精神科Q&A
【1664】うつ病の診断が信じがたい友人の元々の性格(【1467】のその後)
Q: 【1467】友人がうつ病と診断されたと言っているが、うつ病には見えない でご回答いただいた30代女性です。友人Aのその後についてご報告させていただきたく、メールしている次第です。 まずはAは地元へと戻ってきました。しかし母親には別な家庭(再婚相手、その間に生まれた子供)がありますので、Aは同市内に別居という形をとりました。仕事は引き続き休職、傷病手当もまだ貰っています。
林先生からの回答の中に「Aが元々どういう人だったかが重要な情報」であるというものがありましたので、お話させていただきたいと思います。 私がAと知り合ったのが今から約20年前です。お互い高校生でした。Aは良く言えば行動力があり、周囲の評判など気にせず自分の言動を貫き通すタイプでした。しかしながらそのハッキリした性格や破天荒な行動は時に誤解を招き、Aに対する周辺の評価は「好き」「嫌い」とにわかれていました。自分に対する評価を高めたいからなのか、過去の「捏造」(実際は行っていない事でもあたかも行っていたかのように話す)をしばしば行い、また化粧、服装で「武装」するタイプでした。物欲も当時からものすごかったので、当然金遣いは派手でした。お酒も大好きで、酒癖は相当悪いほうでした。こういったタイプは年齢を重ねるごとにだんだんと落ち着いていく(と思う)のですが、Aに至っては全く落ち着く気配はなく、逆に10代の頃よりも悪化しているといったほうが良いかもしれません。周りの友人とAの(最近の)問題行動について話していたときにみんな口を揃えて「今に始まった話じゃない」と言っています。
現在のAの話に戻ります。周囲の人間が(Aの)問題行動にほとほと困り果てていたある日、友人の一人がAの母親に「Aはうつ病ではないのではないか」という話をしました。母親は当然「そんなはずは無い」と全否定していましたが、そこから始まって、Aの母親に家庭での情況を聞いてみたところ、・親子喧嘩を一度もした事が無い(家の中では”いい子”を演じていたようです)・Aは自分こそが「被害者」であると母親に言い聞かせていた (友人に苛められる、金を取られる、迷惑をかけられているなど)という回答が返ってきました。母親は娘(A)の言う事全てを鵜呑みにしていたようです。そして、Aは私に対して相当な恨み・憎しみを持っているようで、Aの母親は(私のところに)殴りこみにくるつもりでいたそうです。 Aの母親に今までのいきさつや、どれだけ問題行動を起こしていたか(異常なまでの買い物依存、アルコール依存、酒乱)を説明し、現在の主治医と母親だけのカウンセリングを行ってもらうところまでこぎつけました。 その結果(前置きが長くなりましたが)、「パーソナリティ障害」との診断が下りました。 以上、全て友人から聞いた話です。本人は一切連絡をしてきません。どうやら未だに私に対して憎しみ、怨み、恐れを抱いているようです。 治療に対し、(Aと母親は)第一歩を踏み出す事ができたと思います。 とりあえずご報告まで。
林: とても貴重な情報をありがとうございました。【1467】では、擬態うつ病・躁うつ病の二つの可能性があるとお答えしました。今回、【1664】の情報を頂いて、この方は躁うつ病ではなく、擬態うつ病のほうであるとはっきりしました。(パーソナリティ障害であれ何であれ、うつ病ではないのにうつ病と称していれば、それは定義上擬態うつ病です。)
実は【1467】は、かなり迷った末にあのような回答になったという経緯があります。それだけでなく、あの回答に対して、「これは躁うつ病。それを擬態うつ病と答えるのは、躁うつ病に対する誤解や偏見を助長するけしからん回答である」という意味のメールを、躁うつ病の人のご家族からいただいたりもしました。
その指摘はともかくとして、【1467】は迷った回答だったのですが、今回いただいたメールで診断がはっきりしました。【1467】をお読みになって、これは明らかに躁うつ病ではないかと思われた読者は他にもいらっしゃったのではないかと推測されますが、この【1664】と合わせてお読みになれば、あのようなケースの診断はそう単純ではないことがわかっていただけたかと思います。あらためて今回のメールに感謝いたします。