精神科Q&A

【1415】急に不安感が出る。血圧の変動もある。


Q(1)私は男性・66歳です。最近夕方・夜になると「何故か不安感を感じ・左胸周辺に違和感を覚え」テレビを見ていても頭の中では「どの様に死んだら良いか?」を考えて居り「頭の中が狂いそうで」場所を変えたりなどで辛うじて耐えている状態が続きます。
(2)昨年5月に65歳で41年間の会社勤めを終えました。我々の時代は少数精鋭主義で広い範囲を担当する時代で、広い範囲の技術・ノウハウなどを身に付けられ、「やりがい」をもって苦しいが、楽しくやって着ました。常に責任ある立場で仕事をさせてもらい、60歳定年後は子会社の社長を任され、5年間で設備・体制・業績も積んで来ました。
(3)6ヶ月前より排便に異常(下痢等)を感じて居りましたが最近、急にトイレに駆け込まざるを得ない状況となり内視鏡などでの検査を予約して居りますが、かかり付けの医師に過敏性腸症候群に対応した薬を処方され一時の様な状況はかなり改善して来たと思います。今にして考えると昨年初頭から始まって居た様に思います。
(4)従来からの持病(左足の通風の様な状態)をMRIで検査した結果脊柱管狭窄症の診断を受け、悪化の進行を自覚した為、5月24日開窓手術を受け快復を待っているところですが、車は運転でき・時々家内と散歩(リハビリ)をすることもありますが、以前のようにゴルフ・トレーニング・図書館など動きに制約され「発散できない」為かとも思いますが?
(5)私は食欲が無く、肉も特に好きでもなく、魚には何故か「家内にはなんとも無く、私には魚くささが異常に感じられる状況」です。家内にしてはやりにくいかも知れませんが食べられません。家内も年を経るに従って(64歳)料理にも余り力が入ら無い様で出来るだけ簡単なものにしようとして居るようですが、其れは理解もし、出来るだけき気を使って居りますが、生活の中で気を遣いすぎるのかも知れません。
この様なことで「自分の気持を抑制」することも原因ではないかと思いますが?
(6)私は不整脈で薬を飲んで居りますが昨年7月頃より血圧の変動が激しく(上が180になったり100になったり)で、かかりり付け医師よりエチカーム(朝・夕各2錠)、又睡眠不良の為マイスリー(誘眠剤)を処方され服用しています。
エチカームの服用をやめたら「不安感」が出てきます。
全て関連性がある様に思いますが、ご指導頂ければあり難いのですが。


林: 
最近夕方・夜になると「何故か不安感を感じ・左胸周辺に違和感を覚え」テレビを見ていても頭の中では「どの様に死んだら良いか?」を考えて居り「頭の中が狂いそうで」場所を変えたりなどで辛うじて耐えている状態が続きます。

これだけ読むと、比較的典型的な不安障害ないしはパニック障害のようにも見えます。しかしこの【1415】には、他に重要な所見がいくつもあります。

全て関連性がある様に思います

とご本人がおっしゃっている通りです。
重要度の高い所見から順に検討してみましょう。

私は不整脈で薬を飲んで居りますが昨年7月頃より血圧の変動が激しく(上が180になったり100になったり)

これが最重要な所見です。
ただ本当は、不整脈の性質、発症時期、いま飲んでいる薬、「血圧の変動が激しく(上が180になったり100になったり)」というのは、具体的にどのようなときにそうなるのか、などの情報がどうしてもほしいところです。それらの情報なしには本当は判断できないのですが、冒頭に書かれた突然の不安と、急激な血圧の変動、この二つを結びつけるのは、褐色細胞腫 (かっしょくさいぼうしゅ)という病気です。

褐色細胞腫とは、主として副腎髄質にできる腫瘍で、血圧に大きく影響するカテコールアミンという物質を分泌します。そのため、突然の不安や血圧変動という症状が出ます。

6ヶ月前より排便に異常(下痢等)を感じて居りました

この症状も褐色細胞腫であり得るものです。

褐色細胞腫か否かを診断するためには、まず血中のカテコールアミンの量を測定すること、そして、腫瘍の存在をMRIなどで確認することです。内科(内分泌を専門とする先生が理想です)で検査してもらうのがいいでしょう。
気をつけなければいけないことは、高血圧によく処方されるベータ・ブロッカーという薬がありますが、もし褐色細胞腫だとすると、ベータ・ブロッカーを飲むと症状が悪化します。そういう心配もありますので、専門の先生に診ていただくことをお勧めします。

ただし、褐色細胞腫は稀な病気ですので、実際にはあなたがこの病気である率は低いと思います。とはいっても、一度は検査を受けておいたほうがいいでしょう。あなたの経過を一読すると、退職という心理的なイベントによる不安やうつのようにも見えますが(そうである可能性も高いですが)、そのような外観の中に褐色細胞腫のような稀な病気が隠れていて見落とされるのもまたよくあることです。

それから、これも非常に稀ですが、多発性内分泌腫瘍(MEN)のひとつとして褐色細胞腫が認められることもあります。この病気については【1138】をご参照ください。


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