精神科Q&A

【0537】息子が入学後半年で大学に行かれなくなりました。うつ病かと思っていたのですが、精神分裂病かもしれないと言われました。


Q: 私は47歳の女性です。息子は、小・中・高校と順調に進み、昨年の4月にストレートで某難関国立大学に入学しました。
 夏休み前までは、きちんと大学に通いサークルにも入り、授業にも興味を持っていたようです。ところが、後期に入った頃から、朝起きられなくなり、授業に出なくなってしまったのです。私と、夫は一生懸命意見したのですが、一向に効果がなく後期のテストもほとんど受けなくて、進級するのに、1単位足りなくて、留年してしまいました。
 それでも4月からは頑張ると言うことで、大学のそばに下宿しました。(我が家から通うと2時間近くかかるのです。)
 しかし、やっぱり大学に行けなくて、落ち込んでいますので、うつ病ではないかと思い5月に、某大学病院の精神科に連れて行きました。
 お薬ももらい、1〜2週間に1回通っていました。薬も最初のうちは飲んでいたのですが効果がないといって、8月の終わり頃から飲まなくなってしまいました。
 8月には本人の希望で、下宿もやめました。
 そして、9月から病院にも行かなくなってしまいました。
 大学がストレスになっているのかと思い、「後期から休学してみるか?それとも後1単位頑張ってとって2年に進級できるようにするか?」と聞いたところ「休学しないで頑張ってみる」との答でした。
 けれどもやはり、朝起きることができないのです。私も夫も仕事に朝行ってしまうので、大音量の目覚まし時計を買ってあげたのですが、それでも起きられないないようです。
 息子は、子供の時から素直で反抗期が無かったのでそれもいけなかったのかななどと夫と話したりしています。
 授業がないとき、や休日の時などは結構早く起きられます。友達にさそわれて時々、カラオケやパチンコなどには普通にいけます。
 けれど授業がある日などは起きられなくて、私が仕事から帰ってきて、18時すぎに起こしてやっと起きて、1日1食のこともよくあります。
 「自分はご飯を食べる資格はない。自分は人間の屑だ」とか言います。
 大学は卒業したいらしいのですが、体と心が行くことを拒否しているのです。
 本人が病院に行きたがらないので、私が、仕事を休んで、息子の通っている病院に相談に行ったところ、「息子さんはうつ病でないかもしれない、精神分裂病かもしれない。私の所でなくてもいいから、病院にきちんと行って、直して下さい」おっしゃいました。私は、息子は精神分裂病ではないと思うのですが……
 林先生はどう思われますか?
 また、大学のカウンセリングの先生に相談に行こうかと思うのですが、病院の方がいいでしょうか?


: なるべく早く病院を受診したほうがいいと思います。息子さんが精神分裂病(統合失調症)かどうか、このメールだけの情報では判断しかねますが、もし精神分裂病(統合失調症)であれば、一日でも早く治療を開始することが必要ですので、それを見極めるためにも早く受診してください。すでに医師から精神分裂病(統合失調症)の可能性を示唆されている以上、大学のカウンセリングに行く段階ではなく、病院に行くべきです。

 母親であるあなたが
精神分裂病ではないと思う
とおっしゃるのは、何か根拠があるのでしょうか。もし本などに出ている精神分裂病(統合失調症)の症状にあてはまるものが少ない、というのが根拠だとすれば、それは根拠になりません。20歳前後の人が、特に理由もなく何となく学校や社会に適応できなくなってきたというのが、精神分裂病(統合失調症)の初発症状だということは非常によくあることです。この時期には、幻覚や妄想のような本に出ているような症状はほとんど見られません。全く見られないことも稀ではありません。当初うつ病と思われていたのが、だんだんと精神分裂病(統合失調症)であることがはっきりしてくることも比較的よくあります(たとえば【0244】)。

 自分の子どもが精神分裂病であることを認めたくないという気持ちを持つ親御さんが多いのはよくわかります。しかし、精神分裂病(統合失調症)の初期の症状は、漠然としたものが多いので、この病気かどうかをご家族が判断されるのははっきりいって無理だと思います。あなたが
精神分裂病ではないと思う
とおっしゃるのは、判断というよりも願望であると私には思えます。願望は時として判断を誤らせます。そして、結果として現実から目をそらしたために、病気がどんどん悪化するのも非常によくあることです。治療が遅れれば、取り返しのつかない事態も予想されます。(たとえば【0440】を是非ご覧ください)

 もっとも、あなたの息子さんのように、入学してまもなく大学に行かれなくなるというのは、もちろん精神分裂病(統合失調症)でなくても十分ありうることです。この回答の冒頭で、「息子さんが精神分裂病(統合失調症)かどうか、このメールだけの情報では判断しかねます」といったのは、そのためです。

 しかしここで重視しなければならないのは、息子さんがかかっておられた先生の
精神分裂病かもしれない
というコメントです。

 実際、このメールの中で最も重視しなければならないのはこれだと思います。

 このコメントの本当の根拠が何であるかは不明ですが、少なくともご家族にこの重大な病気の可能性を告げるということは、精神分裂病(統合失調症)を思わせる何かが息子さんにあったのだと思います。

 メールの内容から、自慢の息子さんであることも読み取れます。
 その息子さんの病気を否認したい気持ちもよくわかります。
 けれども、治療の遅れは重大な帰結につながりかねません。
 精神科を受診するべきです。


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