精神科Q&A
【1767】薬で治療しているのに2年も症状が続いている私は本当にうつ病なのでしょうか
Q: 37歳男性です。発症と思われるのは、X年の夏頃です。肩こりがすごく、首筋から背中にかけて痛く、手がしびれるほどでした。そのほか、頭痛(締め付けられるような感じ)、気分の落ち込み、言い知れぬ不安感、やる気の消失などでした。夜も眠れず、11時頃布団に入り、1時頃まで眠れず、そして4時頃には目を覚ますという状態でした。とにかくだるく、起床時に起きるのがとても辛いものでした。特に気分の落ち込みがひどく、書類のタイプミスを指摘されただけでも、自分は仕事ができない奴だ、職場で必要とされていないんだと自分を責めて、その後落ち込みました。休日も、今までは、買い物等に出かけていましたが、それすらおっくうになり、ほとんどベッドの中で一日を過ごしました。気分の落ち込みは、自分の気持ちの持ちようで何とかなると思っていましたが、肩こりはさらにひどくなって、吐き気もでてきたため、せめて、肩こりくらいは何とかしようと、最初は肩こり外来も行っている脳神経外科へ受診しました。MRI等各種検査を行いましたが、特段異常はなく肩こりということで湿布をいただいて終わりました。 しかし、症状は軽減することはなく、ひどくなるばかりで、もう一度同じ病院へかかって肩こりと頭痛があるので、どこか悪いのではないかと相談したところ、目に見える異常はないが、うつ病をはじめとした精神疾患が原因で、肩こり等が起こることもあるので一度精神科へかかってみてはどうか、という提案を受けました。正直、最初は受け入れることはできませんでしたが、インターネット等で症状を調べてみると、確かにうつ状態の症状と似ており、テストでもうつ病の可能性ありということでした。
いきなり精神科というのは抵抗がありましたので、職場近くの入院施設のない小さい心療内科(精神科医師)へ行きました。そして、問診の結果、うつ症状を伴う気分障害ということでした。その時の処方です。 1日1回寝る前レンドルミン0.25mg 1錠 1日3回1回分ホリゾン酸1%0.3gミラドール細粒50%0.3gセルベックス細粒10% 1.5g です。 これで2週間ほど様子を見て下さいということでした。しかし、気分的なものも睡眠も変わらず、2回目の診察で、上記の処方にプラス、寝る前ユーロジン1mg錠1錠が追加になりました。入眠まで1時間程度と若干改善されましたが、朝早く目が覚めてしまうことと、気分的なことについてはかわりませんでした。 効き目が出るまで、多少時間がかかると言うことで、その後、半年ほど同じ処方でしたが、症状は全く改善しませんでした。そして、X+1年の2月に上記の処方プラス、不安時にリーゼ錠、そしてルボックス錠25を1日1錠プラスとなり、レンドルミンがマイスリーに変わりました。その処方でまた半年ほど過ぎましたが、症状としては変わりませんでした。それどころか自分は不要な人間と考えるようになり、漠然と消えてしまいたいと考えるようになりました。希死念慮とまでは言えないかもしれませんが。その反面ちょっと頭痛がしただけで何か脳に重大な病気があって死んでしまうのではないかとか考えてしまい、ひどくおびえていました(今もです)。 このときには、仕事をするのがかなり辛く、休みがちにもなっていたことから、心療内科へ通っている旨を上司に相談しました。幸い理解がある上司で、仕事は軽い事務作業へとかわり、残業もしないこととなりました。 そして、X+1年7月に「もう少し良くならないのか」と告げると、医師は「自分のところではあなたはもう手に負えないので、紹介状を書くから違うところへ転院してほしい」と言われました。この言葉でこの医師には失望しましたので、転院は抵抗なくできました。
転院後の病院は、自分の住む地域では一番大きい総合病院の精神科へしました。紹介状には持続性気分障害、そして発達障害の可能性ありとありました。新しい病院では、まず、記憶力の検査やパズルを組み立てたり、絵を見てその絵の何が足りないかを答えるような検査をしました(何という名前の検査かわかりませんが)。 そして受診となり、発達障害の心配はなく標準的な結果ということでした。また、病名ははっきりと教えてくれませんでしたが、うつ状態が強いということは教えていただきました。まず、睡眠を改善しましょう、ということで、サイレース2錠が前の病院の処方箋からプラスされました。入眠は改善されましたが、他はかわらずというところでした。
その後、処方が少しずつかわり、X+2年の現在の処方は次のとおりです。 ワイパックス錠0.5 1日3錠(不安時のみの頓服が望ましいとのこと)トレドミン錠25mg 1日2錠、ルボックス錠25 1日2錠、ベンザリン錠10mg 1日1錠、サイレース錠1mg 1日2錠、セロクエル錠100mg 1日4錠。 ワイパックス以外はすべて就寝時に服用です(始めは眠剤以外は夕食後に飲んでいたのですが、不安感がすごく強く出たため就寝前に変わりました)。またワイパックスはだいたい朝と昼に1錠ずつ飲んでいます。 症状としましては、今は11時に布団に入り、入眠は30分以内、覚醒は4時頃で、肩こりはないものの頭痛と不安感、意味もない悲しみ、焦燥感、特にひどいのが体のだるさと孤立感です。仕事は月に2度ほど休んでしまいますが、何とか行くことはできています(土、日休みです)。何もない日は、たまにパソコンをしますがほとんど横になっています。 前置きが長くなりましたが、自分の病名はうつ病なのでしょうか。林先生の著書「それはうつ病ではありません」を読んで自分に当てはめたところ、擬態うつではないように思うのですが。 よろしければご回答いただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
林: あなたはうつ病だと思います。うつ病は治ります。にもかかわらずあなたの症状が長引いているのは、治療が不適切なためです。本来きれいに治る病気であるうつ病が長引く最も多い原因は、抗うつ薬による治療が不十分なことです。このことはかつてうつ病の医学部講堂でも解説しました。あなたの治療を振り返ってみますと、はじめに受診した心療内科での最初の処方の中で、うつ病そのものの治療薬といえるのは
ミラドール細粒50%0.3g
だけです。これは治療開始の量としては不適切とはいえませんが、
その後、半年ほど同じ処方でしたが、症状は全く改善しませんでした。
これは非常識な薬物療法で、症状の改善のないままこのような少ない量の薬を続けても何の治療にもなりません。
そしてようやく変更になった処方(X+1年の2月)の中で、うつ病の治療薬といえるのは
ルボックス錠25を1日1錠
だけで、これはきわめて少ない量で、これをすでに半年間改善がないうつ病にプラスしてもほとんど意味がありません。しかも
その処方でまた半年ほど過ぎました
これはもはや治療をしているとはいえません。効くはずのない薬を売りつけているといってもいいでしょう。そしてついには
「自分のところではあなたはもう手に負えないので、紹介状を書くから違うところへ転院してほしい」
とはあきれた話で、このような医師がうつ病の治療にたずさわっているとは信じ難いとこです。
次の病院で処方されている薬は、
ワイパックス錠0.5 1日3錠(不安時のみの頓服が望ましいとのこと)トレドミン錠25mg 1日2錠、ルボックス錠25 1日2錠、ベンザリン錠10mg 1日1錠、サイレース錠1mg 1日2錠、セロクエル錠100mg 1日4錠。
とのこと、この処方に至るまでに少しずつ変わったと書かれており、その「少しずつ変わった」の具体的な内容が不明ですので、適切な処方かどうかの判断はできません。
そこをあえて判断しますと、この中の抗うつ薬は(一日量として)トレドミン50mg、ルボックス50mgだけで、この【1767】の経過と症状からみると、これは不十分な量とみるのが普通です。なお、セロクエルがうつ病に効くかどうかは議論のあるところです。うつ病治療の正攻法としては、セロクエルを追加する前に、十分な量の抗うつ薬で十分な期間治療を続けるのが普通ですので、疑問もあるところですが、先にお書きしたように、この処方に至った経緯が不明ですので、これ以上の判断はできません。
自分の病名はうつ病なのでしょうか。
うつ病です。うつ病は治ります。長引いたのは最初の医師の治療が不適切だったためです。今の治療が適切か不適切かは、このメールの情報からは判断しかねますが、不適切なためにさらに長引いている可能性も否定しきれません。