精神科Q&A

 【1085】55歳の母の言動がおかしくなり、ついに階下の人を攻撃した


Q:初めまして。私は29歳女性です。私の母の事をご相談いたしたくメールしました。
以下、長くなってしまいます。お許しください。

母は55歳です。2年前の秋、20年以上勤めた病院(看護師でした)を突然辞めて東京へ行きました。現在は一人暮らしです。東京へ行った理由は私が高校生の頃から通っていた通信制の大学の大学院に進みたいから、ということでした。

東京に出た時の状況は、引越しというより居抜きでした。何か急いで行ってしまいました。必要な手続き(転出届け等)も全くせず、家もそのままの状態で行ってしまいました。
その時は「いつ戻るかわからない。いつまで居るかもわからない」と言っていました。
東京に行って2ヶ月ほど経つと「隣の人がセックスの声を私に聞かせる」「隣の人が私にセクハラをする」「私がケアマネの資格を取ろうとしているから隣の人が嫌がらせをする」と言い出しました。
私には子供が居りますしなかなか東京に行ける状態ではなかったので話を聞いて心配するばかりでした。
そのうち母は引越しを繰り返し(引越しの理由は先ほど挙げた「隣の人がセクハラ」など全部同じです)、やっと現在のアパートに落ち着きました。昨年の秋のことです。
これで一件落着したのかな、と思っていたのもつかの間、母が賃貸契約しているアパートを管理している不動産屋さんから私に電話が来ました。
母はアパートの2階に住んでいるのですが、階下の住民の方と騒音トラブルが起こっているとのことでした。
・不動産屋さんの話だと階下の方は80歳を過ぎたおばあさんで大変大人しい方とのことでした。このおばあさんの息子さん(60歳前後)が母がうるさいので仕返しに少しうるさくしたようだ、とのことでした。
・母の話だと、階下に住んでいるのは男性で(おそらく息子さんのことだと思うのですが)、若い男女が頻繁に出入りしている。自分にどんな嫌がらせをしようか話し合っている。セックスの声を聞かせる。後ろからついてくる。お尻を触ってくる。
いつもは「静かにしてね」と言うと静かにしてくれるのに、ケアマネの試験の前日の夜すごくうるさくしたので抗議しようとしたら、男性に襲われそうになったので警察に通報した(警察に通報した、ということは不動産屋さんは聞かされていませんでした)
確かに警察には通報したようです。当日のやりとりが知りたくて警察に問い合わせたところ、たまたま当日現場に急行したお巡りさんがいらしたのでお話を聞けました。
母が言う男性は居らず、誰かが母を襲ったという形跡もないので事件として扱わなかった。母の様子がおかしかった。認知症のようだった。とても興奮していた。とのことでした。
この一件を皮切りに母は次々とトラブルを起こしました。
@不動産屋さんに毎日何度も電話をしていました
・「水道がおかしいからN・Kさん(母が通信で通った大学の教授の名前でした)を呼んで」「どうしてN・Kさんを呼んでくれないの」「この前はちゃんとN・Kさんを呼んでくれたでしょう」「あなた(不動産屋の事務員さん)N・Kさんと繋がってるんでしょ。全部知ってるんでしょ」等の内容。
どうしてもN・Kさんの名前が何度も出てきたそうです。
不動産屋さんが契約している水道の業者さんの従業員の中にはN・Kさんと同じ名前の方は居らず大変困ったということでした。

その間、私に何度も電話やメールで「水道屋さんを呼ぶように不動産屋に言え」としつこく要求してきました。
「お前がちゃんと窓口になってくれないから不動産屋が水道屋を呼ばない」「私が頼むよりお前が頼んだ方がいい」「なぜ水道屋さんが来ないのですか」「いつ水道屋さんが来るかわからないので外にも出られません。食料を送ってください」等の内容でした。

A階下の住民が電磁波で心臓を狙うと妹に助けを求めました。
自分が寝ている場所を突き止めて上から棒で突っついてくる。
電磁波で心臓を狙う。
小銭を財布に入れた音だって聞こえてくる(聞かれている)。
だから夜中にそっと来てください、とメールがあったそうです。

B不動産屋さんに連日無言電話
日に100回を超える無言電話だったそうです。
営業できなくなった、と言われました。
不動産屋さんは警察に通報しました。
母の言い分は「電話をすると切られるから何度もかけた」「無言電話をしてきたのは不動産屋の方だ」と言ったそうです。これが今年の3月の話です。
これと同じ時期に私の職場へも無言電話してくるようになりました。

Cとうとう階下の住民の方(おばあさん)に被害
階下の住民のおばあさんのお家の鍵を預かったんだ。何かあった時にいつでも調べる事ができるように鍵を預かったんだ、と母が言っていました。
実際はそうではなくてたまたまおばあさんが鍵を洗濯機の上に置いたものを母が盗ったようです。

ある夜、深夜1時頃のことです。
おばあさんのお家の玄関が急に開いて、バケツで2杯の水をぶちまけられたそうです。
びっくりして外に飛んでみると、二つのバケツを持った私の母が2階へ戻るところだったそうです。
「あなた、どうして私にこんないじわるするの?」と問うと、母は「うるさいばかやろう!私がやったんじゃない!お前がやったんだ!」と叫んだそうです。
このおばあさんのご家族に警察に届け出るよう勧めたのですが、おばあさんも少し認知症の症状があるのでもしかしたら事実ではないかもしれないからと断られてしまいました。

この全ての事が起こった期間、私は毎日母から電話、メール、不動産屋さんから電話でいっぱいいっぱいでした。

もうだめだ、医療機関の受診をさせないといけない、と思い、母の地元の保健所に相談した上で医療保護入院の措置を取る事にしました。
相談しながら、私が変なのかなと思うことさえありました。
何度もN・Kさんの名前を出す割りに、私が「N・Kさんって誰?」と聞くと全て遮断されました。急に何も言わなくなりました。核心に触れると黙り込んだり、「どうして聞くの?」「それを知ってどうするの」「なんの必要があってそれを聞くの」と攻撃するように言いました。

今年の3月に保健所の方と一緒に母を訪ねましたが、逃げられてしまいました。
説得しましたが結局医療に繋ぐことはできませんでした。

思えば、3年ほど前からおかしな発言はあったのです。
「大学の教授(これがN・Kさんのようなのですが)にストーキングされている」「教授が盗聴している」「教授にメールをハッキングされている」「だけどこうしてもらった方が(盗聴やハックをされた方が)都合がいい」と言ったことがあったのです。
私が母に贈った誕生日プレゼントも「誰に頼まれたの?教授でしょ?」と言ってました。
とにかく「教授(N・Kさん)」がいつも出てくるのです。

東京に出ていったのも、N・Kさん本人が「自分と一緒に暮らすことがあなた(母)にとって一番いい」と教えてくれたからだと言いました。
N・Kさんのもとに行くことが良い事だとみんなが教えてくれたと言っていました。
誰も、そんな事は言っていないのですが。

私が3月に保健所の方と訪問することを知った前日に、母は狂ったように私の夫の勤め先に(それも以前の勤め先に)電話をしてわめき散らしたそうです。

私には「明日は予定がありますから来ないでください」「明日は子供たちも連れてきてください」「明日はやっぱり来ないでください」と色んなメールをしてきました。多分、怖かったんだと思います。私ももう少し知識があればもっと上手に対応できたのにと悔やんでなりません。
あの時の対応がもっと適切なものであれば母を医療に繋げることができたのでは、と毎日悔やんでいます

東京に出る前から私は頻繁に母に呼び出されていました。
夜中でも朝早くでも呼び出されていました。
先ほど述べた「教授が盗聴している」等の理由で呼び出されていたのですが、自分の生活が振り回されてばかりでした。
呼ばれて行って、最初の30分はにこやかに話すのですが次第に興奮して私を罵倒するのが毎度のパターンでした。罵倒される理由も何か嫉妬しているような内容でした。かと思うととても優しい時もあったり・・・。
変な話ですが、「彼女が彼氏に文句を言う」ような内容の罵倒なのです。すごく甘えているなぁと感じる内容なのです。「この前はどうして来てくれなかったの」とか「この前来なかったの、仕事だっていうのは嘘でしょ。職場に電話して確認したんだから」とか・・・・。
私は母にとってどんな存在なんだろうと悩みました。
なので妹も弟も当初は母の言動を気味悪がって相手にしなかったのです。
私だけが母の相手をしていたのです。

私がいたらないから母に罵倒されたり母が不安定になるのだろうかと悩み、不眠になり、母が家に来るのではと外で車が走る音がするたびにびくびくしたりイライラしたりしました。
母に呼び出されると断ることができませんでした。母の依頼は断ることができませんでした。私は、母が怖くて仕方ありませんでした。
母は愛情に恵まれない境遇で育った人でした。父とは私が7歳の頃に離婚しています。
それから女手一つで私たち3人を育ててきました。 苦労した母がこれ以上傷ついたり寂しい思いをして欲しくないと思い、母の要求にはできるだけ応えてきました。
怖いと思ったりその反面なんとかしなくちゃと思ったり・・・。
私も変なのでしょうか。

私が子供を優先すると必ず罵倒してきました。
「親がどうなってもいいのか」と。
子供を優先することにも母を優先することにも次第に罪悪感のようなものを覚え、何もできなくなった時期もあります。
誰に会うのも怖くなり、仕事も行けなくなりました。外に出ることも家事も全く何もできなくなりました。

現在、保健所の方の勧めもあり、母とは連絡はとっていません。
「まずは、自分の生活を守って」と言われました。
あなたは何も悪くないよ。もっと自分を好きになって、とも言われました。

母と連絡をとってはいませんが、3月に訪ねたあの日から2、3度電話がありました。メールも来ました。

8月に母がアパートの家賃を滞納していると不動産屋さんから連絡がありました。
3月の色んなことが嘘のように、静かになったそうです。
ただし、夜でも電気がついてないとか居るのか居ないのかわからないということでした。

私は、母は統合失調症なのではないかと思っています。
なぜN・Kさんにこだわるのかはわかりません。個人的に特別なお付き合いがあったと母は言いますが、どうも信憑性に欠ける内容のことしか言いません。
昨年秋から3月までは毎日怖いくらい電話してきていたのが、ぴったり止み、今どうしているのか心配です。

私はただ、子供とゆっくり落ち着いて暮らしたいのです。
母には病院で診察を受けてほしいのです。

保健所の方の勧め通り、自分の生活を守るようになってから、できなくなっていた色んなことが少しずつできるようになってきました。仕事も子育ても前むきに取り組むようになってきました。体が軽くなってきたような、そんな感じです。

言い方はとても悪いのですが、不気味なくらい静かな母が心配です。今後の対応について、アドバイスを受けることができればと思います。お願いします。


林: あなたがおっしゃるとおり、お母様は統合失調症に間違いないでしょう。このままでは悪化する一方なのは目に見えています。すでに階下の方に被害を与えていることから、今後はもっと暴力的な攻撃を仕掛ける可能性もあります。

現在、保健所の方の勧めもあり、母とは連絡はとっていません。
「まずは、自分の生活を守って」と言われました。
あなたは何も悪くないよ。もっと自分を好きになって、とも言われました。


それまでの経過を考えると、この保健所の方のアドバイスは当を得ていたと思います。あなたが倒れてしまってはどうすることも出来なくなるからです。
けれども、

言い方はとても悪いのですが、不気味なくらい静かな母が心配です。

現在の状態についてのあなたの心配は残念ながら実にもっともです。このまま静観することはお勧めできません。

保健所の方の勧め通り、自分の生活を守るようになってから、できなくなっていた色んなことが少しずつできるようになってきました。仕事も子育ても前むきに取り組むようになってきました。体が軽くなってきたような、そんな感じです。

保健所の方の適切なアドバイスの結果、あなたがご自分を取り戻された今、あらためてお母様のことに取り組むべきです。結論としては病院の受診(そして、おそらく入院)以外にないと思います。一日も早く治療を始められることが第一です。

その後の経過(2007.7.5.)


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