精神科Q&A

 【0733】うつ病で飲酒量が増えた兄への家族の対処法


Q:私の実兄(30歳前半、公務員)がうつ病と診断されました。家族としてどのようにフォローして行くべきか皆目見当もつかず、もしアドバイスがいただけたらとメールした次第です。本人まだ通院し始めたばかりのようです。抗不安剤、抗うつ剤、眠剤などを処方してもらい、服用しているようです。

本人はエンジニアとして10年ほど勤務している公務員です。意を決して(精神科に行くことにかなり抵抗があったようです)病院に行ったのには、業務上のストレスが原因で、無気力、食欲不振、アレルギー症状の悪化、不眠などの症状があったからとの事でした。また、ストレスにより、業務で使用する器具類がさわれなくなってしまい本人はその事実が大変ショックだったようです。

幼少の頃から体が弱く、小児喘息やアレルギー性皮膚炎などの持病を持っていました。小児喘息は大人になるにしたがって発作はなくなってきたようですが、アレルギー性皮膚炎はいまだに苦しんでいます。そういったなかなか治らない病気を持っていること自体もストレスになっているようです。また、体質だけではなく本人の性格も関係しているとも思っています。周囲に対する同情感を捨てられず、本人が関わっても解決できない問題であっても見過ごすことができない強い正義感の持ち主でもあります。さらに自分の許容範囲と要求されたものとのギャップを自分の中で処理できない、たとえば「世の中、そういうこともある。でも、納得できなくても受け入れないとどうしようもない。仕方がないことだ。」とあきらめられない性格です。業務上必要な技能試験の際の出来事ですが、設問の答えには答え方が定められており、「て、に、を、は」から句読点の位置、実技試験に至っては一挙一動までもが正しくないと正解にならないというものなのだそうです。本人にはそれがどうしても納得できず、しかも正解できないと上官から罵倒されるということも許せないということでした。

うつ病と診断された事実について、本人は「やっぱり」といった様子でしたが、私の中では本当にうつ病なのかと疑う気持ちもあります。「今は酒しか飲めない。朝からビールを飲んでいる。ご飯は食べたくない。」と言い、500mlの缶ビールを半ケース(12本)以上飲んでもまだ飲みたいと言います。その割には買い物に誘えば同行し、楽しそうに笑いながら話をしながら買い物ができます。また、「今日は○○が食べたい」といって自ら進んで作り、一緒に食べたりもしました。車の運転もしています。主人を自分の趣味の会合に誘ったり(実現はしていませんが)、将来の夢なども自分から話します。自分の得意分野(興味のあること、趣味、仕事の範疇)について大変饒舌にとめどなく良く話します。

また、処方された薬に同封されていた説明書に「飲酒は控えること」とあるのに「今は酒しか飲めないから」と言って守りません。別の日には、車で来ているにも拘らず酒を勝手に飲み始めたので、飲酒を強い口調で叱ったら、沈んだ表情になり「俺がこんなになっちゃって済みませんでした。長居してすみません、帰ります」と突然帰ってしまいました。その後本人から連絡はありませんが、叱ってしまったことで病状を悪化させてしまったのではと不安です。また、私たち夫婦を頼っていた部分もあったとも思いますが、厳しく叱ったせいで本人を八方塞りにしてしまったのではと心配しています。

いくら家族の協力、理解が必要であったとしても、私たち家族は医者でもカウンセラーでもありません。本人をフォローしてあげたいと思ってもどのように接したらよいのか見当がつかないというのが正直なところです。主治医のところに一緒に行って相談したくても、どのように切り出せばよいものか、本人を傷つけることなく先生がおっしゃるところの「脳を休養させる」ためにはどうすればよいのか、一方で私たち家族は何をしてはいけないのか、「励ましてはいけない」とはいえ、本人の話を聞いているだけでよいものか、まったくわかりません。また、本人も「相談したい」と言ってはいましたが、「何を」相談したいのかが私たちには良くわかりませんでした。(本人が明言しないので)「酒をやめたい」、「食べられるようになりたい」、「病気を治したい」、「もう一度任務に戻りたい」などの何をしたいのかが私たちにはわからないのです。本人が言うまでは見守ろうと主人と話していますが、果たしてそれでよいものなのでしょうか。今は、「〜しないで欲しい」と言われたことは忠実に守ってあげている状況です。(親に言わないで欲しいなど)

ご多用のところ読んでくださってありがとうございました。


: お兄様は、うつ病だけでなく、アルコール依存症になっていると思います。うつ病とアルコール依存症の合併はかなり多いもので、これをめぐる問題はうつ病の相談室のp.87〜にお書きしたとおりです。

車で来ているにも拘らず酒を勝手に飲み始めたので、飲酒を強い口調で叱ったら、沈んだ表情になり「俺がこんなになっちゃって済みませんでした。長居してすみません、帰ります」と突然帰ってしまいました。その後本人から連絡はありませんが、叱ってしまったことで病状を悪化させてしまったのではと不安です。また、私たち夫婦を頼っていた部分もあったとも思いますが、厳しく叱ったせいで本人を八方塞りにしてしまったのではと心配しています。

あなたのこのご心配はもっともです。しかし、だからといって本人の言動をすべて受け入れていては、アルコール依存症の進行を助長するだけです。また、このようなケースでは、飲酒を続けている限り、うつ病も改善しないものです。

 対策は結論としてはきわめて単純で、「飲酒しない」、それ以外に方法はありません。このまま飲酒を続けていては取り返しのつかないことになるでしょう。病院でうつ病とアルコール依存症を並行して治療していただく以外にはないと思います。


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