精神科Q&A

【1610】私のめまいはうつ病の症状でしょうか


Q: 私は25歳の男です。
ご相談したい内容は、私のめまいはうつ病によるものなのか、それとも他の疾患によるものなのか、また治療が必要なのかです。

最初にめまいが起きたのが、23歳の頃、大学を出て仕事を始めて半年が経過した頃の事です。最初はなにか少し頭がぼーっとする程度のものでしたが、しだいにめまいのような症状(まわりがぐらつくというか、まわりがゆっくり、ほんのゆっくりですがわずかに傾いていくという感覚です)が起きるようになり、それと共に軽い吐き気を催すようになりました。

当時の職場は朝10時から夜の7時までの仕事(実質は残業含め朝9時30分から夜の9〜12時まで)で、業務中は立ち続ける仕事でした。
また、強いプレッシャーを受ける環境でしたので、最初は疲れているのかなぁと感じるだけでした。
ですが、そのめまいが最初は1週間に1回程度だったのが、1日1回のペースになっていき、起きる時間帯が11時頃と午後5時頃と決まってきたため、心配になり同僚の医師(中国人の医師で、中国の医師免許を持っています。ですが、専門は現代医学ではなく漢方(特に癌)です)に相談したところ、低血糖ではないか?との事でしたので、漢方薬の服用と、めまいが起きた時に角砂糖のようなものを服用することにしました。

以上の事でめまいが起きている時間は短くなった(通常1時間程度だったものが、30分程度)ものの、やはりめまいは治まりませんでした。
その後症状は1年近く続きましたが、特に業務に支障はなかった為、病院にかかる事なく仕事を続けました。
そして最近、金銭面の都合で転職をし、業務も楽になりプレッシャーを受ける事も少なくなって、めまいはかなり収まりましたが、やはり精神的にイライラすること(業務が忙しいのに同僚がパソコンでネットサーフィンをしているなど)があると、軽いめまいのような症状が出ます(10分程度で収まりますが)。

ここでもう一度気になり、また転職とともに漢方薬、砂糖の服用を辞めたため、知り合いの精神科の医師に相談した所、何かの原因で脳への血流が悪くなっているか、もしかしたらメニエール病ではないか?との答えを頂き、また、病院に行っても特に異常は見つからないだろうから、このまま様子を見たら? とのお答えを頂き、私も安心して仕事を続けていました。

ですが、つい先日、勉強の為に色々ネットで情報収集をしていた所、林先生のホームページを拝見させて頂く事になり、そこで精神的症状の出にくいうつ病もあり、また、めまいのような身体症状もうつ病では出る可能性があるとの事を知り、もしうつ病だとしたら適切な治療を始めなければまずいのでは?と心配になり、メールをさせて頂きました。
また、最近は寝る前トイレに行くと残尿感が気になる事があり、寝付くまでに2〜3回トイレに行くことがあります。(20〜30分の間)。

精神的には、前の職場では上司に叱責されイライラしたりすることはありましたが、落ち込んだり(仕事で失敗があればもちろん落ち込みはしましたが)、無気力になることはありませんでした。現在も、意欲がなくなる事はほとんど無く、落ち込むことも少ないです。。
ですが、メランコリー親和型性格にはかなり当てはまると自分では感じます。
(ただし、同僚への配慮は自分が未熟であるため、業務で問題があるとそれに集中してしまい、欠けてしまう所があります)。
また、不安障害といえるかはわかりませんが、めまいが起きた時は、将来この症状が悪化したらどうしよう、治療を始めた方がいいのではと思う事があります。、
普段は、現在の自分の力はまだ未熟なため、努力をして力をつけなければならないと、何かを勉強や仕事をしたり、休もうと思っていても、何かをしてないと落ち着かない事が多いです。ですので、ぼーっとしている事がかなり苦手です。

めまいは仕事中に起きることが多く、休日は家にいる時は坐っている、または寝ころんでいる事が多く、めまいは起きていません(または気がついていません)。
但し、休日は良く釣りにでかけるのですが、あまりにも長く(6時間程度)釣りを続けているとめまいが起きる事もあります。

睡眠時間は仕事が少ない時は23時〜7時くらいで、中途覚醒はありません。時々、寝付くまでに20〜30分かかる事があります(前述の残尿感により)。
仕事が忙しいときには、2時〜7時くらいになります。
食事の量は、通常の人よりちょっと多いくらい食べます、ですが、偏りはあります(肉類が多く、生野菜はほとんど食べません)
過去に大きな病気をしたことはありませんが、かなり強い肩こりを持っています。
MRIは20歳の頃、頭を強く打ったときに撮りましたが、異常ないとの事で、軽く傷口を縫うだけで終わりました。

このホームページで相談されている他の方に比べると、自分の症状は軽すぎて、相談するのが申し訳ない気分になりましたが、近いうちに結婚することもあり、将来、体調を崩してしまうわけにもいかないため、今の内に対処しておきたいと思い相談させて頂きました。
適切な治療があれば、いまの内に対処をしておきたいと考えております。特にうつ病の場合、仕事に支障を来す前に、治療を開始したいと考えております。


林: まずめまいの検査を受けることが必要です。
うつ病の身体症状は多彩で、あらゆる種類の症状が、うつ病によるものである可能性があります。
ということは逆に、身体症状だけからは、うつ病かどうかは判断できないということです。
このケース【1610】のめまいも同じです。
ただしこの方の症状はめまいだけでなく、イライラなどもあるとのことですが、職場でイライラするというだけでは、それがうつ病の症状なのか、誰にでもあることの範囲内なのか、判断できません。

心配になり同僚の医師(中国人の医師で、中国の医師免許を持っています。ですが、専門は現代医学ではなく漢方(特に癌)です)に相談したところ、低血糖ではないか?との事でしたので、漢方薬の服用と、めまいが起きた時に角砂糖のようなものを服用することにしました。

めまいの原因となる病気は数多くありますので、なぜこの医師が低血糖の可能性だけを強調されたのかは不明です。めまいの細かい症状から、低血糖の可能性が高いと診断されたのかもしれませんが、メールに記載がないのでわかりません。
仮の話ですが、もし細かい症状の把握なしに、低血糖と判断されたのであれば、安易と言わざるを得ません。そして安易な判断に基づいて、角砂糖という対処を続けていたというのもさらに安易と言わざるを得ません。なぜ検査をされなかったのでしょうか。

知り合いの精神科の医師に相談した所、何かの原因で脳への血流が悪くなっているか、もしかしたらメニエール病ではないか?との答えを頂き、また、病院に行っても特に異常は見つからないだろうから、このまま様子を見たら? とのお答えを頂き、

ここでも、この医師が細かい症状に基づいてこのような判断をされたのであれば一理あります。しかし、メニエール病の可能性を指摘し、しかし病院に行っても異常は見つからないだろう、という判断は奇妙なものです。メニエール病に似た症状を呈する他の病気で、検査をすれば発見できるものがあるからです。
もっとも、一般に、「医師にこう言われた」とする患者さんの報告は、実際には医師の説明を聞き違えていることによる場合が非常に多いので何とも言えませんが。

このケース【1610】の方は、医師のアドバイスにしたがったのにもかかわらずめまいが改善しないことから、うつ病の可能性を心配しておられます。それはある意味で、妥当、ある意味で不適切なことです。どちらかといえば、不適切というべきでしょう。なぜなら、この回答の最初にお書きしたように、うつ病ではあらゆる種類の身体症状が出る可能性がありますので、身体症状が出ているからといって、逆にうつ病の可能性を考えるのは無理がある(そのような考え方をすれば、すべてにうつ病の可能性があることになる)からです。そして、めまいは、重大な病気の症状であることも少なくありません。原因不明のめまいが続いているのであれば、まず耳鼻科などでめまいの検査をすべきです。検査の結果異常がないことが確認されてはじめて、うつ病の可能性を考えるのが適切な手順です。


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