精神科Q&A
【0976】うつ病なのか現実逃避なのか
Q: 30代男性です。1年程前位から仕事上でのストレスが原因なのか重要な意思決定や判断が出来なかったり、仕事をしていても全く物事に集中できなかったり、一日中(特に朝)気持ちが沈んでいたりと「うつ病」的な症状の自覚がありました。
そのような状況の中でしたが、4ヶ月前くらいに仲間と独立をして事業を開始したのですが、仲間(特に上司)との考え方の違いや、求められる仕事のレベルの高さもあってか、益々仕事が辛くなり、気持ちは沈んで一日中なにもしないで、ただボーっとするような感じが続きました。依頼された仕事や求められるレベルも全く達成することが出来ず自暴自棄的な感情にさいなまれる毎日でした。
あまりに不安になり、精神科を受診したところ、「うつ病」ということで、2週間に1回程度の受信と毎日の投薬をここ2ヶ月弱続けています。薬は、朝夕に、ドグマチール錠50mg及びデパス錠0.5mgをそれぞれ2錠と、就寝前にパキシル錠10r1錠を服用しています。
はじめはパキシルは服用していなかったのですが、初めの2週間程度であまり効果が見られなかったので、パキシルを加え、ドグマチールとデパスも昼食後に追加しました。その後、気持ちの沈みが大分おさまったのと、あまりの眠気のひどさを医師に訴えたところ、昼のドグマチール及びデパスは止めました。
薬の効果なのか、以前に比べて絶望的な気持ちの沈みはなくなりましたが、仕事についてはなかなか思うようには進みません。ついつい気持ちが後ろ向きになって、上司からは「うつ病なんてそんなものはなくて、ただ単にやる気がないだけではないのか?」との叱咤もうけました。うつ病の本等を読むと身体的には不眠という状況も出るようですが、現時点では自分は全く逆で、眠らないと生活できないくらいで、いくら寝ても朝は疲れてボーっとしているような状況です。
確かに仕事以外では大分落ち着きを取り戻してはいますが、まだ妻や娘には、ふがいない夫であり父親という負目も感じていますし家族は本当に大切で心休まる存在なことは間違いないのですが、どうしても心から楽しめないような状況もいまだにあります。妻は大変理解があり、あえて「がんばれ」的なことは言わず、普段どおり接してくれます。家族には心から感謝しています。
今の自分の中には、仕事に打ち込めていない情け無い男という気持ちとそんなこと言っても出来ないものは出来ない・・・という逃避的な気持ちが混在しており、自分でも正直わかりません。とにかく最大のストレスは仕事であり、自分の考えとは異なるものを求める上司であることは間違いありません。(ただ上司については人間的には尊敬しています)
自分は「うつ病」なのでしょうか?それとも単なる仕事が嫌で「うつ病」という理由を無理矢理くっつけて現実逃避しているだけなのでしょうか?
今後どのように対応していけば良いのでしょうか?
林:
あなたはうつ病だと思います。現実逃避ではありません。治療を続ければ治ります。
1年程前位から仕事上でのストレスが原因なのか重要な意思決定や判断が出来なかったり、仕事をしていても全く物事に集中できなかったり、さらには一日中(特に朝)気持ちが沈んでいたりと「うつ病」的な症状の自覚がありました。
このように、漠然とした判断力の低下、集中力の低下で始まるのは、うつ病の発症としてよくあることです。さらには抑うつ気分が現れ、しかもそれが朝に強いという日内変動も見られますので、この時点でほぼうつ病と診断できるでしょう。
薬は、朝夕に、ドグマチール錠50mg及びデパス錠0.5mgをそれぞれ2錠と、就寝前にパキシル錠10r1錠を服用しています。
はじめはパキシルは服用していなかったのですが、初めの2週間程度であまり効果が見られなかったので、パキシルを加え、ドグマチールとデパスも昼食後に追加しました。その後、気持ちの沈みが大分おさまったのと、
このような薬への反応性も、うつ病として矛盾はありません。
そして症状は回復に向かっていますが、まだその途上であることは以下のことから明らかです。
・以前に比べて絶望的な気持ちの沈みはなくなりましたが、仕事についてはなかなか思うようには進みません。ついつい気持ちが後ろ向きになって、
・眠らないと生活できないくらいで、いくら寝ても朝は疲れてボーっとしているような状況です。
・まだ妻や娘には、ふがいない夫であり父親という負目も感じています
・どうしても心から楽しめないような状況もいまだにあります。
これらはいずれもうつ病の症状の残存といえます。特に、後ろ向きの気持ちや心から楽しめないといった症状は、比較的あとまで残りやすいものです。
したがって、今はあせらず治療を続けるべき時期で、周囲の方にも穏やかに過ごせるような対応を求めたい時期です。ですから、
妻は大変理解があり、あえて「がんばれ」的なことは言わず、普段どおり接してくれます。
奥様の対応はきわめて適切だと思います。あなたの回復がどれだけ助けられているかはかりしれません。
上司からは「うつ病なんてそんなものはなくて、ただ単にやる気がないだけではないのか?」との叱咤もうけました。
上司の対応はきわめて不適切です。というより、うつ病に対してやってはいけない対応の見本と言えます。あなたの回復がどれだけ阻害されているかはかりしれません。
とここで上司の批判をしても何にもなりませんが、あなたがうつ病であり、回復途上であることをもう一度はっきり申し上げたいと思います。そして現実には、周囲の方すべてに適切な対応を求めるのは難しいものです。奥様の対応が適切であるという良い環境のほうを重視すべきでしょう。上司の言葉は聞き流すことをお勧めします。あなたはうつ病です。うつ病は治ります。