精神科Q&A

 【1326】境界性人格障害を自認し、がんばってきたのですが、今度は分裂症だと診断されました


Q: 私は29歳の女性です。現在もうすぐ2歳になる息子がいます。

現在B精神科に通院しています。初めは自分がうつ病だと思いA心療内科へ行きました。症状は次の通りです。

1 昼くらいまで何もする気になれない。
2 人に会うのが嫌
3 食料の買い物も頑張らないと出られない
4 子供の散歩を自分に無理して出ると、気分が良くなり少し家事が出来るようになったりする。
5 アルコールを飲まなければ眠れない。長年?(6〜7年)の大量飲酒のためか、今では、350mlを1〜2本しか飲めない。それ以上飲むと、吐く(時にはコーヒー色の血を吐く)か、次の日胃液を吐き、一日に5〜6回のひどい下痢(1〜2回の下痢は毎日ですが)。内科で内視鏡を2回受けたが以上なし。でもアルコールを止められている。でも止められない。

本当はまだあったのですが、なんだか聞き流されている感じで、伝えることが出来ずに5分ほどの診察だけで終わり朝ジェイゾロフト25mg、夕食後パキシル10mg、寝る前デパス0.5mg、レンドルミン0.25mgを処方されました。早速夜、薬は嫌でしたがパキシルを飲んでみたところ、ボーッとして眠くなるだけで、何の解決にもならないので、飲むのを止め、自分はどんなうつかを知って、自分で出来ることから何かしてみようと思いネットで調べたのです。

A心療内科で伝えられなかった症状も書きます。

6 毎日死にたいと思っている。人に落ち込むことを言われたりすると、一人になると死にたくて汗や涙が出てくる。自殺行動もある。(23歳くらいの頃彼氏にふられて、アルコールを沢山飲みレンドルミンを10個飲んだ。)
7 世の中に必要ない人間だと思う。生きているだけで人に迷惑をかけていると思う。でも子供のことを考えると、頑張ろうと思い、辛くなる。
8 25歳くらいの頃、アルコールを飲むか、レンドルミンを飲んで寝ていたのですが、考え事をしながらウトウトしたとき、頭の中で、私自身の考えを否定する女性の声が聞こえていた。当時は霊現象だと思って、怖くて知り合いにも話して、引越しをしたのです。その頃、姉から「幻聴じゃないの?」と言われ、ビックリしたのと、まさか!の気持ちがあったのですが、引越し先でも続いていたので、そうかも・・・と思っていました。その頃今の主人と出会い、治りました。太りたくない一身で、夜食べたものを口に指を入れて吐いたりもしていましたが、主人と出会いこれも治りました。

 まだありそうですが、思いついたのがこのくらいです。

話が前後しますが、ネットで調べた結果、境界性人格障害(境界性パーソナリティ障害)に突き当たりました。驚くほどピッタリで、トイレを覗かれていると思えるほど恥ずかしくもなり、同時に、病気だったのだ!と、ほっとした気持ちもありました。

なぜ境界性人格障害だと思ったかと言うと、病気だとは思っていなかった(気がつかなかった)症状を書きます

 9 感情が抑えられない。今まで付き合った男性や、もちろん主人にも、暴言、取っ組み合いの喧嘩。後に後悔し、別れる気もないのに別れたいなどと言い気持ちを確認する。そして「7世の中に必要ない人間だと思う」に行き着く。
 10 思春期時代に当時初めて付き合った彼氏と別れた後、異常な回数の性体験。後に10年近く現在まで この記憶が思い出すごとに何か叫んでしまうほど、辛い。死にたくなる。

 これをきっかけに? ちょっとした過去の失敗などでも、叫んでしまう。テレビのシーンで思い出すこともあり、テレビを見られなくなることもある。 

 11 生い立ちになるかも知れませんが・・・思春期(中学生頃)から母に対しての反発がひどく、母は手に負えず、精神科に私を連れて行こうかと、当時姉二人と話していたそうです。当時の私は、今思うと、甘えを上手く表現出来なかったのだと思います。

両親は、私が小学校1年生の時に離婚しました。父はお酒を飲んでは暴れ、母に暴力を振るっていました。飲まないときは優しく、姉や私ともよく遊んでくれた記憶があります。先生の色々なQ&Aを見させていただくと、父はアルコール依存症だったのだと思いますが。

父と母が離婚後は、母が、朝早くから夜遅くまで時には三つの仕事を掛け持ちして、5歳離れた姉と私を食べさせてくれました(母から聞いた)。母は、寝る以外はあまりいなかったような気がします。記憶があまりありません。寂しかったのかも分かりませんが、思春期からの反抗期から記憶も鮮明で、母に「あんたは異常だ!頭おかしい!父親にそっくりだ!」と今に至るまで、言われ続けていました。

本当に異常だと思い、「7」に行き着いています。

 長くなりましたが、この結果、主人とB精神科へ行きました。ハッキリと境界性人格障害ですとは言われませんでしたが、気持ちが楽になり、薬は眠くなって子供と精一杯遊べなくなるから嫌なのでもらいませんでした。

 思春期から自分が大嫌いで、死にたいとしか思えなかったのに、自分と向き合えるようになり、治ったとさえ思えるほど、軽やかな毎日でしたが、半月ほど経った頃からやはり近所など、子供を通した人付き合いが上手くいかず、近所が嫌で家から3〜4日出られなくなり、再度主人とB精神科へ行きました。

たまたま前回とは先生が違う日でした。女性の先生でした。仕事の仕方などを聞かれました。私は、バリバリ仕事をするタイプで、幻聴と思われる声が聞こえていた頃(25歳頃)は、小さいですがショップの支店長を任せてもらっていました。支店長として受けた教育は、たった半日の商品説明、種類豊富なオーダーの仕方を一度聞いただけでしたが、意地と負けん気で前年を上回る売り上げを上げ、がんばっていました。その話と、子供との付き合い方を聞かれました。子供とは、家から出られなくなる前は、雨降り以外は散歩、毎日が100の気持ちで遊んであげたい。気持ちがだるく、出られない日の自分が許せなく、子供に申し訳ない気持ちがいっぱいです。無理に散歩へ出て、ただ子供と歩くだけでも申し訳なくなります。                  

その話をしたところ、先生は、「境界性人格障害だろうがうつだろうがそれはもういい、今は精神が分裂している、分裂症です」と言われました。「まじめで、責任感も強く完璧主義な性格がゆえにいいお母さんと悪いお母さんがいて、いいお母さんが、悪いお母さんを押しつぶしている」とのことでした。子供を保育園に預けて、働くことを勧められました。

不眠は続いているのでレンドルミン0.25mgと、私が薬を飲むのを嫌がったので、不安になったら飲んでくださいとメデポリン0.4を処方されました。メデポリンは飲んでいません。

本当に長文になってしまいましたが、私は何の病気なのかわかった上で、自分と向き合い、主人や子供のためにも本当に治したいと思っています。

先生のアドバイスいただけると嬉しいです。


林: あなたは境界性パーソナリティ障害(境界性人格障害)の可能性があると思います。あなたが列挙しておられる1から11も、あなたが育った家庭環境も、境界性パーソナリティ障害(境界性人格障害)としてかなり典型的と言えます。
ただし、現在のあなたは、境界性パーソナリティ障害(境界性人格障害)としては社会適応がかなり良い方であると読み取れます。境界性パーソナリティ障害 患者・家族を支えた実例集 にもお書きしたように、この障害では治療を続けることで良好な経過が期待できますので、ぜひ今の治療を続けることが大切です。

「・・・今は精神が分裂している、分裂症です」と言われました。

と先生から言われたというのは不可解です。幻聴があったとのことですが、この程度の幻聴(一過性の「精神病」症状)は、境界性パーソナリティ障害(境界性人格障害)では時おり見られるもので、分裂症(統合失調症)の診断根拠にはなりえません。

おそらく先生は、「分裂している」とはおっしゃったものの、「分裂症」とはおっしゃらなかったのではないでしょうか。

「・・・いいお母さんと悪いお母さんがいて、いいお母さんが、悪いお母さんを押しつぶしている」とのことでした。

この「いいお母さん」と「悪いお母さん」を、「分裂」と表現されたのではないでしょうか。

境界性パーソナリティ障害(境界性人格障害)という概念は、もともとは精神分析の専門家の間から生まれたもので、その精神分析の用語に「分裂 = スプリッティングsplitting」というものがあります。これは、防衛機制のひとつで、「対象を二つに分裂させてしまう」というのが「分裂」の意味です。対象とは、他者であったり、自己であったりします。他者の分裂とは、信頼・尊敬していた人のちょっとした言動でその人が最悪の人に見えてしまうといったことで、これ自体、境界性パーソナリティ障害(境界性人格障害)の特徴でもあります(ただし、この特徴が「分裂」と同一かどうかは別です。表面的には同じということです)。

「・・・いいお母さんと悪いお母さんがいて、いいお母さんが、悪いお母さんを押しつぶしている」

は、この「分裂」にあたるといっていいでしょう。

いずれにせよ、本当に「分裂症」と言われたかどうかを含め、もう一度先生の説明内容を確かめることが必要だと思います。(おそらく言われていないのだと思います。先生の「分裂」という言葉を、あなたが過剰に解釈されたにすぎないのではないでしょうか)


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