精神科Q&A

  【1287】症状に波はありますが、うつ病は改善に向かっているようです(【1083】のその後)


Q 【1083】うつ病の再発でしょうかで回答をいただいた小学校教諭(男)です。その後の経過をお知らせしたく、メールを送りました。

8月下旬にうつによる病気休暇をとり、10月より職場復帰することができました。
復帰直後、市内の音楽会への取り組みがあって、指導者としてかかわりました。
合唱は好きなほうなので、心苦しくは感じませんでした。
むしろ、自分が学校教育に関わっていることが実感できてうれしかったです。

職場復帰にあたって、「定時で退庁すること」と医師から指示されました。
そんなことできるわけがありません。クラブ指導や各種会議等で午後5時になってやっと学年会の時間が始まるのです。そして、6時ごろから自分の仕事が始まるのです。
「5時」なんかに退庁してしまったら、仕事になりません。
診断書に定時退庁と書かれてしまうと、自分が辛くなるだけです。
診断書には「2週間に1回の通院を要する」とだけ記載してもらいました。

4月になって、初めて低学年を担任しています。
仕事への億劫感は1年以上変わりません。
もしかしたら、うつ病をたてにして、自分はずるい人間になってしまったのでは?と思うほどです。

4〜6月は、締め付けられる頭痛に悩まされました。
前に経験した痛みです。
デパスやソラナックスでは全然効かなかったので、ポンタールで乗り切りました。あんまり効き目は感じませんでしたが…
たぶん、仕事に対するストレス(研究授業や学校行事等への取り組み)が原因だったんだろうと思います。
休む暇なく次々と仕事がやってきて、自分の心が耐え切れなくなってしまったのでしょう。

でも、このあいだ、うつ病になって初めて朝から仕事をがんばろうという気持ちをもつことができました。ですから、少しずつ自分の心が向上しているのだと思います。

病院では仕事の様子や体調などを話して帰ってきます。
薬の種類や量は、昨年の職場復帰から変わらずで、
トレドミン25   毎食後1錠
レンドルミンD  就寝前1錠
を飲んでいます。トレドミンは、朝夜は忘れずに飲むのですが、昼は仕事の忙しさに流されてしまい忘れてしまいます。
主治医の先生は、それでも調子が悪くなければ心配することではないと言っています。
最近は、仕事で疲れて寝つきはいいのですが、午前2時、3時ごろに目がさめてしまい、そこからなかなか寝付けません。この点は、次回の通院でドクターに話そうと思っています。

総じて、気持ちは緩やかな右上がりです。
「発病前の自分には戻れない、今の自分を受け入れるのだ」と思ってすごしています。
正直には、今の自分を受け入れる気持ち50%、前の自分をうらやむ気持ち50%です。
努力なしには向上はしないのですが、仕事に本気になれない気持ちがあります。 


林: 経過をご報告いただきありがとうございました。

もしかしたら、うつ病をたてにして、自分はずるい人間になってしまったのでは?と思うほどです。

うつ病の方は、回復期にしばしばこういった罪悪感をお持ちになるものですが、億劫感はうつ病の症状であって、怠慢とかずるいとかいうものは全く質が異なります。そういうことはお考えにならず、休養をふくめ充分な治療を受けてください。

でも、このあいだ、うつ病になって初めて朝から仕事をがんばろうという気持ちをもつことができました。ですから、少しずつ自分の心が向上しているのだと思います。

総じて、気持ちは緩やかな右上がりです。


メールの内容からも、全体として改善傾向にあることが読み取れます。
しかし、まだ治ったといえる段階ではないようです。

努力なしには向上はしないのですが、仕事に本気になれない気持ちがあります。

うつ病が回復傾向にあっても、このような意欲の低下が比較的長く残ることがあります。逆にいえば、このような意欲低下が残っているうちは、まだ治ったとはいえません。

4〜6月は、締め付けられる頭痛に悩まされました。
前に経験した痛みです。


これも、うつ病の身体症状だと思います。

最近は、仕事で疲れて寝つきはいいのですが、午前2時、3時ごろに目がさめてしまい、そこからなかなか寝付けません。この点は、次回の通院でドクターに話そうと思っています。

この睡眠障害のパターンは、うつ病のパターンです。つまり、回復傾向にあるものの、まだ予断を許さない状況ともいえます。確実な治療が必要です。その意味で、薬物療法の中心である抗うつ薬(このケースではトレドミン)は、確実に飲む必要があります。

トレドミンは、朝夜は忘れずに飲むのですが、昼は仕事の忙しさに流されてしまい忘れてしまいます。主治医の先生は、それでも調子が悪くなければ心配することではないと言っています。

先生は、あなたに過度の心配をさせないためにそうおっしゃったのだと思います。本来なら、今のあなたの状態(回復しつつあるがもう一歩の状態)で、抗うつ薬を飲み忘れることは、治療が根本から崩れる可能性を強めるものです。決められた量を確実に飲むことが必要です。どうしても昼は忘れがちなのであれば、その分を夕や朝に飲むという方法もあります。私があなたの主治医なら即その方法お勧めしますが、ぜひ主治医の先生にご相談ください。うつ病は、治ります。あなたのうつ病は、治りかけています。しかし、ここで確実に治さないと、慢性化するおそれも否定できません。



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