精神科Q&A

【0679】うつ病がよくなり復職したのですが、まだまだ不安があります


Q: 私は41歳の男性です。
5年前に10年勤めた会社を辞めて、小さな個人経営の組織に就職しました。
それも独立を考え、しばらく技術の習得と経営について学ぼうと考えてのことでしたが、少人数の中での人間関係の悪化というのはたちが悪いもので、そのうち仕事への意欲も失せ、何をやるのも億劫になりました。仕事中にも動悸が激しくなったりと、体の異常を感じ、休みをとりたいとは思っても言い出せず、また休むことも許されなかったので、何とか出勤していましたが、これ以上続けるのは無理と考え、その職場を退職しました。

その頃はうつ病だとかの知識は全く持たず、ただ、職場選びに失敗したためストレスで疲れただけだと思い、次の仕事を探さず失業保険で食いつなげる間、休めば何とかやる気も出てくるだろうとタカをくくってましたが、不安はどんどん大きくなるばかりで、やる気もどんどん失せていく自分に気がつきました。
毎日大きな不安にさいなまれ、眠れないが何もできない状態が続きました。いわゆる「引きこもり」です。不安で眠れないため、深夜泣きながら朝まで歩き回ることもありました。
そんな折、今の仕事を紹介していただき、一旦不安は消えました。何も考えずに新しい環境に慣れようと努めました。

しかし、現在の職場について約半年後(今から2年半前です)から再度不安、倦怠感、仕事への意欲の低下が続くようになりました。自分なりにネットでいろいろ調べ、また兄にも相談して、一度心療内科に受診してみたらと言われ、受診することになりました。そこでは、はっきりと病名は言われませんでしたが、気持ちを楽にして、意欲を高めるようにとパキシル10mg、不眠対策にドラール等睡眠薬を処方され、その後、パキシル20mgまで増量し、睡眠薬もいろいろ試して、最終的にダルメート1カプセルに落ち着きました。2年ほどは意欲はバリバリとはいえませんが、不安は嘘のように消え、毎日問題なく出勤できるようになりました。日常生活も笑顔で過ごすことが多くなりました。

そこへ晴天の霹靂で昨年の秋、急性肝炎を発症、入院し薬剤性肝炎の可能性もあるとのことで処方薬をすべて中止ということになりました。精神的には落ち着いていた時期ではありましたので、中止することで特に落ち込むこともありませんでした。

そして今年に入って肝炎も治まり、処方薬を再開し、復職となりましたが、その頃より仕事への意欲が低下しはじめ、集中力も落ち、小さなミスを繰り返すことが多くなりました。当然上司からことごとく叱責され、精神的にも落ち込み、うつな気分が続くようになりました。倦怠感もあり、肝炎の再度検査も行いましたが、軽度の上昇はあるが…という程度でした。主治医からもパキシル20mgから30mgに増量され、トリプタノール、アモキサンも加えられましたが、トリプタノール、アモキサンは手足が震えたり、便秘がひどかったりで続けられないということで、パキシル30mg、レキソタン2mgを処方していただきましたが、あまり効果がありませんでした。そうこうしているうちにとうとう、朝起きられなくなり、仕事を休み、翌日もその翌日もずっと布団の中で過ごすという日々になり、主治医の先生に相談して休職というかたちにすればということで、診断書を書いていただき、2ヶ月の休職となりました。

休職中は何もせず寝て過ごすばかりで、休職期間終了間近になっても、復職後の不安が大きくなるばかりでしたが、このままではダメだと思い、診断書のとおり、今から2ヶ月前に何とか出勤することができました。当然復職後しばらくは仕事も軽減してもらい、責任もありませんから、出勤するだけが仕事みたいで楽に過ごせましたが、最近1ヶ月はそうもいってられず、休職前同様に責任も出てきて、仕事量も増えてきました。

上司も「もう落ち着いてるだろうから、どんどん仕事しなきゃダメだ」「今の君の仕事のやり方がそんな病気を引き起こす」とか仕事の仕方の指導や批判を厳しい口調で言われることもあり、それが頭から離れなくなりグルグルと同じ言葉が繰り返されます。休日もゆっくりとできずに、妙な不安感で何もする気がおきませんし夜もよく眠れません。また朝が怖くなってきました。

これは単に、責任のがれしたい擬態うつ病なのでしょうか?上司はどうもそういう考え方をしているようです。確かに責任のがれしたい自分はいます。逃げ込みたいためにうつのふりをしているのかもしれないという罪悪感もあります。主治医はその種の相談にはあまりのってくれずに、薬の種類を変えたり、増量したりということで様子みてくださいとのことで診察は終わってしまいます。
現在はパキシル20mg、レキソタン2mg、です。睡眠剤はロンフルマンとベンザリン5mgです。

病院にかかり初めて2年以上経ちますが、主治医からははっきりと病名は聞いておりません。うつ病なのでしょうか?と聞いても「う〜ん、どうでしょうか?」と言われるだけです。休職の際の診断書には「うつ状態」にしておきましょうと記入してくださいましたが…
私はうつ病なのでしょうか?それとも擬態うつ病と言われるものなのでしょうか?今後どのようにすればいいのでしょうか?


: 経過と症状からみて、あなたはうつ病だと思います。擬態うつ病ではないでしょう。うつ病で休職した場合、復職後どのくらいたったら通常の仕事ができるかはケースによってかなり違います。といっても、際限なく軽い仕事を続けられる職場がそうそうあるはずはありませんので、

復職後しばらくは仕事も軽減してもらい、責任もありませんから、出勤するだけが仕事みたいで楽に過ごせましたが、最近1ヶ月はそうもいってられず、休職前同様に責任も出てきて、仕事量も増えてきました。

これはごく一般的なことです。
仕事が増えた結果、あなたの状態がどのように変わったかが不明ですが、上司の方の言葉は以下のように記載されています。

上司も「もう落ち着いてるだろうから、どんどん仕事しなきゃダメだ」「今の君の仕事のやり方がそんな病気を引き起こす」とか仕事の仕方の指導や批判を厳しい口調で言われることもあり、

これは、回復期のうつ病の方に対する言葉としては最悪に近いもので、このような言葉はしばしば病状を悪化させるものです。ですから、

それが頭から離れなくなりグルグルと同じ言葉が繰り返されます。休日もゆっくりとできずに、妙な不安感で何もする気がおきませんし夜もよく眠れません。また朝が怖くなってきました。

このような結果になることは予想できることです。

しかし、ここにこんなことを書いてもあなたの上司の対応が変わるわけではありませんので、現実的な対策としては、この上司の言葉はできる限り受け流すのがいいでしょう。このような言葉に反応してあなたが自責的になったり、自分は擬態うつ病ではないかと心配したりするのは、うつ病の回復の妨げになります。あなたはうつ病で、きちんと治療を続ければ治ります。それを常に頭においてください。

なお、あなたの処方は、少なすぎるのではないかという危惧が私にはあります。休職前の抗うつ薬がパキシル30mgで、その量では回復しなかったという事実がありながら、今はそれより少ないパキシル20mgというのはちょっと理解し難いことです。パキシルを増量するか、他の薬の追加を考えていいと思います。候補としてはSSRIかSNRIになります。うつ病の相談室p.71〜にお書きしたように、私はSSRIやSNRIを最初から処方することには賛成しかねますが、あなたのケースでは、

トリプタノール、アモキサンは手足が震えたり、便秘がひどかったりで続けられないということで、

という既往がありますので、SSRI、SNRIがすすめられます。(手足の奮えはアモキサンによる抗ドーパミン作用、便秘はトリプタノールによる抗コリン作用と考えられます。SSRI、SNRIであれば、このような副作用は少ないです)

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