましたが、思うところあって断薬を希望しました。まだ数日で、無気力状態も続いていますが頭にもやがかかったような不快感はなくなりました。 長くなりましたが、知りたい事は下記のとおりです。 ・私は統合失調症か人格障害ではないのでしょうか?・リスペリドンは双極性障害2型の薬として適切ですか?・薬の量がネットで調べた症例より少ない気がするのですが、個人差で片付く問題ですか?・私は精神病ではなく、ただの甘えで適当に薬を処方されているだけなのでしょうか? よろしければ教えてください。


林: あなたは薬をのむべきです。ただの甘えではなく、精神病圏の病気です。統合失調症の可能性が最も高いと思います。双極性2型障害と診断されているとのことですが、少なくともこのメールからは診断根拠がわからず、統合失調症の可能性のほうが高いです。これまでの治療として、リーマスとデパケンRが処方されたとのことですが、いずれも200mgの時点で効かないと判断されたとのこと、それは薬物療法の基本をあまりに逸脱しており、その医師の診療技術は信用できないと言わざるを得ません。

精神科で扱う疾患の中には、必ず薬を飲むべきものから、飲んでも飲まなくてもいいもの、飲まないほうがむしろいいものまで、様々なものがあります。しかし多くの場合、とにかく薬は処方されますので、患者さんの側としては、いったい自分は薬を飲むべきなのかと迷われるのは理解できるところです。これは、ある一面としては、安易に薬を処方する医師の側に責任があるといえるでしょう。薬があまり必要でない人にまで薬が処方されるため、本当に薬が必要で飲まなければならない人まで、自分に本当に薬が必要なのだろうかと疑問に思ってしまうという事態が発生しているのです。
たとえば【2315】は、薬を飲むことのメリット・デメリットを、かなりの程度までご本人が判断してよいケースといえます。
けれどもこの【2317】は統合失調症であると考えられますから、薬は必ず飲むべきです。ご自分で必要・不要の判断をすることは、悲惨な結末にもつながり得ます。薬を飲んでください。

(2012.11.5.)


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