精神科Q&A
【1011】あいかわらず病識のない友人・・・家族の説得しかないのでしょうか(【0915】の続き)
Q: 【0915】7年ぶりに突然訪ねてきた友人の様子がおかしい にて回答いただいた者です。その節は、本当にありがとうございました。
さて、その後何度か彼女の家を訪問し、医療機関とまでは言わないまでも、相談室くらいへは行ってほしい、ということを何度か伝えました。
彼女のお母様は、彼女に幻聴らしきものがあることには数年前から気づいており、また、彼女が高校生のころから「機械が埋め込まれている」という訴えは聞いていて、病気かもしれない、とは思っていたそうです。
しかし、彼女のお父様が、「そんなものは病気ではない。優しく接していれば治るはずだ」と言い、彼女が寝たり起きたりの生活をして、食事のリズムもメチャクチャ、髪もとかずに破れた洋服を着て出かけて行っても、何の口出しもしないそうです。そして、「ほら、○子、鳥が飛んでるぞ」とか「桜が咲いてるぞ、見ろよ」などと話しかけるだけの毎日が、もう10年以上も続いているようです。
お母様は、そんな父親(ご主人ですね)に呆れながらも、もうこれはこの子の運命なのだ、仕方がないと考えているので、もう病院には連れて行かない、と考えているそうです。
ただ、お母様は彼女の身だしなみには厳しいようで、「髪をとかせ」「古い洋服で外に出たらだめ。恥ずかしい」などと彼女にいつも言っています。私も何度も訪問したわけではないのでよくわかりませんが、母親から彼女に向けられる言葉は、いつも叱責ばかりのように思えます。
そして、彼女が「股が裂かれる。叩かれる。」という妄想?のような言動をし始める(そのときの彼女は、顔がこわばり、顎がはずれるのではないかというくらいに口を動かし、身体全体も不自然な動きをしているのでその動きで怪我をするのではないかと心配になるくらいです)と、お母様は「そんなものはあんたの気のせいだと言ってるでしょう!機械を埋め込んでるったって、頭に傷なんか残ってないでしょ!」と怒鳴るのですが、最近はそれが毎日になっているそうです。
お母様いわく、「この子がおかしくなってから、もう長いから、治療をするといっても、それと同じくらいの年月はかかるでしょう。それも気の遠くなるような話だし、もうこのままでいいんじゃないかと考えているの。私たちが先に死ねば、国や施設が面倒をみてくれるでしょう」と言います。
今日も彼女の家に行ってきましたが、「もう○○ちゃん(私の名前)には○○ちゃんの生活があるんだから、家には来てくれなくていいわよ。」と言われてしまいました。
私が家に行くと、お母様は私と彼女とを比べて彼女のことを「だらしがない、常識がない、話もしない」と言って怒鳴るので、私が行くことが却って彼女にとって悪いことなのではないかとすら思えてきました。
彼女には、家の近くで一人暮らしをしている妹さんがいます。妹さんも、姉を気遣いながらも、家庭の状況に呆れて、家を出てしまったようです。
ただの一度でもいいので、病院に行ってもらえたら、とは思いますし、私であれば無理やり連れて行くことも不可能ではないと思います。しかし、全くの他人である私が、彼女の家庭にこれ以上介入するべきではないのかもしれません。
昔は仲良くしていた友達が、治療すら受けることなく、ただ家にいる姿を見るのはとても辛いです。やはり家族を説得し続けるしかないのでしょうか。
林: やはりご家族を説得し続けるしかないでしょう。
このようなご家族のために、治療を受けることが出来ない統合失調症(精神分裂病)の方は、相当な人数にのぼるようです。
それに対する問題意識は各方面にもちろんあるのですが、現在の社会・法律では、ご家族の説得以外に方法はありません。