精神科Q&A
【1061】仕事は出来ないが日常生活は普通に送れる自分は擬態うつ病でしょうか
Q:
私は20代後半の無職男性です。 この一年半ほど心療内科にてうつ病の治療を受けており、主治医からは「典型的なうつ病」と言われているのですが本当にうつ病なのか、それともただ仕事から逃げて甘えているだけの擬態うつ病なのか分からなくなりました。セカンドオピニオンとして林先生にご意見を頂戴したいと思いメールした次第です。
うつ病の発症時期は一年半前でした。その頃は激務やプレッシャーのかかる仕事に追われて、深夜残業・休日出勤が当たり前となり、
・早朝覚醒
・思考がまとまらない
・倦怠感
・職場の自席のPCディスプレイを思い切り殴りたくなる
等の症状が現れました。その頃は確実にうつ病だったと信じております。主治医もそれを認めて「二ヶ月間の休養が必要」との診断書を書いてくださり、それに基づき休職をしました。
私が「自分は本当にうつ病か?」と疑っているのはその後です。復職後、職場の上司は細かいところまであれこれと配慮をしてくださったので、私の仕事の負荷は極々軽いものでした。それにも拘らず復職後わずか二週間で会社に行くことが奇妙なほど憂鬱になり再度休職をしました。
それから環境を変えたほうが良いのかもしれないと考え、転職もしました。経過としては、
転職(一ヵ月半勤務)→休職(三ヶ月)→復職(一ヵ月半勤務)→休職(三ヶ月)→転職(三週間勤務)→退職
と言うものでした。
転職後はいずれも軽い仕事しか与えられておらず、自分としてはうつ病が再発する要因は無いのではないかと考えております。決まった時間に決まった場所へ行くだけでうつ病が再発するものでしょうか?
ただ転職後も自殺願望だけはあり、何度か自殺未遂の寸前までいっています。首をつる準備をしてみたり、高層マンションの最上階から下を眺めて見たり。。。結局、「死ねずに自殺未遂で終わって半身不随などの後遺症が残ったら最悪だ」と思って自殺には踏み切れずにいますが。
話が前後しますが休職中や退職後の仕事をしていないときはほとんど普通に日常生活を送れています。それ故自分は仕事から逃げているだけの甘ちゃんだ、という思考が浮かんできます。
精神的に落ち着いてるときには、最近では色々資料を調べながらホームシアターセットを購入したり、旅行に出かけたりする事も出来ています。こんな都合の良いうつ病もありえるのでしょうか?是非林先生のご意見をお聞かせください。
林: あなたはうつ病だと思います。擬態うつ病ではないでしょう。
復職後、職場の上司は細かいところまであれこれと配慮をしてくださったので、私の仕事の負荷は極々軽いものでした。それにも拘らず復職後わずか二週間で会社に行くことが奇妙なほど憂鬱になり再度休職をしました。
このような経過は、よくあるとまでは言えませんが、例外的というわけではありません。一見負荷は軽いようにみえる状況でも、職場に出るということは、うつ病の回復においては一つの関門になります。この時期にゆり戻し(うつ病の相談室のp.110などをご参照ください)や、時には再発することもあります。また、そもそも職場復帰の時点で、まだうつ病が治りきっていなかったというケースもしばしばあります。この【1061】のケースがどれにあたるかはわかりません。また、治療内容が不明ですので、悪化した理由もよくわかりません。ただいえることは、
転職後はいずれも軽い仕事しか与えられておらず、自分としてはうつ病が再発する要因は無いのではないかと考えております。決まった時間に決まった場所へ行くだけでうつ病が再発するものでしょうか?
そういうことも少なからずあり得るということです。
そしてこの【1061】は、自殺願望や、ご自分を責める気持ちが出ていることをあわせ、やはりうつ病であるといえます。
それ故自分は仕事から逃げているだけの甘ちゃんだ、という思考が浮かんできます。
そのような考えは払いのけ、うつ病の適切な治療を続けられることが第一です。
なお、
セカンドオピニオンとして林先生にご意見を頂戴したいと思いメールした次第です。
この点ですが、セカンドオピニオンを求められるのであれば、インターネットのような信頼性の疑わしいものではなく、実際に他の精神科医の診察を受けるべきです。精神科Q&Aに質問される方へにお書きしたように、メールでの質問に対する回答には大きな限界があります。ネットからの回答は、いかなるものであっても、現実にはあまりあてにならないとお考えになった方がいいと思います。私の回答も例外ではありません。