精神科Q&A
【1314】強度の妄想を持つ姑をようやく入院させたが、病識がつかなくて困り果てている
Q:
私が重油で紙おむつを夜中に燃やしていると姑が言うようになりました。
人に見つからないようにインターネットで焼却炉を購入して、家の中で夜な夜な燃やしている、床下から、煙突を出していて、それは、風向きに合わせて、私の家に飛ぶように操作が出来、油と臭いを飛ばしてくる、人が来ると、一瞬のうちに、煙突と臭いを隠す装置がある・・・。
と、何ヶ月にもわたって言うようになったのです。
いろいろ調べてみて、姑は統合失調症ではないかと思い、きょうだいで相談して、外来受診を試みたのですが、数回失敗しました。
失敗するたびに、言うことや、行動が悪化していきました。
例えば、今まで、臭いだけだったのが、
・隣の人の声がとても聞こえるようになった（隣の話し声が聞こえたから隣が、においを出しているのは、確かに確証を得たという）
・床下から換気扇で臭いを飛ばす装置があって、それの為に電波障害を起こして電話や冷蔵庫がおかしい
・塀を乗り越えて家に入ってきて、掃除をしているから最近は、壁とかがきれい等、言うようになりました。
そこで、強制入院の方法しかないと思い、保険所や支援センターなどに相談して、病院を紹介してもらい、計画を立てて、男の子ども達と舅で、病院へ送り込みました。
それから一ヶ月半経ちました。
少し落ち着いてきたように思うのですが、舅が面会のたびに、「家は臭いしてるか」「隣は何もしてないか」など話す姑に「そんなことを言ってたらいつまでも退院できないから、言ったら駄目だ」と、言うせいか・・・・まったく臭いと隣の話はしなくなりました。
しかし、この間外出したときに、「全然どこも臭いしないわ。おかしいなあ。あの時はなんだったんやろうな」と、言っていたのにもかかわらず、舅が面会に行くと「そこもここも臭いしていたけど黙ってたんや」と、言ったそうです。
半月ほど前から、先生には臭いのことは話さないようにしているし、自分がおかしかったかもしれないというようにしているといっていました。
もちろん、主治医には、それを伝えてあります。
でも、３ヶ月で退院といわれているので、このまま病識が無かったらどうしようかと、きょうだい皆が不安です。
病識が出来るまで入院は出来ないのでしょうか？
病識は、どうしてもつかないのでしょうか？
このままだと、退院して家に帰ったら、絶対といっていいほど、薬も飲まないし、通院もしないと思います。
みんなが、必死になって、辛い思いをして、強制入院させたのに・・・・
もとにもどったら、ただ、わたし達に対する恨みだけが残るのでしょうか。（実際、主人は、激しく恨み言を言われ続けています。）
絶対に私が正しい
と、今も言っている姑を見ると、とても悲しいです。
舅までが、隣が悪いように言います。それは、自分がひとりで生活するのが悲しいし大変なので、隣のせいだと思いたいのだと思います。
しかし、本当は、舅の言動に対するストレスと、娘が結婚して自分が一番必要とされている立場でなくなったさみしさから、どんどんと発症していったみたいです。
姑の姉が、何十年も精神病院に入院していて・・・・それと同じ扱いをするのかと、かなり怒っています。
その方の病名は、誰も把握していません。
「頭がおかしい」としか思っていないようです。
だから、舅も、姑の姉妹も、本当の意味での統合失調症を理解してくれません。
入院している姑に対する不安も多々ありますが、退院すると、この無理解の舅と二人暮しです。息子達は「お父さんが原因なんやで」と、説明しますが、全く理解を示さないし、受け入れません。自分の日常にすごく支障をきたしているので、とにかく早く退院させたいようです。
本当に、困っています。
愚痴だけになったようですが。。。。本当に病識がつくことだけが望みです。
林: 統合失調症の姑さんを、何とか入院させて一ヶ月半。この時期には、病識はある場合もない場合もあります。そして、さらに重要なことは、病識というものは、「ある」「ない」のどちらかに白黒はっきりと二分できるものではなく、多くのケースで、灰色とも言うべき状態であることです。つまり、「自分は病気ではない」と言う一方で、通院や服薬は続けている統合失調症の方はたくさんいらっしゃいます。
この【1314】のケースの質問者の方は、
本当に病識がつくことだけが望みです。
とおっしゃっていますが、もちろん病識が完全につけばそれは理想的ですが、それよりもっと重要なことは、病識はともかくとして、通院・服薬を続けることが出来るようにもっていくことです。具体的には、ご家族の対応が最重要でしょう。その意味で、舅さんの対応は非常にまずいものと言えます。質問者の方は、言われるまでもなくそれはご承知とは思いますが、ひとつひとつ以下に指摘します。
少し落ち着いてきたように思うのですが、舅が面会のたびに、「家は臭いしてるか」「隣は何もしてないか」など話す姑に「そんなことを言ってたらいつまでも退院できないから、言ったら駄目だ」と、言うせいか・・・・まったく臭いと隣の話はしなくなりました。
まずこれが非常にまずい対応です。このような言い方をすれば、ご本人は妄想のことをあまり語らなくなる可能性があります。そうなれば周囲は病状を正しく把握できなくなってしまいます。「否定も肯定もしない」、それが妄想に対する正しい対応です。
でも、３ヶ月で退院といわれているので、このまま病識が無かったらどうしようかと、きょうだい皆が不安です。
病識が出来るまで入院は出来ないのでしょうか？
病識は、どうしてもつかないのでしょうか？
病識は「ある」「ない」に二分できないことは上でお話した通りです。したがって「病識が出来るまで入院」という方針は非現実的です。
このままだと、退院して家に帰ったら、絶対といっていいほど、薬も飲まないし、通院もしないと思います。
それは何ともいえません。理由は上記の通りです。ただし、もっとも身近なご家族である舅さんの対応がこのまま不適切だった場合、通院・服薬が不十分(あるいは中断される)になる可能性はかなり高いでしょう。
舅までが、隣が悪いように言います。それは、自分がひとりで生活するのが悲しいし大変なので、隣のせいだと思いたいのだと思います。
このような姿勢がご本人の病状を悪化させるのは言うまでもないことです。
(ただし、舅の言葉は感応性精神障害(二人組精神病)に基づくものでないかの確認は必要です。感応性精神障害については【1265】をご参照ください)
姑の姉が、何十年も精神病院に入院していて・・・・それと同じ扱いをするのかと、かなり怒っています。
その方の病名は、誰も把握していません。
「頭がおかしい」としか思っていないようです。
この方の病名を家族・親戚が把握することは、姑さんへの適切な対応への第一歩として必要です。精神病院に何十年も入院しているという事実から最も考えられるのは、統合失調症の慢性化です。この方がそのような状態になってしまった理由としては、この方の統合失調症そのものが難治で、人格の荒廃が進んでしまった、あるいは、ご家族の理解・受け入れが悪かった、の両方が考えられます。
また、「姑の姉が、何十年も精神病院に入院していて・・・・それと同じ扱いをするのかと、かなり怒っています。」ということで、「同じ扱い」を避けたいのであれば、そのためには病気の理解が必須であることを、何とか舅さんに説明し理解いただくことで、良い方向に向けられる希望があると思います。怒っているだけでは、結果としては何ら改善はなく、結果としてはお姉さまと同じ経過になる、そのようにご説明ください。
だから、舅も、姑の姉妹も、本当の意味での統合失調症を理解してくれません。
姉妹の方々についても同様です。ただ現実から目をそむけようとしている、それで事態が改善するはずがありません。
入院している姑に対する不安も多々ありますが、退院すると、この無理解の舅と二人暮しです。息子達は「お父さんが原因なんやで」と、説明しますが、全く理解を示さないし、受け入れません。自分の日常にすごく支障をきたしているので、とにかく早く退院させたいようです。
上記の通り、舅さんの理解が鍵です。それがなければ、最悪の経過をたどることになるでしょう。