精神科Q&A
【0914】診療に不満なのですが、このくらいは普通なのでしょうか
Q:
私は現在28歳の女で、会社勤めをしております。
いまの会社は転職してきたところなのですが、前職を辞める2年半ほど前から、夜寝付けず、深夜一時間ごとに目が覚め、理由もないのに泣き崩れたり、感情がコントロールできなかったり、不安感とおそろしさがつきまとい、仕事に密接に関係のある読書もできず、いつも疲れていて、死ぬこと(というより意識をなくしたい・存在を消したい)ばかり考える日々になりました。
身体を動かしていないせいかと思い、護身術をはじめましたが、感情の起伏と苦しみは改善されず、まずは小さな総合病院といったところに行き、カウンセリングを受けました。その結果、精神科にかかってみては、と言われ、そのときはカウンセリングと同時並行で治療をするというお話だったのですが、精神科の先生は、「あなたは仕事で疲れているだけだから、カウンセリングはいらないでしょう」とおっしゃられ、その後も1-2分、わたしの職業である書籍出版の実情(仕事がつらいかといった内容ではなく、どうやって本は出るのかなど)に関して聞かれるだけで、薬を処方されるという生活が続きました。
わたくし個人は、仕事で疲れてという感覚が薄く、それよりも、家族(姉)から受けてきた20年間の仕打ちや幼少のころの性的な虐待などそういったことにつながるような気がしてならず(姉と話すときの自分が冷や汗をかいて震えてしまう等のことからそう考えていました)、ほかの病院に通う決心をいたしました。
次にお話をしたところはたいへんよい先生だったのですが、その矢先、会社にわたしの状態がもれまして、医務室を通して、会社が連携しているメンタルクリニックに強制的に変えられてしまいました。
そこのクリニックの先生は、80歳近いご高齢で、まず「あなた方は、みんな体力がないの。だから一日二万歩歩けばよくなるから」とおっしゃられ、以前出してもらっていたデプロメール、コンスタン、ワイパックス、デパス(頓服用)をいただきました。
その後も現在まで一年通っておりますが、「薬はあってる?」と聞かれ、「とにかくおんぶにだっこはできないから」とおっしゃられ(もっともだと思うのですが、喉から手が出るほど助けがほしいとき、どうしようもない気持ちになってしまいます)、「なんでもいいから二万歩歩きなさい。ぼくが戦争時代、身体が弱くて、それでたくさん歩いて身体を鍛えて乗り越えたんだから」というお話を繰り返しなさいます。
それだけならいいのですが、一度ひとり暮らしをするという話を申し上げたとき、一時間ほど押し問答したことがあります。絶対に悪くなるからやめなさい、と言われたのですが、もう契約してしまったので悪くなったら戻るという形で容認していただけないでしょうか、とお話をしてなんとか承諾をいただきました(一人暮らしはあまりよくないということは知っていたのですが、もう家族の前で平気な不利をすることに疲れてしまったので、ペットを連れて出て行けば死んだりして誰かを傷つけることもないだろうと考えた次第です)。
しかし、翌週にうかがったところ、「いまご実家でしたっけ?」と聞かれ「一人暮らしです」と申し上げると、「ご両親は健在ですか?」と聞かれました。実は引越しの話をした直後に父が他界し、それを経て住居を移しまして、その件も報告していたのですが、お忘れになっていて、「ご両親がご健在のときから一人暮らしなの?」と言われ、正直戸惑ってしまいました。
わたしがいまどんな病状でいるのか、ほんとうに病気なのかもお答えいただけず(これは以前「わたしの性質の問題でしょうか」と言ったとき、「そこなんだよ」とおっしゃったのが関連するかもしれません)、いまだにわたしはほんとうに鬱なのか、わからずにいます。
いまでも、家では泣いてばかりで、いつも一時間ごとに起きてしまい、会社でのミスも多くなってきました。
現在の症状は、上記に加えて、突然ある言葉を叫ばないと(「ごめんなさい」とか「大っ嫌い」とか自分の名前を10回以上大声で叫んでしまうのです)気持ちがおさまらなかったり、友人に会いたくても会えなかったり、人とにこやかに別れた後など突然ふらっと何の気なしに電車に飛び込みたくなったり、そういった情緒の不安定さがあります。
見かねた上司が悪くなる一方だからと休職をすすめてくれています。しかし、先生は頑なに休職はダメだ、とおっしゃいます(社内の他のうつ病の方は休職をなさっています)。
その対処として点滴治療などされたこともあったのですが、途中で仕事ができなくなるという関連でやめました。
以上、大変長くなり恐縮するばかりですが、ひとつうかがいたいのは、わたしは病院を変えるべきかどうかです。
今の先生の人柄はとても好感を持っておりますが、理解をしていただいているという気持ちが薄く、会社以外の周囲は会社が許せば変えたほうがいいんじゃない? と忠告してくれています。
ただし、先生もたくさんの患者さんを日々ご覧になっていることと思いますし、これが通常範囲なのかどうか、わたくしにはわかりません。
林: 病院は当然変えるべきです。
会社にわたしの状態がもれまして、医務室を通して、会社が連携しているメンタルクリニックに強制的に変えられてしまいました。
まずこの時点で会社の対応は大いに疑問です。このように本人の意思を無視して通院先を会社が決めるようなことでは、そもそもの出発点からして治療の成果が危ぶまれることになります。
もっとも、会社が指定したのが良いクリニックなら、一歩譲って、それでもよしとすることもできますが、
まず「あなた方は、みんな体力がないの。だから一日二万歩歩けばよくなるから」とおっしゃられ、
この「まず」が、どの程度あなたの状態を把握して発せられた言葉であるかが問題です。あなたがうつ病でなければ、このようなアドバイスが有効なこともあるでしょう。しかし、うつ病であった場合、これは最悪のアドバイスに属するものになります。
「なんでもいいから二万歩歩きなさい。ぼくが戦争時代、身体が弱くて、それでたくさん歩いて身体を鍛えて乗り越えたんだから」というお話を繰り返しなさいます。
このように、自分の経験をもとに、物事を乗り越える方法を指示するのは、うつ病の方への対応としては最悪の見本です。
話は前後しますが、あなたがうつ病かどうかということがまず問題ですが、
前職を辞める2年半ほど前から、夜寝付けず、深夜一時間ごとに目が覚め、理由もないのに泣き崩れたり、感情がコントロールできなかったり、不安感とおそろしさがつきまとい、仕事に密接に関係のある読書もできず、いつも疲れていて、死ぬこと(というより意識をなくしたい・存在を消したい)ばかり考える日々になりました。
いまでも、家では泣いてばかりで、いつも一時間ごとに起きてしまい、会社でのミスも多くなってきました。
現在の症状は、上記に加えて、突然ある言葉を叫ばないと(「ごめんなさい」とか「大っ嫌い」とか自分の名前を10回以上大声で叫んでしまうのです)気持ちがおさまらなかったり、友人に会いたくても会えなかったり、人とにこやかに別れた後など突然ふらっと何の気なしに電車に飛び込みたくなったり、そういった情緒の不安定さがあります。
これらの症状からは、うつ病の可能性がかなりあると思います。
一度ひとり暮らしをするという話を申し上げたとき、一時間ほど押し問答したことがあります。
しかし、翌週にうかがったところ、「いまご実家でしたっけ?」と聞かれ「一人暮らしです」と申し上げると、「ご両親は健在ですか?」と聞かれました。実は引越しの話をした直後に父が他界し、それを経て住居を移しまして、その件も報告していたのですが、お忘れになっていて、「ご両親がご健在のときから一人暮らしなの?」と言われ、正直戸惑ってしまいました。
先生もたくさんの患者さんを日々ご覧になっていることと思いますし、これが通常範囲なのかどうか、わたくしにはわかりません。
確かに、多くの患者さんと毎日接するうちに、細かい点が混乱してしまうことはあり得ることです。けれども、このケースでは、一時間も押し問答をした翌週のことですから、いくらなんでもそれを忘れるようでは診療にもならないでしょう。
先生は頑なに休職はダメだ、とおっしゃいます
あなたがうつ病でないという確固たる判断があれば、休職は避けるというのも一理あります。しかし、うつ病の可能性が高いあなたに対しては、休職は有効な方法のひとつであり、頑なに禁ずるのは理解できません。
(会社から強制的に紹介されたという経緯からは、「うつ病でも休職はさせない」という、会社の不条理な方針があるのではないかと疑いたくもなります)
今の先生の人柄はとても好感を持っておりますが、
人柄はもちろん大切ですが、診療技術がなければやはり医師としては頼りになりません。
結論は、冒頭に言いましたとおり、病院は変えるべきです。
なお、
わたくし個人は、仕事で疲れてという感覚が薄く、それよりも、家族(姉)から受けてきた20年間の仕打ちや幼少のころの性的な虐待などそういったことにつながるような気がしてならず
この点は今はあまり考えても仕方ないでしょう。うつ病では、このような原因(らしきもの)を追求するより、まず治すことを第一に考えるべきです。(遠い過去の原因らしきものを追求しても、治癒にはつながりません)
病院を変えて、信頼できる医師の治療を受けることを強くお勧めします。