精神科Q&A
【0886】中学3年の子どもの不可解なエネルギー低下
Q:
中学三年生（15歳）の男の子の事で相談いたします。私は53歳の父親です。小さい頃から対人関係が気になる性格で、同年代の子どもを苦手にしておりました。小学校時代も親しくしていた子どもはわずかでした。
中学入学以降、案の定対人関係が難しく、一年生、二年生の間は、こちらが気にするし反応するから面白いらしくて、色々とつつかれることがありました。不登校にはなっていなかったのですがそのおそれもあり、先手を打ってカウンセリングを受けたりしました。（カウンセリングで一定の成果はありました。）本人にとって苦境の中でしたが、勉強はがんばっていたので、成績は上位を保っていました。
三年生になって、クラス編成で配慮してもらえたので、クラスメイトに問題のある子どもはいなくなりました。緊張無く登校できる環境になったのです。ところがその三年の一学期以来、全く勉強に身が入らなくなりました。テスト答案も白いままのところが多く、最下位近辺の成績を続けております。学校は休まずに行っていますが、授業をちゃんと聞いてはないでしょうし、テスト勉強もしてはいますが、心ここにあらずという感じです。他に関心事があるのかというとそうではなく、ＣＤを買ったり借りたりして聴くことと、音楽情報をインターネットで探すぐらいのことしか興味はないようです。読書量もわずかです。クラブ活動にも身が入らないので辞めてしまいましたし、生活全般にわたってエネルギーが低い状態が続いており、どうしたものか困っております。
そんな折から「うつ病」に関する情報を調べたところ、子どもの様子に合致するものがあるように思えますので、列記いたします。
・気分の日内変動がある。
朝は起きづらく体調も不良で、日中も身体がだるく、夕方から夜にかけては良くなってきます。
・すぐに眠たくなる。
運動や食事の後はすぐに眠気がきます。休みの日は昼頃まで寝ています。平日はほぼ毎日、リズムが崩れるから寝るなと言うのに帰宅後1、２時間の睡眠をとります。その睡眠の後も朝の寝起きと同じく、不機嫌で体調がすぐれません。
・夜の寝付きが悪い。
昼寝のせいで真夜中あたりは比較的気分がよいようですから就寝は遅く、午前１時ごろです。
・頭痛、首・肩のこりは恒常的。
体調の不良を訴えることがよくあります。
・顔つきが悪い
本来明るい性格なのに、とてつもなく暗い表情になるときがあって驚かされます。
・身辺整理ができない。
衣服や教科書など散乱したままで、なかなか片づけません。
・行動が伴わない。
励ましてもあまり効果はなく、注意に対して自らの非は認めても、行動に結びつきません。
これらのことは三年になってから始まったことではなく、一年の時からのことなのですが、特に最近はやる気のなさや意欲の低下がひどくなりました。学校を休むようなことはないのですが、授業もわからないでは面白くないでしょう。中学校の入試に向けて小学校高学年の時に身につけた学習習慣が失われたことも不可解です。
このような状態なので私は「うつ病」ではないかと疑っております。しかし周囲では別の意見もあります。
・本来が怠け性である。
甘やかして手をかけて育てましたので、依頼心が強く精神面の幼さが残っています。言われるから、嫌々やってきただけのことにすぎないので、勉強嫌いも今に始まったことではない。
・成長期なので眠たいのは当たり前。
・自分探しをしている。
勉強以外のところで自分に「何か」を持ちたい焦りから、何も手に着かない様子。
などと言われれば、確信が持てなくなります。上の内容だけでは判断が難しいかもしれませんが、ご意見をお聞かせ願えれば幸いに存じます。
どうぞよろしくお願いします。
林:
このような状態なので私は「うつ病」ではないかと疑っております。
うつ病の可能性はあると思います。けれども、ここに箇条書きにされている症状は、
そんな折から「うつ病」に関する情報を調べたところ、子どもの様子に合致するものがあるように思えますので、列記いたします。
という背景から書かれたものであることを考慮すると、判断は難しいと思います。というのは、本などを調べて、何かの病気と同じ症状だ、とおっしゃって受診される方はたくさんおられますが、実際に診察してみると全然違うということはよくあるからです。ご家族(や、ご本人)は、つい本の症状に重ねて判断してしまうことが原因なのでしょう。特にうつ病の症状は、文章で記載しただけでは単なる落ち込みと区別しにくいものです。
そうしますと、お書きになっている「別の意見」の検討が必要になります。
・本来が怠け性である。
これは、息子さんの「本来」がどのようなものかわかりませんのでその意味では何とも言えませんが、メールに書かれている症状は、単なる怠け性とは片付けにくいように思えます。
・成長期なので眠たいのは当たり前。
これも違うでしょう。そういうレベルの症状ではありません。
・自分探しをしている。
「自分探し」というのは、最近よく聞く言葉ですが、これは単なる流行語であって、使う人によって意味が違うと思われますので、検討することに意義があるとは思えません。
それよりも15歳という息子さんの年齢でこういった症状が出ている場合には、発症率からいえばうつ病よりも統合失調症(精神分裂病)を先に考えなければなりません。また、発達障害の可能性も捨て切れません。いずれにしても、専門家の診察を受けなければ正確な診断は期待できません。うつ病の可能性も含めて、一度精神科を受診されることをお勧めします。