精神科Q&A
【1774】発達障害なのに、境界性人格障害と診断されていた
Q: 34歳女性です。大学時代から、学生相談室のカウンセリングルームの先生にカウンセリングを受けていました。その先生から卒業後、介護職をしている時代にも色々相談してしまい「もう相談に乗れないので精神科へ行ってください。」という事になりました。その紙を持って、精神科へ行きました。不安になると、不安だという事をまくしたてた結果、不安神経症と言われてソラナックス等の安定剤の処方を受けました。その後、職を辞め昼間バイト・夜間専門学校へ行きうつ病などにも罹患しました。だんだん、不安が強くなってきて安定剤の量が増えてきて、ほとんどの種類を飲みました。それでも効かなくなると、コントミンやPZC等を処方されるがそれらの薬を飲んだほうが一定の安定が得られる事にも気付く。その間、精神安定剤を処方量以上飲むとか不安になるとともかく騒ぎ出すとか症状がひどくなる。その頃の主治医から境界性人格障害の疑い・解離性障害と言われる。 29歳の時に再び夜勤のある介護職につく。その時に、近所の病院の方が楽だろうと転院する。そこでも境界性人格障害と言われる。夜勤終わった後、ハイテンションで大声で不安を騒ぎ出したりするようになる。最後は夜勤中、希死念慮があったが1人夜勤だったのでどうしようもできず、家へ帰った後処方してもらった薬で大量服薬を図る。
それで、現在の主治医に出会ったわけですが主治医には長年行っていた所と、アルバイトで転院した所の2か所で処方されていたのが抗精神病薬・抗うつ剤・気分調整剤・精神安定剤だったので、何の病名かわからないと言われて、心理検査を受けるように言われました。 検査を受けたカウンセラーからは、WAISで出る得点のバラツキが極めて激しい事(2回目のWAIS‐Vでは言語理解112作動記憶72)などを指摘され、ADHDなどの発達障害の可能性を指摘される。その後、半年ぐらい診察を受けてから主治医に「何の病名ですか?」と尋ねた所、「発達障害における2次的不適応だ」と言われました。その後は精神安定剤を乱用する癖があるのならと、最低限しか処方されなくなりました。それでも、やはりプツンと切れてしまうと薬を必要以上に飲む癖がありました。色々、服薬を試してみた結果、朝・夕デパケンR200mg・ランドセン0,5mgと寝る前ルーラン16mg・ピレチア25mgで調子の波があるもののなんとかしています。 仕事もやっては辞めての繰り返しでした。困っていた時に障害者職業センターを知り、そこのカウンセラーさんと検査と話をして、「やはり就労の際には一定の困難が伴う場合がある事と、長期間人とあわせる練習として作業所を紹介するので行ってみないか?」と言われました。作業所で気楽に相談できる人が出来たのとかがあって、だいぶ安定しました。
最後に書きたいのは、発達障害を境界性人格障害と誤診しているケースが結構あるのじゃないかなと思いました。私は境界性人格障害だとたどり着けなかった福祉サービスに辿り合えたからです。だから、本文のいらない所を省いてもらってもいいので、こういうケースがあったと紹介して欲しいのです。
林:
発達障害を境界性人格障害と誤診しているケースが結構あるのじゃないかなと思いました。
それはあります。はっきりした統計はおそらくないと思いますので、「結構あると思われる」くらいの漠然とした回答しかできませんが、そもそも成人の発達障害は見落とされていることが少なくなく、うつ病であるとか、人格障害(パーソナリティ障害)であるなどと診断されていることもよくあります。
ただしこの【1774】のケースがそれにあたるかどうかは不明です。この方が発達障害であると考える根拠は乏しいです。境界性人格障害であるという根拠もそう強いとはいえませんが、メールの内容だけから判断すれば、発達障害よりもむしろ境界性人格障害の可能性のほうが高いといえるでしょう。
患者心理としては、自分の好む病名と好まない病名があることは稀ではなく、そうすると、好む病名がつけられた場合はすぐに納得し、好まない病名がつけられた場合にはその医師に不信感を持つことはよくあります。この【1774】のメールは情報不足ですので、この方がそうであるかどうかはわかりませんが、単にご本人が発達障害という病名を境界性人格障害という病名より好んでいるために (「好んでいる」という言い方が失礼であるとすれば、逆に「境界性人格障害という病名を嫌っている。自分が境界性人格障害であることを認めたくない」と言い換えても構いません)、発達障害であると診断した医師を信頼しているという可能性を考慮する必要はあるでしょう。