精神科Q&A
【2117】うつ病と診断されています。10代のころ、実兄から性交渉を強要され続けていました。
Q: 30代女性です。私は十歳から十七歳まで、五つ上の実の兄に性交渉を強要されていました。 兄は幼い頃より、非常に暴力的で、気に入らないことがあると、すぐ殴ったり、蹴ったり、性交渉がはじまる前後くらいから、刃物を持ち出して首筋におしつけたり、ライターで髪をもやしたりしました。そんなこともあり、そういう時とは格別違って優しくなって「見せて」や「触らして」といわれると、よくわからないままに受け入れ、気がついた時には、性交渉を強要されるまでになりました。 ずっと耐えしのび、誰にも言わず一人耐え、学校にも進学し、希望の大学にも一浪して進学しました。 それでも、内心の罪悪感と虚無感は半端ではなく、また一方で、親を傷つけたくない(父親が母子家庭で育っており、自営業で生活に余裕がなかったため)とただ一人心に秘めてきました。死ぬことも恒常的に考え、ただ露見するのを恐れて耐えました。 自分は堅気で生きることはできない、という気持ちと家を出たいという気持ちから花柳界で働いたこともあります。それは性交渉が行われていた中学くらいの頃から考え、一生、堅気外で働くための道だと思った故でもあります。とはいえ、結局三年弱働き、性交渉の問題(パトロンとの関係)などでうまくいかず辞めました。 時代もあり、機会を逃したために、非正規雇用などの道を転々としました。父親の会社は倒産し、借金を残して消えました。家も売られ、兄と母と身を寄せ合い、父の残した借金を返しました。その一方で、男性とつきあうこともなかなかうまくいかずにいました。男性と性交渉をしようとすると身体がこわばり、兄に強要された情景がよぎり、恐怖と嫌悪を感じていました。女性なら、と女性とも試してみたり、特殊な性交渉も試してみたが駄目でした。 もちろん、精神的にも穏やかではなく、何度かの通院をしたり、薬の服用をしたりもしました。それでも、ほぼずっと働きつづけました。自殺を考えたことはありましたが、行動に移すことはなくやり過ごしてきました。 数年前、やっと男性と性交渉を持つことができました。仕事でも正規雇用になれ、忙しく働いていました。そのうちに家に帰ると何もできず、眠れなくなり、食べられなくなり、職場でも、毎日のように迷惑をかけられるペアの先輩とけんかをしていました。つきあっていた男性ともうまくいかず、ただ、その男性の性のはけ口のように性交渉をしていました。それでもいいと当時思いこんでいましたが、身体も心もボロボロで、その男性とけんかをし、その勢いで初めて自殺未遂をしました。 そのときの気持ちとしては、気が済んだというものでした。三十年生きてきて、半分以上、男性の食い物になり、悔しさ故に生きてきましたが、もうくたくたになっていました。悔しさ故に生きてきた十数年でしたが、それすらどうでもよくなりました。
どうしたのかは覚えていませんが、近所の病院に自分で行き、そこの医者が、精神科のある大学病院に連れていってくれて助かりました。もっとも、たいしたことのない服薬自殺でした。 その翌日には職場に働きにいき、その翌々日には、その男性を追いかけて夜行で地方のその男性の仕事先である場所にいきました。 帰宅すると、身体が動かなくなりました。もともと、精神科に連れていかれた後、入院する話になっていましたが、担当した医者の都合で話ができなくなり、延期になっていました。病院では入院を強く勧められ、母と相談して、心療内科の開放病棟に入院しました。 診断名はうつ病で、パキシルを服用し、ひたすら寝ていました。三週間ほど入院して、尿が出なくなるなどの副作用がありましたが、入院していた病院で対応してくれないので、退院しました。入院した病院は特にカウンセリング等もなかったので、入院する前に一度かかったカウンセリングを重視していたクリニックに転院し、自宅療養をしました。三ヶ月ほど休養をし、医師から許しも出、自分も普通に生活できるようになったので、就職試験を受け、派遣ではありましたが働きにでました。薬も服用することなく、日々を過ごし、数年前、普通に結婚もしました。性交渉は一度できたキリでしたが、相手の人はそれでもいいと言うので。肩の荷がおりました。 仕事の負荷には耐えられず(派遣先の買収問題などもあり)、フルタイムでの仕事はやめ、好きな分野でのアルバイトの職を得、今は穏やかに暮らしています。 3/11の地震以降、不眠や時折の強い不安などがあり、薬を服用はしていますが、基本的には穏やかに暮らしているのだと思います。 自分は、鬱病だったのでしょうか。 十代半ば、自分のされていることを自覚して以来、気持ちの落ち込み等もありました。それ以上に自分が生きていることに実感がなく、夢の延長でいつか醒めるものだとさえ思っていました。いつか自分の意識がなくなっておかしくなるんじゃないだろうかという恐怖もずっと抱えています。 また、入院やうつ病と診断される以前のようには、働けなくなったような気もします。 結婚をし、以前ほどの必要がなくなったこともありますし、結婚に伴う家事労働などが加わったせいもあるのかもしれません。 でも、どこか、自分が弱くなったのを感じます。でも、もともと、中学生時代くらいから無理に学生生活を送っていたような気もします。深夜に無理矢理に強いられ、翌日試験を受ける苦しみはなんとも表現がしがたいです。そういったことの繰り返しでどんどん自分がすり減ってきたのも感じます。 また、人と接していて、感覚の違いが多くてしんどいことがあります。年齢の割に、あちこちの骨が摩耗しており(特にスポーツはやっていませんでしたが)、それがあの性交渉が原因ではないかと思ってしまうことがあります。(週に三四回行われており、当時、150センチ40キロにも満たないほど身体も小さかったため) 何についてもマイナスに陥るとそこ帰結して考えてしまいます。でも、人生の半分以上をそこに縛られ、さんざん苦痛を味わって生きてきたんです。悔しさと悲しさで今でも時折、涙がでます。
林: 大変つらい内容をお書きいただきありがとうございました。多くの読者にとって大変貴重な情報になっていると思います。
このメールは質問の形式を取っていませんが、おそらく質問者は、今のご自分の状態をどう考えるべきか、診断名は何かという疑問を持っておられるのだと推測されます。ごくごく端的にお答えすると、質問者はうつ病にはあたりません。少なくとも、抗うつ薬と休養で回復するといったうつ病ではありません(抗うつ薬に全く効果がないという意味ではありません)。そして、10代のころの体験が、今の精神状態に影響している可能性があります。詳細は【1901】から【1948】をご参照ください。質問者と同じような体験をされた方々の声がそこにあります。
(2011.9.5.)