精神科Q&A
【1726】ひったくりに遭い脳挫傷となった母の言動異常
Q: 母(73歳)が3週間前より脳挫傷のために入院中です。そのさらに1週間前(今から4週間前)にひったくりに遭い前頭部を打撲したのですが特に処置もせずにいたところ、その後も頭痛と吐き気が続き、心配になって脳神経外科を受診し入院したところ脳挫傷との診断でした。
なぜ事故から1週間も経過してから診察に行ったのかと言いますと、家族には頭部打撲の事は全く知らされていなかったので私たちも診療を薦めたり連れて行く事もしませんでした。頭痛と吐き気が続くので心配になり受診させた次第です。入院して次の日から行動や会話が通常では無くなり(事故から1週間ほどは正常に会話していた)夜間は点滴で睡眠出来るようにしておりますが眠る事がなかなか難しいのが現状です。 昼間はなんとか会話が成立しますが妄想も多く突然会話の内容が飛んだり急に怒ったりします。先日は夜に備品を使って病院のガラス扉を割ったりもしました。 わずかな時間ですが正常な思考も出来ますがすぐに非現実的な会話に戻ってしまいます。
実は転院を考えておりまして次にお世話になる病院の先生に今までの症状をお話しした所まずはこちら(脳神経外科)でお調べして、精神科での治療が必要と判断した場合にはそちらへの転院を考えましょうと言われました。これからの不安も有りますが母への現時点での対応の仕方など初めての経験で戸惑う事も多く毎日が不安な日々です。今は24時間付き添いを付けて私たち家族も出来るだけ側に居て不安を持たせないようにしていますが今度の転院先は完全看護ですので夜間も一人になり、その点も心配です。色々と自分で調べた所こういう症状は前頭葉に損傷の有る場合に起こりうる事らしいのですが今後少しでも回復していく事は可能なのでしょうか。長い時間手助けをしてでも元の生活に徐々に戻していってやりたいと考えております。
林:
色々と自分で調べた所こういう症状は前頭葉に損傷の有る場合に起こりうる事らしいのですが
それは正しい見解ではありますが、このケースはまだ脳挫傷の急性期ないし亜急性期と考えられますので、前頭葉以外の部位の損傷でもこのような症状が出ることは十分にあり得ます。せん妄の可能性もあります。
昼間はなんとか会話が成立しますが妄想も多く
その「妄想」の具体的内容が知りたいところです。単に「妄想」というだけの情報では、残念ながら診断のためにはほとんど価値がありません。
今後少しでも回復していく事は可能なのでしょうか。
それは脳挫傷の部位や広がりによります。【1724】などにもお書きしましたが、脳の器質障害の場合には、脳の画像所見がない限り、今後の経過や回復可能性などの推定はほとんど不可能です。画像所見をみていらっしゃる主治医の先生からよく説明をお聞きすることが第一です。それはそうと、そもそもの原因はひったくりに遭ったためとのこと、大変お気の毒なことです。犯人はつかまったのでしょうか。お嘆きと怒りをお察し申し上げます。