精神科Q&A
【0591】父親と二人暮らしの弟の病状が思わしくありません。入院させるべきでしょうか。
Q: 30歳になる弟の事についての相談です。私は32歳の姉です。
弟は現在精神科に通院していますが 症状が改善されていないように感じます。(独り言 しかめっ面 独笑 人の真似 手の動きのぎこちなさ{こわばっている})
お薬を 頂いているのですが、父親に聞くと 「飲めと言っても飲めへん」と言って だいたい三分の一位しか飲んでいないという事です。
昨年母親が なくなって以来 独り言が多くなってきたと思ったら だんだん父親に対して 今までのうらみつらみを言い出したり、夜中に 寝ている父親に突然 熱いコーヒーを かけたり 父親が隣の部屋から 自分のペニスを勃起させていると言ったり、風呂の給湯器の音声案内が いつもは言うのに言わないのは 誰かが操作しているからだとか 言ったり、家の前で遊んでいる子供がうるさいと言って自分の部屋のテレビを家の外に投げたり、その後に包丁を出してきていました。
(多分 自殺しようと思っていたんだと思います。)
それらの症状が出たので 父親も病院に 連れて行って 病気だと言われたと言っていました。
父親は この病気は気長にやらなあかんと 弟をつれて仕事に行ったりしていますが お薬を ちゃんと飲ませていないのでだんだん悪くなっているように思えます。
父親の方は 「一緒に住んでる者しかわからん。ようなってきている。」と言っていますが そうは見えません。
現在 父親と二人暮しですが親戚のものは父親と離した方が良い(入院)と私にさいさい 言って来ているのですが、父親が娘の話や人の話に耳をかすタイプではないので困っています。 父親も弟がいなくなると 心配なんですが、とにかく弟を一日でも早く入院させるためには何処に相談すればよいのでしょうか?
又、強制入院というのはどういったものなんでしょうか?
私にできることはなんでしょうか?
林: 弟さんは統合失調症(精神分裂病)だと思います。きちんと薬物療法をすることが必要です。統合失調症(精神分裂病)に対しては、何をするにしても、基本としての薬物療法がなされていなければ、効果は望めません。ご自宅ではなかなかきちんと薬を飲めないということであれば、やはり入院すべきでしょう。現在のお父様の対応は、残念ながら病気の悪化を助長しているといえます。このままでは不幸な経過をたどる一方です。
ご質問の状況は、【0380】に似ているといえるでしょう。したがいまして【0380】と同様の答えになりますが、状況を改善に向かわせるには、第一段階として、お父様を説得して協力を得ることが必要です。そのためには統合失調症(精神分裂病)という病気についてよく説明して理解していただくことが必要です。しかし、病気のすべてを説明し、理解していただくことはもちろん無理でしょう。ここは、今はとにかく一度は入院させることを目標としたうえで、お父様の性格などを考慮して、入院を納得させる方向に持っていくような事実を説明するのが最善だと思います。
とにかく弟を一日でも早く入院させるためには何処に相談すればよいのでしょうか?
相談する先は保健所か精神保健福祉センターでしょう。
又、強制入院というのは どういったものなんでしょうか?
強制入院という言葉を、「本人の同意のない入院」という意味で使っておられると解釈してお答えしますと、これには医療保護入院と措置入院があります。
措置入院のためには、自傷他害のおそれがあることが条件です。現在の弟さんの病状は、措置入院が適用される状態ではないでしょう。
家の前で遊んでいる子供がうるさいと言って自分の部屋のテレビを家の外に投げたり、その後に包丁を出してきていました。
この事態からは、自傷他害のおそれがあるではないかと言われるかもしれませんが、この段階ではなかなか措置入院は認められにくいものです。もちろん、包丁で実際に自分か他人を傷つければ措置入院になるでしょう。しかしそれを待つなどというのは当然論外です。
とすると医療保護入院ということになります。これは、入院について、保護者の同意があることが条件です。保護者については法律に規定があり、患者さんが独身の成人の方の場合は、保護者の選任を受ける必要があります。これは家庭裁判所で行われます。裁判所での選任というと大変なことのようですが、実際は書類を提出すれば、スムースに選任されます。このケースでは常識的に考えてお父様が保護者でしょう。ということは、この回答の最初に戻って、お父様を説得するのが第一であるということになります。