精神科Q&A
【0099】 うつ病で食事をしなくなってしまった
Q: 55歳の母が2〜3ヶ月程前からうつ病になり、食事をまったくしなくなってしまいました。「食欲がない」の一点張りで、コーヒーやお茶、アルコールくらいしか口にしません。栄養不足からよけい具合が悪くなったり、うつの薬の効き方にも影響するのではと心配です。「がんばってご飯食べよう!」とも言えず困っています。それとも本人に食べる意思が出てくるまで待ったほうがいいのでしょうか?
林: 栄養不足の度合いによります。ご心配されているように、栄養不足からよけい具合が悪くなることもあり得ますし、薬の効き方への影響もあり得ます。具体的には、副作用が強くでることも考えられます。栄養不足が著しい場合には、入院して点滴などの治療を受けることが必要になります。
栄養不足の度合いを見るためにご家庭でできることは、まず体重を測ることです。体重が減っていなければ、まだそれほど心配する必要はありません。著しく減った場合は問題ですが、どのくらい減ったら問題かということは一概には言えません。何日間かかって減ったかということも関係してくるためです。急激に減ると、身体がそれに対処しきれずに、色々な障害が出てくる可能性がありますが、ゆっくり減った場合には身体の方でうまく適応することも多いものです。
確実な判断方法は、病院で血液検査をすることです。血清タンパク、血糖値、電解質(ナトリウム、カリウムなど)などを調べれば、栄養失調かどうかがわかります。その結果が悪ければ、やはり入院もやむを得ないでしょう。
うつ病の症状の中で、食事が取れなくなるというのは、実はかなり対応に困惑する症状です。うつ病そのものがよくなってくれば食欲が出てきますので、ある程度まではそれを待つのが普通です。けれどもどこまでが「ある程度まで」かの判断はなかなか難しいもので、待ちすぎると栄養不足のために身体に色々な不調が出てきて、薬の副作用も強く出やすくなるため、うつ病はまだよくなっていないのに抗うつ薬を強くすることもできないというジレンマに陥ってしまうこともあります。そのような場合は、あるいはそのような事になる前に、電気けいれん療法を考慮することも必要です。