精神科Q&A
【1735】妄想性障害と思われる母のために家族が病んでいます(【1352】のその後)
Q: 【1352】妄想だけが症状の母は治療困難でしょうか で相談させていただいた者です。 ６０歳代の母は、父に対する被害妄想を持ち続けていましたが、その父も先日亡くなりました。最後まで、母と喧嘩が絶えず心穏やかに過ごすことができず、そのことを思うとなんと辛い人生の終わり方だったろうとかわいそうで涙が止まりません。
母は昔から家庭内のことは友人などに言ったりすることを嫌いました。夫婦喧嘩をしても、一歩外に出ると妻として父を立て、支えることに徹してきました。
そういったことから、地元の保健機関に相談して家庭訪問で様子を窺われると、「家の恥をよくも相談してくれた」と大変な事態になることが予想されましたので、【1352】でご助言いただいた方策をとることができませんでした。二度の通院で治療につなげることができず、再度タイミングをみては病院に行くことを勧めましたが、頑なに拒否されました。 私の給料を母が管理しており、食費など三日に一回、「食費代千円ちょうだい」と私がもらっております。何か買う時も、事情を説明してからお金をもらっています。私が働いたお金を、いちいち許可を得て代金をもらう生活にももう耐えられなくなりました。何度もそれで大喧嘩しています。（喧嘩になるきっかけは、最終的に私を愚かな奴だと言い始めて我慢ならなくなります） 先日も大喧嘩になりました。これまでは、腹が立ったら大声で反論したり、自分の部屋で布団をたたいたり、枕を投げたりといった具合でした。しかし最近は、母の体をドンとついたり、素手で腕をたたいたり、新聞でたたいたりと、母に対して手が出るようになりました。 叩いている時は、「うわぁ、たたいてしまった。こんなことしたらダメなのに・・」と思う自分がいるのですが、それでも止まりません。感情を抑えることができなくなりました。このままでは、アザができるほどの暴行に発展しそうで、自分が怖いし、不安です。 自分の気持ちの不安定と並行して、赤面症がまた出始めました。いっときおさまっていたのに、大勢の中に入るとみんなの視線が気になったり、私の体つきのことで見られてる、笑われてると思うようになりました。 以前車で通勤していた時、前を走っていた車が横に寄り、私が抜いた後、職場の駐車場までずっとつけてこられたことがあります。そのトラウマで、後ろの車がとても気になるのです。何度か同じように曲がられると、つけてこられてると不安になります。また、街中で男の人と目が合うと、「顔を覚えられた。つけられるかも」とも思います。 現在は、母と私との二人暮らしですが、最近になって、「お父さんと思っていたが、どうも他人がやっている」と言い始めました。母の妄想を相手することがしんどくなりました。イライラするのです。母は病気だから仕方ない、母は悪くないと思うのですが、違う場面で怒りをぶつけてしまいます。 私は精神状態がおかしいのでしょうか。感情を抑えるにはどうしたらいいのでしょうか。精神を安定させるにはどうしたらいいでしょうか。
林:
母の妄想を相手することがしんどくなりました。イライラするのです。母は病気だから仕方ない、母は悪くないと思うのですが、違う場面で怒りをぶつけてしまいます。 私は精神状態がおかしいのでしょうか。感情を抑えるにはどうしたらいいのでしょうか。精神を安定させるにはどうしたらいいでしょうか。
【1352】でお答えした通りです。お母様に治療を受けさせてあげることが第一であり、他に方法はありません。ここに【1352】の回答の一部を繰り返します。「強制入院しかないと思います」
この【1735】の質問者は、
地元の保健機関に相談して家庭訪問で様子を窺われると、「家の恥をよくも相談してくれた」と大変な事態になることが予想されましたので、【1352】でご助言いただいた方策をとることができませんでした。
とおっしゃっていますが、そうであれば方策をとらなかった結果の責任はご自分にあると考えなければなりません。
その結果とはこれです。
その父も先日亡くなりました。最後まで、母と喧嘩が絶えず心穏やかに過ごすことができず、そのことを思うとなんと辛い人生の終わり方だったろうとかわいそうで涙が止まりません。
「大変な事態になる」ことを避けることを選択されたわけですから、お父様の人生の終わり方がこのようになることはその時点でわかっていたはずです。にもかかわらず、わかっていたはずの結果となってから、涙がとまらなかったというのは、一体いまさら何をおっしゃっているのかと言わざるを得ません。
たたでさえ苦悩しておられるご家族に向かって、厳しいことを指摘するようですが、それは、このままではさらに悪い展開が見えているからです。本人が治療を拒んでいる場合、治療開始がそうスムースにいくはずがありません。治療を始めた時点では、「大変な事態」になることは当然予想されます。しかしだからといってそれをいつまでも避け続けることは、何の見通しもないまま問題をどんどん先送りにしているにすぎません。その結果として発生した悲しい出来事に、涙を流してすますのか、それとも大きな苦労が予想されてもいま行動するのか。ご自分で選択してください。