精神科Q&A
【0710】お見合いで知り合った統合失調症の男性について
Q: お見合いで知り合って半年の彼のことでご相談申し上げます。
彼は、45歳のサラリーマン、統合失調症とのことです。多分、30歳前後に発病、服薬は40歳の頃より始めたようです。
つきあい当初は、かたくなな方でやや不愉快でしたが、挙動不審な点は無くむしろ理性的で温厚、知性の高さゆえの品格さえ感じさせられす。
優しくもないが冷たくもない、私に同調的でもなければ、批判的でも、支配的でもありませんので付合い易い方です。一貫して被害妄想も感じられません。
人間つきあいも下町の一杯飲み屋の友人、外国人女性からエリート層まで幅広く、私自身、彼に対して特に嫌と思う所はありません。
若い頃は、勉強もスポーツもかなり熱心だったようで、表には出しませんが知識欲、プライドは人一倍高いように思われます。
病名は六ヶ月の付き合い後やっと教えて頂きました。それまでは、ノイローゼと言って、その病状を尋ねても
「立ち入った事をあまり聞くものではない」と言い、実際、マイナートランキライザーしか服用していないと事実と異なる事を言っていました。
経緯は下記の通りです。
・病因はストレス。ストレス性下痢の既往もあり。
30歳前後の時、転居を伴う転勤をし、人間関係がこじれ始め、心身ともに疲れ果てた
30代半ば、元の職場に戻って来たがギクシャクしたまま 40歳を迎え、限界を感じて1ヶ月の自宅療養。
その後、配置換えを希望して、自ら中枢の仕事を離れ今はゆっくりとしたペースで仕事をしている。
・下記の薬を服用中とのこと。(実際この薬を確認していないので不確かです)
セレネース 1.5mg/日
アキネトン
セルシン 5mg 興奮時のみ
・症状…幻聴無し、今は時おりの頭痛が主症状。その他、統合性失調症の代表的な症状2,3(具体的には不詳)あるとのこと。最近まで、極端な出不精。
・病気についてかなり認識があり、これからも月一回の精神科とカウンセリングに通い、適度な睡眠、運動、仕事を心がける。
・ドクターからは、『健常人と統合失調症の真ん中の症状』と言われているとのこと。
私がおかしいなと思う点は、
・頻繁に言葉の語尾を曖昧にする。
『〜だ』と言えばいいところを『〜のような気がする』『〜でいいんじゃないかな』と言う。自信の無さというより相手に対して言い切る事への躊躇を感じているようです。
・「前、会った時、半日一緒だったけどおかしかったか?」と自信ありげに尋ねられたことが一度あります。
ということは以前、おかしな言動があったのかもしれません。
『30歳前後からずっとこれまで、会社には踏んだり蹴ったりな目に合ってきた』とよく口にします。
冒頭で30歳代頃より、発病と書いたのはその発言からの、私の憶測です。
と同時に逆の考えですが、もともと努力家の上、器用な方ですから周りからの妬み、軋轢は免れなかった事は充分想像がつきます。
当然の事ですが本人は何かと病気の事を隠し、上記の通りの漠然とした内容でしか判断できません。
私がどこまで支えれば良いのか、相手はどこまで頑張れるのか、一緒に暮らせば何に気をつければよいのか見当が付かず、結婚へ踏み切る事が出来ません。
不思議なくらい正常なのは症状が軽いせいなのか、薬のコントロールのおかげなのか、健常を装っているのか、私が贔屓目に見すぎているのか、さっぱりわかりません。
長々と、内容にまとまりが無く申し訳ございません。
私がお尋ねしたい事は、
(1) 転勤になった時は、単身で行くと言ってますが、可能なのでしょうか?
(2) ラッキーにも子供を生まれたとして生活は成り立つものでしょうか?当方二人ともかなり高齢です。病気の負担になりませんか?
(3) 加齢と共に病状の変化はありますか?
(4) 薬であんなに改善される事は凄いです。薬さえ服用すれば、再燃といった事はかなり防げるのですか?
それとも服用していても何かきっかけがあると、突然、再燃の恐れはあり得るのですか?予期できないのですか?
(5) 長期服用による弊害、副作用、或いは性格的変化などあるのでしょうか?
(6) 薬により能力はかなり抑えられての仕事ですか?症状が落ちついている時でも能力の低下は辛く感じるものですか?
今の彼に対して不満はありませんし一人の人間として大好きです。ただ将来の変化が心配です。回答いただければ幸いです。
林: 統合失調症(精神分裂病)の経過は様々です。服薬をきちんと続けることで安定した生活を送っている方はたくさんおられます。以下、ご質問の項目に順に回答します。
(1) 転勤になった時は、単身で行くと言ってますが、可能なのでしょうか?
もちろん可能ですが、単身でないほうが望ましいと言えるでしょう。それから、転勤先で信頼できる医療機関を見つけられるかどうかは重要です。
(2) ラッキーにも子供を生まれたとして生活は成り立つものでしょうか?当方二人ともかなり高齢です。病気の負担になりませんか?
もちろん生活は成り立ちます。そういう方はたくさんおられます。病気の負担になることはあり得ますが、その逆もあり得るでしょう。
(3) 加齢と共に病状の変化はありますか?
これは様々です。むしろ再発に気をつけるべきです。
(4) 薬であんなに改善される事は凄いです。薬さえ服用すれば、再燃といった事はかなり防げるのですか?
それとも服用していても何かきっかけがあると、突然、再燃の恐れはあり得るのですか?予期できないのですか?
両方ともイエスです。薬さえ服用すれば、再燃といった事はかなり防げます。しかしそれには限界があり、服用していても何かきっかけがあると、突然、再燃の恐れはあり得ます。
(5) 長期服用による弊害、副作用、或いは性格的変化などあるのでしょうか?
遅発性ジスキネジアという副作用が出る可能性があります。質問者は薬剤師とのことですので、ご存知と思います。薬による性格的変化はありません。ただし、統合失調症(精神分裂病)の症状としての性格変化はあり得ます。
(6) 薬により能力はかなり抑えられての仕事ですか?症状が落ちついている時でも能力の低下は辛く感じるものですか?
この方が飲んでおられる程度の量の薬により能力が抑えられることはあまり考えられません。能力低下を感じておられるとしたら、それは統合失調症(精神分裂病)の症状によるものでしょう。