精神科Q&A
【2242】毎晩お酒と一緒に安定剤を飲まないと眠れません
Q: 40代女性です。いつも興味深く林先生のサイトを見させていただいています。10年ほどうつ病が続き、薬を飲みつつもなんとかやってこれた状態で、鬱の薬が徐々に減り、睡眠薬だけで過ごしています。日本ではないので薬の名前は違いますが、Levomoperomazine Maleate Acid薬品名Nozinanと、入眠にAlprazoram（安定剤に相当するもの）睡眠時0.75ｍｇ、日本名でマイスリーに相当する薬をもらっています。 ところが、普通にこれらを飲んでも、入眠が難しく、大体薬を飲んでも眠気が来ないでいらいらしつつ、朝の5時くらいになります。飲むのは、遅いほうが眠れると思うので1時から2時のあいだです。Nozinanは25mgを半分にして飲んでいます。これは一錠では翌日に眠気が残るからです。 上記に述べましたとおり、いわゆる安定剤とマイスリーを飲んでも眠れないことが相当ストレスになり、医者でも相談したところ、Nozinanはすぐねむれるとのことで試しましたが、これも、ぜんぜん眠れません。 安定剤とマイスリーはお酒と一緒に飲むと効力が増して、もう朝の5時近くなると、「仕方ないなあ」とビール330mlとともに飲みます。それで7割くらいは眠れますが、お酒を飲んでから眠るまでの記憶がありません。 おそらくこのときの自分は最も精神的に開放され、自由で気ままなのだと思います。洗濯をしたり、正直に言いたい心の中の葛藤を友人にぶちまけたメールを書いたり(見に覚えがなくて困っています）、普段いえない他人への批判をしたり、下手すると夜中なのにごみ捨てにでかけたりもしているようです。 でも、お酒と一緒でないと眠れません。逆に、これらの薬とお酒で眠れるという安心感もあります。 どこかで、睡眠薬とお酒の組み合わせは脳にわるいとか、病状を悪化させるとか聞いたことがありますが、事実でしょうか。このままお酒と一緒に安定剤や睡眠薬を飲み続けることで、何か異常が起こったりしますでしょうか。飲酒量はだいぶ少ないと思いますが、最近毎日飲むようになって来ました。翌日仕事があるようなときは、2時くらいからお酒と安定剤マイスリーの準備をしておきます。 抗うつ剤は今のところ出ていません。一時は良くなったのですが、今は朝は起きられずやる気が消失して何事も行動に移せず、一日を寝て過ごすことが多いです。それも不眠のためでよく眠れないから結局睡眠時間が長くなっているためかと思います。海外では日本人の精神科医がおらず、内科の先生に薬を処方していただいています。数年は帰国できず、はたしてこのままでいいのか、大変不安を覚えています。アルコールと精神病関係のくすりはどうなのか、先生の解釈をお聞かせください。よろしくお願いいたします。
を寝て過ごすことが多いことの原因」であるという結論には根拠がありません。不眠が「一日を寝て過ごすことが多いことの結果」、または、「うつ病の症状」であるという可能性を十分に吟味すべきです。
林:
このままお酒と一緒に安定剤や睡眠薬を飲み続けることで、何か異常が起こったりしますでしょうか。
あなたにはすでに異常が起こっています。
お酒を飲んでから眠るまでの記憶がありません。 おそらくこのときの自分は最も精神的に開放され、自由で気ままなのだと思います。洗濯をしたり、正直に言いたい心の中の葛藤を友人にぶちまけたメールを書いたり(見に覚えがなくて困っています）、普段いえない他人への批判をしたり、下手すると夜中なのにごみ捨てにでかけたりもしているようです。
これらは、睡眠薬や安定剤とアルコールを併用したときに現われやすい副作用です。(睡眠薬だけでも現われることはありますが) 【2190】などをご参照ください。
でも、お酒と一緒でないと眠れません
という状況で、ではどうすべきかということになりますが、この【2242】でいえば、以前治療を受けていたうつ病とはどのような症状で、現在はどのような状態なのかがひとつのポイントです。
今は朝は起きられずやる気が消失して何事も行動に移せず、一日を寝て過ごすことが多いです。
という記載からは、うつ病が十分によくなっていないことが窺われます。この状態に対して、
それも不眠のためでよく眠れないから結局睡眠時間が長くなっているためかと思います。
というのは、ご本人の勝手な(という言い方は失礼ですが)解釈にすぎず、不眠が「一日
睡眠障害は夜の睡眠の状態だけからは判断できません。上記に加え、日中の生活はどのようであるのか、そういったことから総合的に考えていくことが必要です。「夜、眠れないから、眠れる薬を」という単純な方策で睡眠障害に対処しようとするのは間違いです。ましてや睡眠薬では効果が不十分だからアルコールを追加する、という方法は、転落に向かって疾走するようなものです。
(2012.5.5.)