精神科Q&A

【1596】うつ病が回復してきた夫の職場復帰の時期


Q: 29歳女性です。結婚して1年半になる夫(31歳)のうつ病についてです。私は実は心理の仕事をしており、うつ病についての知識は一応もっています。しかしいざ現実目の前にするとまた違うもので、将来の不安もあり、穏やかに接することを難しく感じている毎日です。精神疾患の方のご家族の気持ちが今になって本当によくわかりました。自分の対応もよくないのではと思いつつ、イライラを見せることもあり、反省してもいます。仕事上の知識で対応してしまうところもありますが、最後はやはり私情が優先されますし、どうかかわればよいのかと考えることもあり、また、これまでの薬が適切なのか、今復職してもよいものか、お聞きしたく投稿いたしました。

 夫はサラリーマンで、帰宅時間は9時〜11時と遅くなることも多い会社でした。半年ほど前から仕事に対する悩みを抱えていたようで、会社の方針とやりたいことのギャップに悩んでいたようです。徐々に朝の準備に時間がかかる、眠れないなどがみられ、希死念慮もあったらしく、その3ヵ月後にとうとう会社へ行くことができなくなり、休んでしまいました。その前日にどうやら夫は自ら心療内科を受診していたようで、「うつ病と診断された」と伝えられました。(このときは、ルボックス25mg,ジアゼパム錠2mg以上を朝夕、フルニトラゼパム1mg→就寝時) 会社はすぐに対応してくれ、まずは1週間有休となりました。朝はぐったりとし、夕方になるにつれ動けるという生活でしたが食欲は比較的一定、睡眠はとれなかったようです。しかし眠剤には抵抗があり飲みたがりませんでした。(眠剤は本人の意思に任せていました)
1週間後、出勤しましたがけっきょく半日で帰ったり休んだりで1週間がすぎ、無理があるということでさらに1週間休んだのち、1ヶ月休職をとることにしました。本人は行きたがりましたが、会社に勧められ納得したようです。(この頃、ルボックスが50mgに増えています。薬の副作用か、ふらつきは 多少ありました)休職して最初、本人の希望にあわせて仲間との集まりに参加したりしましたがそのときは楽しそうにしていても夜ぐったりしてしまい、やはり良くないと思い、その後は家の中でのんびりするようにしたところ、少しずつ昼間の活動時間が増え、好きなパソコンゲームをしてご飯を一緒に食べ、という生活が続きました。その後も薬がきいてきたのか家での生活は落ち着いていき、気分の落ち込みもましになり、お笑いを見たり散歩にでたりと順調でした。(ルボックスは75mgに増え、眠剤も飲むようになり、睡眠が不安定ながらとれるようになっていました)そして1ヶ月が過ぎるころには本人の希望もあり、5日間の国内旅行へといけるまでになりました(悩みましたが、二人だけですし無理はしないと決めて出かけました)お昼前から活動する生活がとれ、本人はリフレッシュできたようでした。順調に回復していましたが、焦らずもう1ヶ月休職をしました。その後の1ヶ月は私が仕事から帰るまでにご飯を作ったり家事を担ってくれ、食欲もしっかりあり、いい調子でした。ただ、朝早くから動くことはやはり難しく、会社復帰に向けては不安が残っていました。(眠剤は飲まずに眠れるようになりました)休職が終わる前の1週間は、朝自転車で駅まで送ってくれることができましたが、その後はやはり10時ごろまでソファで横になるようでした。

本人は会社に戻る気満々で、その後復職となりました。はじめの1週間は午後から勤務で、本人は行けたことが嬉しくやや興奮していたようでした。次の週からは朝から出社するといいましたが、私からするとそれはまだ早すぎるのではないかと思っていました。落ち着いていた睡眠が出勤後乱れがちになっており、午前中からずっと動くことは休職中でも無理だったからです。けっきょく次の月曜は休んでしまいました。火曜は午前半日で帰宅、水曜はまた休み、木曜は朝から出社しましたが、しんどそうです。私は復帰した今がしんどいのだから眠剤は飲むようにと言いますが、朝の眠気が強いからと飲みたがらず、それなら他に合うお薬を探してみてはと思っています。(現在まで、ルボックス75mg朝夕、フルニトラゼパム1mg就寝時が処方されています。眠剤は医師に相談してみてもよいかと思っています。)

以上のような経過ですが、何よりも復職させてよいものか悩んでいます。もう1ヶ月ほど様子をみたほうがいいか、本人は行きながら調子を戻したいといっていますが、本当にそれでよいのか、今が大事なのではと思ったりします。回復期のゆり戻しで睡眠が不安定だったりするのだとは思いますが、このまま無理をして逆に長引いても、とも思います。また、私自身、復職後の様子をみていると、このまま治らなかったらと不安になることもあり、給与の面、子どもがそろそろ欲しいけれど性欲がなくなってしまったことなどもあってイライラしたところを見せていることもあるだろうし、そのせいで本人が焦っているのもあるだろうと思います。けっきょく半日で帰ってきてしまって私もがっかりしたり、でもそれを見せないようにとも思っていますが、きっと見えているのだとも思います。
長文になり、文章もまとまりないですが、・このまま復職したほうがよいのでしょうか、もう1ヶ月休んだほうがよいのでしょうか、薬はこの量でよいのでしょうか、・眠剤は他のを試したほうがよくないでしょうか、・家族としてかかわり方や、心構えというか、何かアドバイスありますでしょうか。誰か知識のある第三者に指摘されることで、理解を深めたいというか、普段話を聞く立場なだけに、相談にのっていただけたらと思いました。主治医にももちろん相談しないといけませんが、ご意見をいただけたらと思っています。よろしくお願いいたします。


林: うつ病が適切な治療とご家族の対応によってほぼ順調に回復してきた時、次の段階としての職場復帰をどうすべきか、多くのうつ病の患者さんとご家族が直面されている問題です。この【1596】のケースもその典型的な例で、あと一歩といったところですが、このメールを読んでまず端的に申し上げたいのは、

受身の方針で行くべき

ということです。逆に言えば、自発的、ないしは積極的な方針は取らないほうがいいということです。(この段階では、ということです。将来さらに回復すれば話は別です)
具体的に言いますと、まず半日出勤を一週間続けた時点で、

次の週からは朝から出社するといいました

という文面からは、ご本人がそのように決められたことが読み取れますが、それは適切ではありません。回復してきたこの時期こそ、自分で判断せずに、主治医の指示通りにしたほうがスムースに回復に向かえるものです。それが上記の「受身の方針」の意味で、逆に自発的に復帰のスケジュールを決めるのは好ましくありません。もっとはっきり言えば、そのようなことをすればまず間違いなく失敗します。あせりから無理なスケジュールを立ててしまうことがほとんどだからです。この時点で、

私からするとそれはまだ早すぎるのではないかと思っていました。

とのこと、それは正しい見解だったと思います。が、たとえ正しい見解でも、やはりそれも自発的・積極的な方針ですから(つまり、「まだ早い」という判断を下すということ自体が、受身的ではない)、正しい・正しくない以前に、この時期には好ましくないと言えます。早すぎると思おうが思うまいが、主治医の指示通りにすべきです。質問者(妻)は、心理の専門家とのこと、そういう方こそ、自分での判断は控えなければなりません。(医師も、自分の家族が病気になった場合は、自分で診断や治療をすることは極力避けるのが原則です。客観的にみることが出来ないおそれがきわめて強いからです)

同様に、眠剤についても、

私は復帰した今がしんどいのだから眠剤は飲むようにと言いますが、朝の眠気が強いからと飲みたがらず、

このように飲み方をご自分で判断する時期ではありませんし、ご家族が判断して指示するのも感心しません。

眠剤は医師に相談してみてもよいかと思っています。

「みてもよいか」という表現に、危うさを感じます。そのような姿勢では復帰に失敗するでしょう。「みてもよいか」ではなく、「しなければならない」です。

そして、

本人は行きながら調子を戻したいといっていますが、

これも同様で、本人の希望通りにするのではなく、受身の方針でいかなければなりません。

ご質問項目への回答は以上から明らかと思いますが、一応記しておきます:

・ このまま復職したほうがよいのでしょうか、もう1ヶ月休んだほうがよいのでしょうか、薬はこの量でよいのでしょうか

主治医の指示に従ってください。

・ 眠剤は他のを試したほうがよくないでしょうか

主治医の指示に従ってください。

・ 家族としてかかわり方や、心構えというか、何かアドバイスありますでしょうか。

受身を貫いてください。


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