精神科Q&A
【2256】境界性パーソナリティ障害を自覚した娘が、凄まじい自己努力により回復の兆しが見えてきました(【2063】のその後)
Q: 【2063】感情の起伏が激しい。記憶が飛ぶ。幻聴。 で、18歳の娘について回答いただいた者です。最初に、林先生に感謝致します。お答えを頂くまでの数カ月間に、娘は自分の不適切な怒りの発作や癇癪、しがみつき行為リストカットなどを普通ではないと認識し始めました。そして、林先生の回答を見せ、自ら境界性パーソナリティー障害 患者・家族を支えた実例集 を買って読みました。読んだ娘は「まさに私の事が書いてある。」と申しました。その時はあまりにも自分にぴったりの事が書いてあるので恐怖を覚えたらしいです。その後の彼女の頑張りは凄いもので、怒りの発作を押さえる為に歯ぎしりをしながら耐え、癇癪がおきた時は私にその場を離れるように言い、夜中の彼氏への電話をなるべく我慢し、普通と違った困った行動をしている時には指摘して欲しいと頼みました。 しかし、主治医には自分のことをさらけ出さずにいました。月に一回の診察だったため、「大丈夫です。変わりありません。」位の短い会話で終了していました。自分をさらけ出す、依存をするひまがありませんでした。娘は、親しい人にしか攻撃しないのです。私も診察室に一緒に入る事もありましたが、しがみ付き行為や、暴言癇癪、家から衝動に飛び出す事は娘が傷つくかと思って言えずにいました。
ところが、そうはいかなくなりました。相変わらず自分で治そうと頑張る娘に、今から7ヶ月前に限界が来ました。「普通を演じているのが辛い、辛い。どれだけ大変か誰も理解してくれない」とさめざめと泣きました。シクシクと泣くので、私は驚きました。今までは泣き叫びで絶叫でしたので、良いことなのかしら?と思っていました。その一時間後、頂いてきたばかりの一カ月分のジプレキサ、デパス等をアルコールで全て飲み救命病棟に三日間入院となりました。 辛い経験でしたが、そのことが転機になりました。私も覚悟をしました。
退院後、主治医に冷静に順序だてて隠さずに最初からお話しました。主治医は「この娘は、私の前では一つも見せなかったからなー。」とおっしゃいまして。「境界性パーソナリティー障害です。私は境界性パーソナリティーは専門外なので、紹介状を書きますので」と言うことで転院となりました。今は、転院しまして半年近くになります。お薬はセレニカRとマイスリーとロゼレムと漢方薬になりました。
現在の娘の症状ですが怒りの発作からは、解放されました。無理に怒りを押さえているのではない、怒りの感情そのものが薄くなってきたと申しております。実際に癇癪を起しておりませんし、衝動的な行動もほとんど改善しました。解離症状はあります。依存、見捨てられ不安はまだまだです。ただ、今はどちらかと言うとめまいがしたり、左耳だけのキーンという耳鳴りや柱や建物が歪んで見えたり、平衡感覚がおかしかったり、神経症状の方が辛いようです。 現主治医との関係は良好のようで、すべて話しているようです。私も、甘い病気じゃないことは勉強してわかりましたので、これからも通院だけは譲らない条件としていこうと思います。 腫れものに触るような生活から抜け出し、本音で娘と語り合えるようになったきっかけを作って頂いて、本当にありがとうございました。
林: 貴重な経過報告をいただきありがとうございました。読者の方々にとってこのご報告は、大変得られるところが大きいものであると思います。娘さんのさらなる改善・安定を願っております。またいつか、経過のご報告をいただければ大変うれしく思います。
(2012.6.5.)