精神科Q&A
【0767】隠れて鎮痛剤やお酒を飲む統合失調症の姉(【0727】のその後)
Q:
【0727】うつ病ではなく統合失調症といわれたが納得できないで回答をいただきました。ありがとうございました。
先生のご指摘のとおり、先生に質問のメールを送ったのは、統合失調症という病名を主治医に言われ、嘘であって欲しいと思っていたからです。
誰かに、違うよ、間違いだよと言ってもらって、この状況から救って欲しかったからです。
偏見や社会復帰の難しさ、今後の様々なことを考え、絶望的だったのです。
先生から【0727】の回答をいただくまでの間に統合失調症についての本を読み、姉の状態を照らし合わせ認めざるを得なくなりました。
先生に質問を送った時点の姉の状態は、全く自分から話をしなくなりました。感情が消失したような状態で、また、手に持ったジュースがこぼれていても、そのまま見てるだけ。ボーっとしている感じでした。
リスパダールを内服し、4ヶ月経った今の状態は、随分表情が出てきて、テレビを見て笑ったり、漫画なども読む姿もみられます。ごくまれに家事を手伝うこともあります。
身なりにはまだ、気がまわらないようです。
ただ、非常に心配な点があり、
1)鎮痛剤を隠れて薬局に買いに行き、1日に10包近く飲んでしまう
2)隠れて飲酒をする。1週間でウイスキーのボトルを空けてしまう(全て飲んだか
は確認できず)
3)トイレットペーパーを食べている(1日中口を動かしている)
上記のような行動が見られます。3)については、姉を見ているとイライラすること
ありますが、何とか見過ごせます。
ただ、1)、2)については、どうしても心配です。
体に悪いからと何回説明しても、その時は分かったと言うのですが次の瞬間には、隠れて口にするのです。こういう場合、どう対応すればよいのですか?
鎮痛剤やお酒を買いに行ったり、飲むのを監視するには限界があります。私達家族は、言っても分からない姉にどう対応してよいか分かりません。主治医にも相談しましたが、「困ったね」としか答えが返ってきません。他の病院のドクターにも相談しましたが、「軽症だから、家で見るしかないよね」という答えでした。
隠れての鎮痛剤の内服や飲酒は、リスパダールが効いてくれば、自然におさまるのでしょうか?
それとも入院して、鎮痛剤やお酒が手に入らない環境にいた方が良いのですか?
前回の質問にも書きましたが、姉は病気がきっかけで離婚しています。
最近、離婚を後悔しているという言葉がありました。
仕事まで失ってしまい、お酒が飲みたい気持ちも分かります。
私も大切なものを続けて失くしたら、潰れるまで飲むと思います。
しかし姉は、統合失調症です。このまま、様子を見てよいものか。。。不安です。
特に母が疲れきってしまい、私も疲れてしまいました。
姉のことが心配な反面、いなくなればいいと思ってしまうことがあり、自分の感情をコントロールできなくなることがあります。本によく載っている悪い家族の見本ですよね。。。
林: 統合失調症(精神分裂病)であることをご家族がはっきりとお認めになられたことは、適切な治療への第一歩です。
リスパダールを内服し、4ヶ月経った今の状態は、随分表情が出てきて、テレビを見て笑ったり、漫画なども読む姿もみられます。ごくまれに家事を手伝うこともあります。
これは明らかに治療効果が出てきており、その意味では一つは安心されていいと思います。
けれども、ご心配されている内容はなかなか厄介だということは残念ながら否定できません。
1)鎮痛剤を隠れて薬局に買いに行き、1日に10包近く飲んでしまう
2)隠れて飲酒をする。1週間でウイスキーのボトルを空けてしまう(全て飲んだかは確認できず)
この2点は、このケースを総合的に見ますと、人格水準の低下の表れの可能性が強そうです。だとすると、どちらの行動の改善もなかなか難しいと予想されます。
統合失調症(精神分裂病)が慢性化すると、このような「軽い」問題行動がなかなか止まらないというケースが時々あります。確かにこれは一見「軽い」のですが、長い期間続くと、軽いから見過ごすというわけにもいかず、かといって入院させるほどのことにも思えないため、対策に難渋するものです。
主治医にも相談しましたが、「困ったね」としか答えが返ってきません。他の病院のドクターにも相談しましたが、「軽症だから、家で見るしかないよね」という答えでした。
主治医と他の医師からのこの答えには失望されたと思いますが、現実としてはやむを得ない答えとも言えるでしょう。
もっとも、「軽い」問題行動であっても、入院以外には対策がないというケースもありえます。精神病院に入院中の慢性統合失調症の患者さんの中には、一見するとこの人がどうして入院する必要があるのかと思える人もいらっしゃるのですが、ご家族も主治医も長く悩んだ末、結局は入院以外には対策がなかったということがあるのです。
この【0767】のケースがそうであるかどうかは、現時点では全くわかりません。長い目で見る必要があるでしょう。ただ、鎮痛剤にしてもアルコールにしても、飲んでいる量をご家族がしっかり把握する必要はあるでしょう。あまりに大量だった場合は、早めに入院という手段を取ることも考えなければならないでしょう。