精神科Q&A

【2207】現実感が無く、嫌な映像ばかりが気になります。‏


Q: 31歳女性です。いくつかの現象によって生きづらく感じています。これは病気なのか、それとも誰にでもある程度の事なのかを教えて頂きたく、メールさせて頂きました。以下、箇条書きで失礼致します。 ●常に頭がボンヤリしていて、自分がここにいる実感が希薄。 ●以前持っていた前向きなやる気のようなものがなくなり、ただただこの空間に漂っている感覚。 ●仕事の締め切りが迫っているとき、以前なら焦りながら急いでこなしていたのに、今はどのぐらい焦ればいいのかよくわからない。 ●誰かに見られている、深夜に外から聞こえる笑い声は自分に向けられている、道路ですれ違う若い男は自分を笑っているか襲おうとしていると思う(金をとられる、殺される、犯される)。後から、「あれは気のせいだ」と思うのですが、それが起きている瞬間は確信していて怖いです。これは14歳頃から常にあり、自分の中では当たり前の感覚です。誰にでもある事だとも思っています。 ●過去の辛い経験の映像が、ほぼ常に頭の中で再生される。ただし、ラジオを聞いているときと、他人といるときは消えることが多いです。これは、視覚で見ている光景の左上か右上にかぶさるようにして再生されます。黒い画用紙の上に、半透明のスナップ写真を乗せた様なイメージです。映像の内容は、大体高校生から現在までに起きたものです。当時の恋人やバイト先の同僚、現在の仕事仲間に、面と向かってバカにされた事や、興味ないそぶりをされた事、期待されていない事、うまく会話を出来なかった事、失敗した事などが音声付きで再生されます。自分がこれをイメージしてしまっている事に気づくと、反射的に声を出してかき消そうとしますが、すぐ次の映像が再生されてしまい、それが延々続くので大変消耗してしまいます。私が映像を消そうとして実際に声に出す言葉は、「バーカ」「死ねよ」「糞が」「イェーイ」「ワーオ」「ンャーオ」「好きです」「きらい」「死ね」等です。それらの言葉は、映像の内容とは特に関係ありません。繰り返しつぶやいてしまいます。そばに誰かがいるときは声を出すのは我慢しているのですが、つい口に出してしまい、その相手に対して言っているように受け取られたことが何度かあり、申し訳ないです。 ●霊のようなものをイメージしてしまう。視界の端や、道路の先の方に霊(人間の)がいるイメージが常に浮かんでしまう。これは、前記の映像が再生されている枠ではなく、実際に目で見ている光景の枠の中に像として浮かびます。私はオカルト的なものは信じておらず、実際に霊がいるとは思いませんが、なぜか脳でイメージし、現実と重ねてしまいます。そしてそれは怖いです。幻覚とか、幻聴というものなのかな、とも思いますが、実際に視覚で見て、聴覚で聞いているわけではなく、頭の中で勝手に想像している事だと自覚しています。外で霊を想像するのが怖くて、なるべく外出しないようにしてしまいます。部屋の中でも想像するので怖いのには変わりないのですが、外で新しい映像を見るのが怖いのです。馬鹿らしいと感じますが、怖くて動けなくもなります。 これは病気でしょうか、それとも気にしない様に努力し、放っておけば消える事でしょうか。大体以上です、長くなってしまい申し訳ありません。読んで下さって、どうもありがとうございました。

それから以下、必要な情報かわかりませんが一応自分の事を書いておきます。 家族には愛されて育ちました。しかしどうでもいいことでも過剰に褒められるので、逆に褒め言葉を信じず、劣等感の強い性格になりました。いじめやレイプされたことはありません。夫とはとても相性が良く、楽しく暮らしています。4年前に神経症で通院していました。症状は、知らない男性が家の中に侵入してきて、殺されるかレイプされるという念が常に頭を離れず、悪夢にまでうなされる様になった事です。同じ部屋で寝ている夫に、週に2回は夜中に起こされる様になり、自分も辛いし、夫にも申し訳ないので精神科の治療を受けました。そのときも上記の4番目の「見られている、嘲笑されている」と、5番目の「過去の辛い経験の映像が、ほぼ常に頭の中で再生される」がありました。ドグマチール50mg、パキシル20mg、プロピタン散10%を服薬しました。そのときの症状は、現実にはあまり起こらない事だとしだいに実感できるようになり、一年弱で良くなりました。しばらく普通に暮らしていたのですが、ここ最近、上に箇条書きした内容に悩まされ始めた次第です。


林: この症状は解離の色彩があるものです。統合失調症の可能性はわずかにありとは言えますが、解離の可能性のほうが高いでしょう。こうした症状への対処をどのようにすべきかは、ご本人が症状にどれだけ悩まされているか、また、日常生活にどれだけ支障があるかによります。4年前と現在の状況からいえば、一時的につらくなったときだけ薬を飲むというのが現実的かもしれません。より根本的な治療を受けるという方法もありますが、そのほうが適切か、それとも一時的・対症的に薬を飲むほうが適切かの判断は難しいところです。解離をめぐるこうした問題については【1901】から【1948】をご参照ください。

(2012.3.5.)


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