精神科Q&A

【1540】自殺した母は仮面うつ病だったのでしょうか


Q:  私は30代女性です。 先日、65歳の母が自ら命を絶ちました。一ヶ月前までは明るく元気でしたが、排尿がすごく近くなり、夜も眠れなくなっていました。眠れないのがすごくつらいらしくみるみる元気がなくなっていきました。自分ではストレスに違いないと言っていましたが病院で間質性膀胱炎と診断されその際に医師に「やっかいな病気。なおらない」と言われたいへんショックを受けていました。眠剤を飲んでも聞かないと言っていました。トイレに行きたくないらしく好きだった飲み物を口にしなくなり食べ物もあまり食べなくなっていました。神経質で真面目で几帳面な母でしたが娘の私とは共通の話題でいつも笑っているような人でした。 亡くなる3日くらい前から目に見えて元気がなくなりいつもは夜12時くらいまで起きているのに9時には床に入っていたので心配していました。亡くなった日は仕事も休んでいました。午前中に一緒にテレビを見て話をしたのですがやはりいつもより覇気がなく、私に何も言わずに寝室に行こうとしたので「寝るの?」と声をかけると「うん」と元気なく返事をしました。あとから父に聞いた話では何日か前に「人に会いたくない」「仕事もしばらく休みたい」と話していたそうです。ものすごく急にみるみる元気がなくなっていったように見えました。遺書には「このような体では(いずれするつもりだった)お父さんの介護も出来ない。ごめんなさい」という事が書いてありいつも人の事を優先して考えていたのがわかります。一ヶ月前には一緒に買い物をして次に行く旅行用のバッグを買ったりしましたし犬と猫を大変かわいがっていていずれ看取るときの心の準備の話などもしていました。ついこの間までは前向きだったのです。 母は急激にうつ病になったのではないでしょうか? 兄がうつ病のためさまざまな本を読んでいますが「仮面うつ病」だったのではないかと思っています。気づいてあげられなかった事がかわいそうでなりません。母方の親戚うつで自ら命を絶った人が二人います。兄も自分も心配です。


林: お母さまはうつ病であったのだと思います。仮面うつ病ではなく、うつ病です。仮面うつ病というのは、正式な病名ではありませんが、概念としては、「うつなきうつ病」であって、本来はうつ病でありながら、外見的にはうつの症状が文字通りない(代わりに身体症状などがある)ものです。このケースのお母さまは、

眠れないのがすごくつらいらしくみるみる元気がなくなっていきました。

とのことですから、この時点でうつ状態が認められることは明らかです。したがって仮面うつ病ではありません。うつ病の発症と見るのが合理的です。

あとから父に聞いた話では何日か前に「人に会いたくない」「仕事もしばらく休みたい」と話していたそうです。ものすごく急にみるみる元気がなくなっていったように見えました。

↑この時期に、急速にうつ病が進行したのでしょう。

兄がうつ病のためさまざまな本を読んでいますが「仮面うつ病」だったのではないかと思っています。気づいてあげられなかった事がかわいそうでなりません。

あなたに事実をつきつけるのは心苦しいですが、うつ病の知識をお持ちでありながら、気づいてあげられなかったのは本当に残念なことだったと思います。
 けれども、後悔しても何もなりません。それに、うつ病の進行が急激な場合、わかっていても自殺が止められないということは、残念ながら時にあることです。後悔するより、これから先のことに目を向けましょう。

母方の親戚うつで自ら命を絶った人が二人います。兄も自分も心配です。

家系内に自殺者がいらっしゃるという事実は、自殺のリスクを高めることは統計的にも示されています。あなたのご心配はもっともです。今の時点でのご家族の心の健康に十分にご留意してお過ごしください。お母さまのご冥福をお祈り申し上げます。


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