精神科Q&A

【0981】私はうつ病なのか、これまでの治療は適切だったのか(【0559】、【0848】のその後)


Q 【0559】【0848】でご回答頂いた33歳男性です。大変、感謝しております。 ありがとうございました。

上記回答では、私の診断はうつ病であるとのことでしたが、今回も、どうしても「自分は擬態うつ病なのでは?」という自分自身に対しての疑念が晴れずメールをさせて頂いた次第です。 何故なら私の病状は今だ一進一退を繰り返しているからです。
そこで今回は前回【0848】のご回答で先生の「これまでの処方を見てみないと適切な処方かは分からない」とのご指摘から一番最初から最新の処方を添えて、これまでの経過を説明させて頂こうと思います。(長くなってしまいますがご容赦下さいませ)

私の調子が悪くなったのはXX年の6月頃からです。私はその4年ほど前から毎年夏場になると原因は不明ですが不眠になってしまう事があり、当時もまた「いつもの不眠がやって来たのだな」と思いストックしていた睡眠薬を飲んで寝ようとしました。ところが睡眠薬を飲んでも寝られなかったのです。ですが「こんな事もあるかな?」と思い放っておきました。 そんな眠れない事もあってか日が経つにつれイライラが酷くなっていきました。 
と同時に「誰とも話したくない」・「俺は駄目な奴だ」・「会社に行きたくない」等の症状が現れました。 
そんな日々が3ヶ月程続いたある朝、倒れてしまったのです。 自分で倒れた記憶はありませんが妻の話によると起き上がって突然バタッと倒れてしまったらしいのです。これはおかしいと言う事である市民病院に行き脳のCTや睡眠時無呼吸症候群の検査を受けましたが結果は異常無しでした。(倒れた原因は今だ不明ですが、自分では寝呆けていただけなのかな?と思っています) そこで検査結果を受けたその日に前々から上司に「一度病院へ行った方が良いのではないか?」との勧めを受けていた事もあり同病院の精神科を受診しました。
結果はうつ病との事で下記の処方で治療を開始しました。

XX年9月29日〜
トフラニール10mg → 朝・夕1錠
トリプタノール25 → 夕1錠
メイラックス1mg → 夕1錠
レボトミン5mg → 夕1錠

XX年10月13日〜
トフラニール25mg → 朝・夕1錠
トリプタノール25 → 夕1錠
メイラックス1mg → 夕1錠
レボトミン5mg → 夕1錠

XX年11月14日〜
アモキサン25mg → 朝・夕1カプセル
トリプタノール25 → 夕1錠
メイラックス1mg → 夕1錠
ロドピン25mg → 夕1錠

XX年12月15日〜
アモキサン25mg → 朝・夕1カプセル
トリプタノール25 → 就寝前1錠
メイラックス1mg → 就寝前1錠
ロドピン25mg → 就寝前1錠

XX+1年1月9日〜
アモキサン25mg → 朝・夕1カプセル
トリプタノール25 → 就寝前1錠
レンドルミン0.25mg → 就寝前1錠
レボトミン25mg → 就寝前1錠

XX+1年2月6日〜
トリプタノール25 → 毎食後1錠
ベゲタミンA → 就寝前1錠

最初の診断の際は殆どと言っていいほど、何も話す事ができませんでした。ただ「誰とも話したくない」と伝えただけだと記憶しております。
うつ病の診断を受け、すぐにうつ病とはどの様な病気なのかを「うつ病は治る」や先生の「うつ病の相談室」等を読んで勉強しました。何故か勉強をしてかえって症状が重くなった様な事を憶えています。(気のせいでしょうか?)
この時期は何をするのも辛く夫婦間の会話もほとんどゼロで1日中何も出来ない状態でした。
上記の処方で一番効き目があったのはベゲタミンAです。これを飲むようになってからすぐ眠れるようになった事を憶えています。しかし、どの抗うつ薬が有効だったのかは正直な所分かりません。 トリプタノールを飲み続けている事から同薬が一番効果があったのかな?と思う程度です。 とにかく上記の処方を経てXX+1年の3月頃には殆ど症状も
無くなった事もあり、また、職場からの復職要請もあったので主治医と相談し復職する事になりました。 仕事に支障が出ないようにと夜でも通えるクリニックを紹介して頂き転院もしました。 しかし、良い状態は長くは続きませんでした… 
XX+1年5月頃からベゲタミンAの効き目が薄れてしまい、しだいに眠れない・何とも言えない嫌な感じ・無気力・脱力感等が続くようになり下記の処方へと変わっていきました。

XX+1年5月10日〜
トリプタノール25 → 毎食後1錠
ベゲタミンA → 就寝前1錠
アモバン7.5 → 就寝前1錠
マイスリー10mg → 就寝前1錠

XX+1年6月2日〜
トリプタノール25 → 毎食後1錠
アビリット50 → 毎食後1錠
アモバン7.5 → 就寝前1錠
マイスリー10mg → 就寝前1錠

XX+1年7月8日〜
トリプタノール25 → 毎食後1錠
アビリット50 → 毎食後1錠
アモバン7.5 → 就寝前1錠 
マイスリー10mg → 就寝前1錠
ロヒプノール2mg → 就寝前1錠

XX+2年1月13日〜
パキシル20mg → 夕食後1錠
アビリット50 → 毎食後1錠
マイスリー10mg → 就寝前1錠
ロヒプノール2mg → 就寝前1錠
テトラミド10mg → 就寝前1錠

XX+2年4月21日〜
アモキサン25mg → 毎食後2カプセル
パキシル10mg → 夕食後1錠
アビリット50 → 毎食後1錠
マイスリー10mg → 就寝前1錠 
ロヒプノール2mg → 就寝前1錠
テトラミド10mg → 就寝前6錠

XX+2年6月22〜
アモキサン25mg → 毎食後2カプセル
アビリット50 → 毎食後1錠
セパゾン1mg → 朝・夕1錠
マイスリー10mg → 就寝前1錠 
ロヒプノール2mg → 就寝前1錠
テトラミド10mg → 就寝前6錠

XX+1年5月からXX+2年6月までの約1年間は良くなったり悪くなったりの繰り返しでした。 仕事の方も復職・休職の繰り返しです。 ここまでの経過で分かった事は症状が出るときは必ず不眠の症状から出る事です。そしてそれを我慢して仕事を続けているとしだいに何とも言えない嫌な感じ・無気力・脱力感が現れてしまいます。
また同クリニックの主治医から6月22日の診察の際に「あなたは難治性うつ病です」と言われました。これには大きなショックを受けました… そこで主治医からは「復職・休職を繰り返しながら除々に回復するのを待つか(要は病気と上手くつきあっていけと言う事だと思います)、更に突っ込んだ医療を実施すべく他のクリニックへ転院するかの判断を迫られました。 私には当時の状態を我慢するのはとても辛い事でしたし、このまま症状をズルズルと引きずるのも嫌でしたので後者の転院を選択しました。
転院先での初診の際にこれまでの経緯を説明し「私は本当に難治性うつ病なのでしょうか?」と質問した所、「何とも言えない」との回答でした。そして「取りあえず休職して様子を見てみましょう」との事で治療が開始されました。処方は下記の通りです。

XX+2年8月4日〜
アモキサン25mg → 毎食後2カプセル
セパゾン1mg → 朝・夕1錠
マイスリー10mg → 就寝前1錠 
ロヒプノール2mg → 就寝前1錠
テトラミド10mg → 就寝前6錠
コントミン12.5mg → 就寝前1錠

XX+2年8月18日〜
リタリン10mg → 朝1錠
アモキサン25mg → 毎食後2カプセル
マイスリー10mg → 就寝前1錠 
ロヒプノール2mg → 就寝前1錠
コントミン12.5mg → 就寝前1錠
レスリン50mg → 就寝前1錠

今回も薬の効果は不明でしたが3ヶ月間休職した事によりある程度回復したので11月に復職しましたが2ヵ月後(つまりXX+3年の1月です)にまた調子が悪くなってしまい、現在もまた休職中です。
また同クリニックでの2回目(8月18日)の診察の際、「この処方で駄目なら電気痙攣療法も考えなければならない」と言われていましたので今度は大学病院へ転院することになりました。
その大学病院での初診の際はこれまでの処方箋を自分でまとめた物を持参し主治医に見せた所、処方は下記に変更されました。

XX+3年2月9日〜
アモキサン25mg → 毎食後2カプセル
レスリン25mg → 朝・夕1錠
デジレル50mg → 就寝前2錠
ウインタミン12.5mg → 就寝前1錠
マイスリー10mg → 就寝前1錠 
ロヒプノール2mg → 就寝前1錠

XX+3年2月23日〜
アモキサン25mg → 毎食後2カプセル
デジレル50mg → 朝・夕1錠 就寝前2錠
ウインタミン12.5mg → 就寝前1錠
マイスリー10mg → 就寝前1錠 
ロヒプノール2mg → 就寝前1錠

現在はまだ薬で様子をみている状態なので電気痙攣療法の施行には至っておりません。 病状の方も相変らずの不眠・何とも言えない嫌な感じ・興味の喪失・無気力・脱力感が続いております。 仕事に行きたいのに行けない事への焦りやイライラも辛いです。私が家に居ることで家全体の雰囲気が暗くなっている様にも思います。 そして何より妻に対して申し訳ない気持ちで一杯です。 

さて長くなってしまいましたが私の質問は下記の通りです。

1)私は擬態うつ病ではないでしょうか? 先生の「擬態うつ病」も読ませて頂きましたが当てはまる点がある様に思います。例えばうつの状態が何年も続いている事等です。

2)私が本当にうつ病ならば何故ここまで長引いているのでしょうか? 薬の量が足りていないのでしょうか? それとも他の理由があるのでしょうか。

3)私が本当にうつ病ならばやはり「難治性うつ病」という事になるのでしょうか?

以上、何卒ご回答の程、宜しくお願い致します。 


: 詳細にご報告いただきありがとうございました。うつの症状で苦しんでおられる時期に、これだけのメールをお書きになるのは大変だったとお察しいたします。

1)私は擬態うつ病ではないでしょうか? 先生の「擬態うつ病」も読ませて頂きましたが当てはまる点がある様に思います。例えばうつの状態が何年も続いている事等です。

あなたはうつ病だと思います。擬態うつ病ではありません。その理由は【0559】【0848】にお書きしたとおりで、今回のメール内容を検討した結果も判断に変化はありません。


2)私が本当にうつ病ならば何故ここまで長引いているのでしょうか? 薬の量が足りていないのでしょうか? それとも他の理由があるのでしょうか。

あなたのこれまでの処方を見ますと、当初は確かに薬の量が不足だったと判断できます。十分な量が開始されたと言えるのはXX+2年4月21日の処方からです。
 ですから、それまでの約2年間の状態は、抗うつ薬の量が足りていないことが原因として大きかったとも考えられます。

 ただし、だからといってそれまでの治療が不適切であったとまでは言えません。
 うつ病の治療では、その時点で回復が不十分でも、それまでの経過や症状などから、増薬しなくともさらなる改善が期待できると判断した場合には、あえて薬を増量して副作用の危険を冒すことはせずに、そのままの量で経過をみることはしばしばあります。
 ですから、あなたの薬の量がこれまで足りなかったというのは、あくまで結果から見てのことです。(極端に足りないようなケースでは、不適切だったと後からでも言い切れますが、あなたのケースでは極端に足りなかったとまでは言えない量です)


3)私が本当にうつ病ならばやはり「難治性うつ病」という事になるのでしょうか?

まだ何ともいえません。
難治性うつ病とは、十分な抗うつ薬の量で十分な期間治療しても回復しないうつ病のことを指します。この【0981】のケースでは、2)でお答えしたように、十分と思われる量の抗うつ薬が開始されたのがXX+2年4月21日ですので、「あなたは難治性うつ病です」と言われたXX+2年6月22日の時点ではそう断言するのは時期尚早だと思います。転院先で、

初診の際にこれまでの経緯を説明し「私は本当に難治性うつ病なのでしょうか?」と質問した所、「何とも言えない」との回答でした。

このように言われたのはもっともだと思います。

そしてその後の処方も適切であると私は考えます。今後、この病院での治療を続けることをお勧めします。今の処方による改善は十分期待できます。もっとも、これでも効かないこともあり得ますが、その場合は同じ程度かそれ以上の強さで、他の薬を試みるのか、いわゆる増強薬を併用するか、あるいは電気けいれん療法を試みることも考えていいでしょう。

いずれにせよ、あなたはうつ病です。擬態うつ病ではありません。うつ病は治ります。

           *          *          *

蛇足ですが一つつけ加えます。

うつ病の診断を受け、すぐにうつ病とはどの様な病気なのかを「うつ病は治る」や先生の「うつ病の相談室」等を読んで勉強しました。何故か勉強をしてかえって症状が重くなった様な事を憶えています。(気のせいでしょうか?)

うつ病の症状が一定以上ある時期には、うつ病に関する本を読むことはご本人にはあまりお勧めできません。このように、むしろ悪化する傾向もあり得るからです。うつ病がある程度以上よくなってからお読みになってください。そうすれば病気の対処の仕方などについて有益だと思います。


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