精神科Q&A
【0574】26歳の友人が、一ヶ月前に突然記憶を失った
Q: 私は26歳の女性です。同年齢の友人は、3ヶ月前に中絶をしました。その後彼が責任逃れかのように逃げ回り、彼女は精神的にまいっていました。その彼は、普通ではないのです。彼は手術直後も彼女のそばにはいず電話も出ないし大嘘ばかりつきました。挙句にやっと捕まえたと思ったら彼は彼女に中絶したなんて嘘だろうとか死んで欲しいとか罪悪感も何もないと言い連絡をたちました。
私たちもさすがに彼がそんなこと言うわけがないと思っていたのですが本当に彼は彼女に対し言ってたようです。はたで聞いていた人がいますから間違いありません。
それから2ヶ月後、彼女はいきなり記憶がなくなりました。
私にいろいろと質問をしてくるのです。冗談かと思っていたのですが本気だったのです。家族からも私あてに連絡がありました。彼女は時々精神的に不安定なのか責めるようなメールや意味不明のメールを送ることもあります。記憶喪失の期間はおよそ広範囲に及ぶのではないかと思います。話していると会話はかみあわないものの至って普通の話し方です。これはどういう病気でしょうか?記憶喪失範囲からして重度のものでしょうか?
林: これは心因性健忘(解離性健忘)です。強い精神的なストレスを受けたときにあらわれるもので、ストレスに直接関係したことのみが記憶からなくなることもあれば、ある一定期間のことがすべて記憶からなくなることもあります。
心因性健忘については、【0379】、【0482】もご参照ください。まず間違いなく時間がたてば自然に回復しますので、あせらず見守っていただくのがいいと思います。
治療を受ける(精神科やカウンセラーなど)ことも考えられますが、薬やカウンセリングが心因性健忘に有効かどうかは不明です。もし不安が強ければ、それを和らげる治療には意義があるでしょう。ただし回復そのものへの効果はなんともいえません。
重度かどうかというご質問もありますが、
記憶喪失の期間はおよそ広範囲に及ぶ
というだけでは、残念ながら重度とか軽度とかいうことはできません。「広範囲」という内容を具体的にお書きいただければ、もっと適切な回答が可能だったと思います。
重度・軽度にかかわらず、自然に回復するものと思って間違いありません。心因性健忘の原因には、強いストレスがあるのが常です。この方の場合は原因が明らかですが、ケースによっては全く原因がわからず、ずっとあとになってからはじめてわかることもあります。健忘の時期に、原因を追求するのは必ずしもいいこととは限りません。周囲の方の対応としては、見守るのが一番だと思います。