精神科Q&A
【2156】うつ病と診断されていますが、本当は甘えでしょうか
Q: 私は40歳代男性です。うつ病と診断されて5年になります。【1960】うつ病の部下が職場復帰したが、対応に困り果てている の記述を見て、同じテレビ局のプロダクションに勤める者として、私も本当はうつ病ではないのではないかと思い御相談申し上げます。私も1年程、休職をしておりました。その後、寛解のような感じで、仕事に勤しんでおりましたが、また1年ぐらいたったときに、ある朝突然、起きられなくなり、それで休職しました。理由はこれと言って思い当たりません。強いて言うならば、それまで仕事が、“超”が付くぐらい忙しかったことでしょうか。それでもやりがいを感じておりましたから、それが理由になるとは思えません。それにその“超多忙な仕事”の達成感もありましたから、本当に突然、朝起きられなくなったことが不思議でなりません。その後、休職は3カ月ほど続き、それで復職となりましたが、その後の自分の心の変化に戸惑っております。まず、それまで休日には必ずと言っていいほどの趣味であった、「模型作り」に全く興味が持てなくなりました。それまでは、週末ごとにあれこれと楽しんでいたものです。それが作れなくなりました。職場でも、仕事に集中できなくなりました。一番に辛いのは、仕事の内容が理解できない事です。これまで普通にやってきたことが、突然出来なくなってしまったのです。「こんなんじゃ、復職した意味がない」と悩み始めました。仕事の内容が理解できないがために、上司や同僚に迷惑のかけっぱなしです。そんな自分がとても情けなく感じます。会社の足を引っ張っているのではないかと心配になります。と同時に、「何かやっても失敗するのではないか」と心配になり始めました。失敗を極度に恐れるようになってしまったのです。テレビ局のプロダクションという仕事は、失敗を恐れることなく、逆にそれに向かっていくことが大事だと思っています。それが出来なくなったことに、自責の念を持ちます。「自分はうつ病は治りつつあるのだ」と言い聞かせても、やはり失敗を恐れて手も足も出なくなります。会社側はそれなりに理解してくれていて、比較的軽い仕事を振られるのですが、それすら自分では分っていても、「失敗するのではないか」と恐れてしまいます。実際、今この職場にいること自体が恐怖でいっぱいです。そんなことで悩んでいるうちに、“死ぬこと”を考え始めています。自分さえいなければ、だれにも迷惑をかけることがない。そんな気持ちを持ち始めました。そんな状態ですから、会社での評価も下がっていき、それがまた自信の喪失につながるという悪循環に陥っています。また別の話ですが、社内でも家庭でも自由に会話が出来なくなってしまいました。他人との会話が成り立たないのです。雑談が出来なくなりました。笑う機会も少なくなりました。他人と会話していても、テレビを見ていても面白いとおもえることが無くなってしまいました。こんなことばかり考えているので、以前は快活だった自分とは全く違う自分に戸惑っています。話が前後しますが、うつ病と診断されるまでは、「うるさい」と言われるほどの快活な性格でしたし、他人からもそう思われていたと思います。それが全く逆の“根暗”な性格になってしまいました。それでも何とか前向きに考えようと思うのですが、どうしても失敗を恐れてしまいます。これ以上失敗を重ねたら(決して失敗している訳ではないのですが)生きていられなくなるような気分に襲われます。最近は家族とも疎遠になってしまったような気がします。それでも【1960】の症状と同じように思える自分がいます。やはり自分も“甘えている”だけなんでしょうか?それにうつ病の治療には、こんなに時間がかかるものなのでしょうか?とりとめのない拙い文章で申し訳ありませんが、この先、どんな治療を受けていけばいいのか、御教示くだされば幸いです。
林: あなたはうつ病だと思います。したがって、適切な治療を継続して受ければ、治ります。
【1960】うつ病の部下が職場復帰したが、対応に困り果てているをお読みになり、ご自分も同類ではないかと感じられるようになったとのことですが、この【2156】のケースは、症状、経過、そしてご自身の状態についての受け取り方のいずれも、うつ病に典型的なもので、【1960】とは全く違います。
その違いとは、全体像が最も重要ですが、説明のためあえていくつか項目を取り上げてみますと、
ある朝突然、起きられなくなり、それで休職しました。理由はこれと言って思い当たりません。
このように、特に原因なくうつが始まるのは、うつ病と診断できる最大ともいえる根拠になります。
また、
それまで休日には必ずと言っていいほどの趣味であった、「模型作り」に全く興味が持てなくなりました。
これも非常にうつ病らしい症状で、「アンヘドニア (快感喪失)」と呼ばれるものです。
さらには、
自分さえいなければ、だれにも迷惑をかけることがない。そんな気持ちを持ち始めました。
こうした自責感も、うつ病に特有ともいえるものです。
やはり自分も“甘えている”だけなんでしょうか?
違います。病気です。
この先、どんな治療を受けていけばいいのか、御教示くだされば幸いです。
病院での治療を続けてください。5年前にうつ病と診断され、いったんは治った状態になったことからみても、今の状態について悲観的にお考えになる必要はありません。うつ病は、治ります。
(2011.11.5.)