精神科Q&A
【0636】うつ病を宣伝している友人のHPをやめさせたい
Q: 友人(30歳、女性)について質問させてください。友人は約1年前に「うつ病」と診断されました。しばらく地元のクリニックに通っていましたが、1ヶ月ほどしてからは兄弟が住む都市(その友人もかつてその都市に住んでいた)に来て兄弟と一緒に住んでます。この時から会社は休職し、半年前に退職しました。薬はテトラミドを毎食後と就寝前、レキソタンを頓服でのんでいます。このほかにも2〜3種類抗てんかん薬・睡眠薬などが処方されているようです。
疑問に思うのは、「うつ病」と診断されて1ヶ月後には「1人ではご飯が食べられないので、誰か私と夕食を一緒にしてください」と自分のHPに掲載したり、「私はうつ病、こんなときもあっていいよね」などと誰にでも「うつ病」を宣伝していることです。
日記でも、朝は調子が悪く夕方になると元気になる、睡眠障害(朝早くに目が覚めて眠れない)があり、何事にも集中できないと書いてありましたし。
それから10ヶ月たった今も、友人のHP上の「日記」は続いています。
それを見ると、ここ10ヶ月、月の半分はライヴ・映画などに出かけ、人とも積極的に会っています。友人の言葉を借りると「兄弟と一緒に住むようになってから、人と会いたい気持ちや何かしたい気持ちが出てきたの。主治医は『楽しいこと一杯してね。楽しい疲れはうつに悪影響を与えない』と言うから」と、それを根拠に動いています。しかし、本が読めない、物忘れや手紙が書けないなど、自分ができないことは全部「うつ病」のせいにしています。そしてそれを、堂々とHP上で公開しています。
先生の「擬態うつ病」を拝見していると、会社を休んで競馬に行っている社員と違わないのではないでしょうか。周囲が「それだけ出かけられて、HPの日記も毎日書けるんだから、うつ病じゃないのでは?」という声には耳を貸しません。逆に「私は典型的なうつ病」と
アピールし、私には「あなたはうつ状態で軽くてよかったね」と言います。
そうです、私も「うつ状態」で精神科に通っています。しかし私は人と会う、話すのはおっくうで、誘われたら断れないので行く程度です。一駅先に行くだけでも疲れるので、よほどのことがない限り家にいます。私は経済的に厳しいのでアルバイト(1日3時間)はさせてもらってますが。私は5ヶ月前から休養しています。抗うつ薬も飲んでいます。それで少しずつ良くなってきているのが実感できます。もう1年大学に行くのは無理でしたから、休養の直前までは休学せずに卒業試験を受け、教育実習にも行き、卒論も提出しました。(主治医は薬の増量で対応)私の主治医は「その人はあなたとは違うタイプのうつです。少し距離を置いて付き合いなさい」と言います。
長い付き合いで面倒見のよかった友人と距離を置くのは、非常に心苦しいのですが、会うたびに「軽くてよかったね」といわれるのは非常に悲しく、話すのが重く感じるので仕方なくこの決断をしました。私が友人と距離を置いても友人のHPが続く限り「うつ病」が誤解されるのではないかと思います。そして友人のHPから間接的な被害者がでないか心配です。友人は本当にうつ病なのでしょうか。また友人のHPの日記をやめさせることは出来ないのでしょうか。このまま放っておくしかないのでしょうか
林: あなたのおっしゃる通り、この友人の方は擬態うつ病でしょう。【0406】や【0387】と非常によく似たタイプです。
こういう人から、
「あなたはうつ状態で軽くてよかったね」
などと言われては、あなたが憤慨するのも十分理解できます。
けれども、この人はこの人です。あなたの主治医の先生がおっしゃるように、距離を置くというのは唯一適切な対応でしょう。
私が友人と距離を置いても友人のHPが続く限り「うつ病」が誤解されるのではないかと思います。そして友人のHPから間接的な被害者がでないか心配です。
あなたのこの心配はもっともです。まさにこの心配が、私が擬態うつ病を書いた大きな理由のひとつです。
しかし、HPの日記をやめさせるなどというのは、余計なお世話と言わざるをえません。自分の気に入らない内容だからといって発言そのものを封じるのは非常に悪いことです。「気に入らない」というのが、私的に気に入らないだけでなく、客観的にみて不適切な内容であるとしてもです。もしどうしてもこの人のHPが気になるのであれば、たとえばあなた自身がそれを的確に批判する内容のHPを立ち上げるというような方法で対処すべきでしょう。