精神科Q&A
【0632】自殺した友人の病名は?
Q:
20代女性です。4年前に会社の同僚としてG子と知り合いました。会社では唯一の同い年で、会社帰りにお茶や買い物に一緒に立ち寄るようになりました。
そのG子が、先日、自宅で自殺してしまいました。
G子のお姉さんが、連絡の取れない彼女の部屋を、おばさんたちと見に行ったときに発見されたのです。命を絶ってから、10日くらい経っていたようだった、とのことでした。
ショックでした。私たちに何かできることがなかったのか、自問自答する毎日です。というのは、知り合ってまもなくしてから徐々に、彼女の言動に疑問を感じることが多くなっていたのです。箇条書きにしてみます。
*夜中に泣きながら電話がかかってきて、社長に怒られてクビにするといわれた。前にもひとりクビにされている(事実ではない)。と訴える
*利用者(老人。私達は介護福祉士です)に意地悪や嫌がらせをされる。←確かにそういう人もいるが、主任などに相談できないところが変だった
*外ですれ違った人に悪口を言われたので言い返した(事実かは不明)
*自分が事務所に戻ってくると社内の雰囲気が一変して暗くなり、自分の居場所はないと感じる
*同僚たちが自分をおとしいれようとしていている。
*私(このメールを書いている本人です)が彼女の悪口やありもしない事実を皆に言いふらした。私にしか話さなかったことを、外ですれ違った人にまで中傷された。「あなたがみんなに言ったようなこと、してないから」と度々言っていた。
*自分が利用されている
*会社の縮小で翌月の退職が決まった(15人中12人やめた)時から幻聴は激しくなる
*モヤモヤする、と泣きながら電話があり、しばらく泣き続ける。翌日会った時にはケロッとして何も話さない
*その途中で、道を歩いていたときに私が彼女を邪魔だと言ったという。今までにもあほとかバカとか聞こえていたという
*どうしても会いたいといわれて喫茶店で待ち合わせて、話し込んだ後カウンセラーみたいと言って帰っていった。旅行に行こうというので1泊した。その1週間後には、私を友達と思ったことはない。もう付き合いたくないという。考えが激変するようだ
*が、結局その後も変わりなく、自分と付き合っているとろくなことがないよとかいいながら。ある日、
*「自殺しろって言っただろう」と詰め寄ってきて、言ってないと言っても聞かない。
*彼女は両親が高校生から20歳頃にかけて相次いで亡くなっている。母親が亡くなって一人暮らしになってからというもの、親戚がいくら戻ってきて一緒に住もうといっても頑なに拒んできた。
彼女はなぜ自殺してしまったのでしょうか。何か心の病だったのでしょうか。私たちに出来ることはなかったのか。今でも大きなしこりになって、残っています。
林: このG子さんは、統合失調症(精神分裂病)にまず間違いないと思います。適切な治療を早く開始すれば、このような最悪の事態は避けることができたかもしれません。大変残念なことだったと思います。
あなたがメールで*の印をつけて箇条書きにされた内容は、どれも統合失調症(精神分裂病)の症状として納得できるものです。特に特徴的なのは被害妄想と幻聴で、たとえば
*その途中で、道を歩いていたときに私が彼女を邪魔だと言ったという。今までにもあほとかバカとか聞こえていたという
*外ですれ違った人に悪口を言われたので言い返した
このように、外でたまたま出会った見知らぬ人に悪口を言われる、という症状は、統合失調症(精神分裂病)にかなり特徴的なものです。このことは【0260】や【0453】にもお書きした通りです。非常によくある症状です。
さらに、以下の二つは、身近な人に対する被害妄想と判断できます。
*私(このメールを書いている本人です)が彼女の悪口やありもしない事実を皆に言いふらした。私にしか話さなかったことを、外ですれ違った人にまで中傷された。「あなたがみんなに言ったようなこと、してないから」と度々言っていた。
*「自殺しろって言っただろう」と詰め寄ってきて、言ってないと言っても聞かない。
また、次の三つは、ひとつひとつを取ってみれば、病気でなくてもあり得ることですが、他の症状とあわせると、やはり統合失調症(精神分裂病)の被害妄想と判断できます。
*利用者(老人。私達は介護福祉士です)に意地悪や嫌がらせをされる。←確かにそういう人もいるが、主任などに相談できないところが変だった
*自分が事務所に戻ってくると社内の雰囲気が一変して暗くなり、自分の居場所はないと感じる
*同僚たちが自分をおとしいれようとしていている。
また、以下のような感情の変化も、統合失調症(精神分裂病)の症状としてしばしば見られるものです。
*モヤモヤする、と泣きながら電話があり、しばらく泣き続ける。翌日会った時にはケロッとして何も話さない
その他の箇条書きの項目も、どれをとっても統合失調症(精神分裂病)として矛盾はありません。統合失調症(精神分裂病)は自殺率も高い病気で、特に発病初期には頻度が高いものです。残念ながら、G子さんの経過は、統合失調症(精神分裂病)を発症し、治療を受けなかった場合の典型的なものであると言わざるをえません。この病気についての正確な知識を周囲の方が持っておられれば、自殺は避けることができたかもしれません。非常に残念なことだったと思います。