精神科Q&A

 【1157】近所とのトラブルと社会不安障害


Q: 30歳女、専業主婦、夫と二人暮らしです。 

ここ4年程の間に海外も含め主人の転勤にともなう6回の引越しをしました。 
 今年の初めに都会から地方へ越してきたのですが、引越し当初は自然いっぱいの地が楽しくていろんな所へ二人で出かけて楽しんでいました。 
 ですが、2ヶ月ほど経ったある日、主人と外食中に急にふるえ・めまい・吐き気・貧血に似た症状が出てしまい食事を続けられなくなりすぐに帰宅しました。 
 疲れもあったのかと思い気にしていなかったのですが、その後も外食をしている時に限り同じような症状が出るようになりました。 
遠出をしていてどうしても外食をしなくてはならない時は、『外食する』と考えただけで動悸やふるえや冷や汗が出るようになってしまいました。 
なので、ここ最近は一切外食も遠出もすることができないでいました。 

また、今回の転勤で初めて閑静な住宅街にある賃貸の一戸建てに入居したのですが、ここで不動産側ともめ、目の前に建っている製造会社ともめています。入居当初からです。 
 不動産側とのもめ事は建物を初めて見学した時に、『目の前に建っている製造会社との近隣トラブルはありませんか?』と聞いた時、『ありません』と答えたのに今になって 
 『その様な質問は無かった。あったら答えている』と変わったのです。 
製造会社なのですが、とにかくマナーが悪く近隣の方と10年にわたるトラブルが続き警察も介入しているのですが全く改善されていないという事なのです。 
 違法駐車は当たり前、駐車場のゴミはそのままなので飛び散らせ放題、窓全開での操業のため目の前に住む私達は窓も開けられません。 
 一度、主人から路上駐車されると我が家の車が出せないので、家の目の前に停めるのはやめてもらえないかと言いにいってもらってもほとんど改善されません。 
警察に言っても会社側は何の反応も無しです。 

このような事があるため、家にいるのも嫌で週末は気分転換もかねてドライブしたり日帰り 旅行を楽しんでいたのですが、それも私の変な症状のせいで出かけることもできず、かといって家にいたら嫌でも製造会社が目に入りイライラすごしていました。 
 すると、今度は家にいても吐き気・めまい・動悸・ふるえが起こるようになってしまったのです。 
 夜も眠れずイライラする毎日で仕事から帰ったばかりの主人を「あなたの転勤のせいでこんな所に連れてこられて、私は変な病気になってしまった!」と朝まで責め続け、ある時は 「私がこんな精神状態じゃあなたも辛いでしょう。死んだ方がいいよね…」と朝まで泣き続けたり。 

「きっと気持ちが疲れてるだけなんだと思うけど、一回心療内科を受診してみないか?」と 主人に言われ、私も自分がどうしてしまったのかも知りたかったので受診しました。 
そこで先生に言われたのは「大きなストレスによる社会不安障害です」でした。 
メイラックス、パキシル、セディールを処方していただき、2週間ほどで吐き気・めまい・動悸・ ふるえ等の症状がおさまってきたので安心していました。 
しかし、気分が沈みこむ事が多くなってきたので、今ではセディールを止めてメイラックスの 量を増やしドグマチールが追加されています。 

ところが3日前に製造会社の方がまた我が家の車が出られない場所に路上駐車されていたので、 今度は私自身が言いに言ったのですが「あっちに停めるな言うから、ここに停めてるんだ。どこに 停めたらお前の家は文句を言わなくなるんだ」と逆に怒られてしまいました。 
結局、車を出す事ができず、自転車とバスで外出しました。 
 その日の夕方、主人の車が置いてある駐車場で製造会社の従業員3人がタバコを吸い30分ほど 雑談までされてしまいました。(主人は車通勤ですので、その時は駐車場は空でした) 

一戸建てですので、駐車場はリビングの目の前にあります。 
すると、こんな事のあった3日前から全く薬が効かなくなったのです。 
急遽、先生に電話越しにカウンセリングを受けたのですが「薬に頼りきるよりも、根本的に 製造会社とのトラブルを解決した方がいいのでは?その方が快方に向かいやすいと思いますよ。」 と言われました。私は痩せていて体が小さいので薬の量を調節するのも難しいし、薬に頼る体にしたくないという考えもあるのだということでした。 

私が社会不安障害になった理由の一端にはこの製造会社の行為も含まれるのでしょうか? 
弁護士を介し、こちらの意図が伝わり普通に過ごせるようになれば快方に向かうのでしょうか? 


林: まずあなたの診断名ですが、

家にいても吐き気・めまい・動悸・ふるえが起こるようになってしまったのです。 
夜も眠れずイライラする毎日で


このように「家にいても・・・」が症状の中心であるとすれば、あなたは社会不安障害ではありません。ですから、

そこで先生に言われたのは「大きなストレスによる社会不安障害です」でした。

なぜこのような診断になったのか、私にはわかりません。
製造会社の問題が発生する前の状態、すなわち、

遠出をしていてどうしても外食をしなくてはならない時は、『外食する』と考えただけで動悸やふるえや冷や汗が出るようになってしまいました。 

これは確かに社会不安障害的な症状です。けれども、あなたが心療内科を受診したときの主たる問題は、製造会社との関係をきっかけとした、家の中を含めた様々な症状のようですので、社会不安障害とはかけ離れています。

もっとも、薬で治療するなら(「するなら」です)、あなたが処方された内容は適切と思われますし、現に症状が軽減しているとのことですので、あまり診断名にこだわる必要はないかもしれません。

それはそうと、「薬で治療するなら」といま私が言ったのは、あなたの状況は、薬を中心とした治療を考える状況ではないと考えられるからです。補助的に薬を飲むのはいいでしょう。しかし薬だけで解決するはずがないことは明らかです。

先生に電話越しにカウンセリングを受けたのですが「薬に頼りきるよりも、根本的に 製造会社とのトラブルを解決した方がいいのでは?その方が快方に向かいやすいと思いますよ。」 と言われました。

この先生のおっしゃる通りだと思います。

 抗不安薬にしても、抗うつ薬にしても、不安やうつの原因が何であれ、ある程度はどんなケースにも効くものです。しかしだからといって、精神的な問題のすべてを薬で解決しようとするのが正しくないことは明らかです。あなたに現在起きているような問題は、薬で解決しようとするのは間違っていると思います。

 なお、逆にさしあたっては薬による解決を試みるべき例としては【1158】をご参照ください。


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