精神科Q&A

【0727】うつ病ではなく統合失調症といわれたが納得できない


Q: 30代の姉のことについて、お伺いしたくメールしました。
姉は2年前に抑うつ神経症と診断され、デプロメール、デパス等で治療を受けていました。

私の考えですが、発症の原因と考えられることは、
1)発症の約2年前に結婚をし、産まれて初めて実家をでた
2)嫁ぎ先から職場まで車で1時間、毎日通勤していた
3)家事も仕事も一生懸命に頑張っていた
4)夫から人格を否定されるような暴言が何回もあった
5)夫から子どもをつくることを強く望まれた。妹は欲しくなかった
6)子宮内膜症があり、治療でホルモン剤の注射を1回した

姉の性格としては、コンプレックスが強く、内向的です。子どもが欲しくなかった理由も、自分に似てしまったら。。。という不安からだったようです。

症状としては、カタカタ震える、不眠、嫁ぎ先に帰れない、全身倦怠感、身支度ができなくなる(化粧をしなくなった、同じ洋服をずっと着ている、入浴さえ億劫など)、不安感、仕事ができなくなるなどでした。

嫁ぎ先を飛び出し、私のところに助けを求めてきたときは汚れた衣服を着てひどい状態でした。

姉の夫は、DVをする典型的な性格の持ち主で、病気の理解をしようともせず、結局1年半の別居の末、4ヵ月前、離婚にいたりました。

離婚した直後は、一時的に不安定だったのですが、上記のような症状はほとんど見受けられませんでした。仕事も休まないで働けていました。

しかし最近(2ヵ月ほど前)、職場でトラブルがありました。
姉の物忘れからくるミスが続いたようで同僚からかなりきつく言われたそうです。
そして、仕事に行けなくなってしまいました。やっと落ち着いてきた矢先だっただけに姉がかわいそうで、悔しくて泣きました。
症状としては、ソワソワして落ち着かない、動悸がする、生きることが辛いなどと言います。
また、鎮痛剤(ナロン顆粒)を一日に6包も続けて飲みました。あまり痛くないけど飲んでしまうと言います。職場のトラブル前も鎮痛剤を過剰に飲んでいたようです。

実は、離婚して間もなく(今から8ヵ月ほど前)、パキシルがオフになり(デプロメールから変更になった)、ドグマチールが開始になっています。大きなストレスがかかった直後に、何故パキシルをオフにするのか、私には理解できませんでした。

そこで主治医に聞いたところ(半年前から主治医が変わった)、うつではなく統合失調症ということでした。
姉の今までの経過や、症状を考えると、私はどうしても納得がいきません。
仕事中の物忘れはうつではない、と言われました。
不安から、鎮痛剤を過剰に飲んでしまうことは、統合失調症なのですか?
現在の処方は、眠剤のほかにリスパダール1T1×、ドグマチール3T3×です。
パキシルを切ったことと、今の状態に因果関係はないのでしょうか?
                                
                     

: 結論を先に申しますと、お姉さまは統合失調症(精神分裂病)である可能性のほうが、うつ病である可能性よりはるかに高いと思います。主治医の方針に従って治療を続けてください。

以上が結論ですが、本来はそれ以前に、このご質問メールの内容のかたよりを指摘したいところです。あなたにはお姉さまが統合失調症である可能性を受け入れたくないという気持ちがまず根本にあって、したがって「統合失調症でない」という回答を期待した形でこのメールを書かれたのではないでしょうか。たとえばこの一文です。

不安から、鎮痛剤を過剰に飲んでしまうことは、統合失調症なのですか?

これは質問の形をとっていますが、本当にあなたはこれを私に質問しているのでしょうか。誰が考えても、「不安から、鎮痛剤を過剰に飲んでしまう」ということが、そのまま統合失調症という判断につながるはずはありません。あなたはこのようにお書きになることで、統合失調症を否定するあなたの気持ちを強化しようとしているのではないでしょうか。
 これは一例にすぎませんが、メール全体からそういうトーンが感じられます。医師から告知された診断を否定したいという気持ちが強いご家族(またはご本人)から、実際の臨床でもよく感じられるトーンと同様です。

 ですから、あなたのメールの記載にはかたよりがあると私は推定しています。それでも、その推定を別にしてこのメールの内容をそのまま読んでも、やはり統合失調症は否定できません。なにより主治医の先生が統合失調症であるとおっしゃっていることが強い根拠になります。
 初期の統合失調症が、うつ病のように見えることはよくあります。ですから、医師から「うつ病」と言われても、それが統合失調症である可能性は残されています。
 しかし逆に、医師から「統合失調症」と言われて、それがうつ病である可能性はきわめて低いものです。
 現実を直視し、最善の治療を続けてください。

あなたがお姉さまを心配される気持ちは非常によくわかりますが、メール全体からは、心配されるあまり、お姉さまをひいきするような方向に思考や判断が傾きすぎているように読み取れます。そういう場合、結果としてはお姉さまにマイナスとなる行動を取ってしまうことが多いものです。それはたとえば、統合失調症の治療が遅れるというようなことで、現実にはよくあることです。

その後の経過(2005.2.5.)


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