精神科Q&A
【0497】うつ病はよくなってきたが、眠気に耐えられない(【0421】の続き)
Q: 【0421】をメールした38歳の警察官です。お答えありがとうございました。おかげさまで、いつかは直るだろうと大変元気づけられました。
この春の異動で、私の置かれた立場は変わりませんでしたが、新しい上司が来ました。
この方は、私の主治医のところにも話を聞きに行くなど、私の状態を把握しようといろいろ骨を折ってくださり、おかげで現在も何とか現職警察官として仕事を続けています。
ただ、いまだに、仕事に区切りがついた時など前日まで絶好調だったのに突然起きあがれないほど無気力になることがあります。
半年ほど前に、管内で放火殺人事件があり、このため差し出し人員になり、三ヶ月ほど前まで捜査本部の一員となり、内勤のみではありましたがかなり忙しく働いていました。
期間中は仕事を終えるのが午後10時等ということも珍しくありませんでしたが、多分、私自身興奮していたのでしょう。また、こんな自分でも手伝える仕事があると言うことがうれしく、ほとんど苦になりませんでした。
ただ、捜査本部が解散した後、「電池切れ」が来て、2週間ほど動けなくなりましたが・・・。
結局その後、「診断書を書いてもらって休め」との指示があり、合計で約1ヶ月休んでしまいました。
これで、発病以来、足かけ4年になってしまいましたが、各年ごとに1ヶ月から3ヶ月休んでしまったことになります。
現在は通常の業務に戻り、比較的安定しています。
ところで、今回メールしたのは、眠気が我慢できないのです。
ここ、2〜3ヶ月ほど、ちょうど、捜査本部詰めが終わって、2週間ほどうつが来て、それから立ち直って以来、通常の業務に戻ってからなのですが、座って書類などを書いていると、突然「ふぬけ」状態になって、意識がもうろうとして「大丈夫か」と周りの人から声をかけられたりすることがよくあります。
気まずい思いで、「すみません、ちょっとぼーっとしてました」と言ってごまかしているのですが、現職の警察官が勤務中にこれでは話になりません。
薬の量は、以前相談したときと同じで、ソラナックス0.8mgを1錠ずつ朝夕、パキシル20mg2錠とアモバン10mgを1錠飲んでいます。
ただし、以前から若干眠気が出る旨、主治医の先生に相談したところ
「朝のソラナックスは自分で様子を見て加減して。」
とのことでしたので、現在は毎日、朝は半錠に減らしています。
しかし、これ以上加減はできないように思えます。
祭り警備などで雑踏に出たり、長時間検問などにあたっている時など
「不安の前兆のようなふわふわした感じ、非現実感」
が、頭の中にわき出してくるからです。
今のところ、幸い仕事中に取り乱したことはありませんが。
睡眠については、寝付いてしまえば途中で起きることは無くなってきたのですが、朝方妙に現実っぽい夢、たとえば
「酔っぱらいの喧嘩の現場に行って、仲裁しようとして殴りかかられ振り払おうとするシーン」
などを夢で見て、実際に布団の上を転がって起きあがったり、手足を振り回したりして、一緒に寝ている家族を押しつぶしそうになったりしたことが何回かあります。1度は寝ている子供の上を転がって行き、危うく怪我をさせるところでした。
主治医の先生は
「生活リズム障害もはいってるなー。なるべく規則正しい生活を崩さないようにね。」
とアドバイスをくださいますが、職業上なかなかそうも行きません。
職務制限がかかっており、私は泊まりでの勤務を免除されているのですが、その分、交代制と異なり逆に不規則になっているような気がします。
ただ、眠くなるのは薬の副作用が大きいと思うのですが、何か良い方法は無いでしょうか?
また、大うつが来たときに、回復に必要な期間が徐々に短くなっているのは好転していると言っていいのでしょうか?
林: 徐々に改善にむかわれている様子をお聞きし、嬉しく思います。お書きになっているように、
「大うつが来たときに、回復に必要な期間が徐々に短くなっている」
ことも、間違いなく好転しているしるしのひとつだと思います。
ご質問の「眠気」ですが、はたしてあなたのおっしゃる「眠気」が、本当に眠気であるかどうか、難しいところだと思います。
抗うつ薬で治療中の方が「眠気がある」とおっしゃる場合、考えられることは3つあります。
(1) 本当の眠気。これは薬の副作用です。特に治療をはじめて間もない時期に出ることが多いものです。また、薬の量を増やしたときにも当然出やすいです。一般的な対策としては、薬を飲む時間を変える、つまり眠気の原因となっていると思われる薬を、可能なら寝る前にまとめて飲むようにするという方法があります。
(2) 低血圧。これも薬の副作用です。多くは立ちくらみという形で出ます。急に立ち上がらないように気をつける、というのが第一の対策ですが、それだけでは不十分な場合には、低血圧を改善する薬を抗うつ薬と一緒に飲むという方法をとります。
(3) うつ病そのものの症状。意欲の低下や、一時的な混乱した感じなどが、眠気と感じられることがあります。
あなたの書いておられる、
「座って書類などを書いていると、突然「ふぬけ」状態になって、意識がもうろうとする」
が、(1)(2)(3)のどれにあたるか、ちょっと判断できません。どちらかというと(1)のようにも思えますが、薬の量は何ヶ月も同じようですので、今になって眠気が出てくるというのはあまり考えられません。もっとも、以前よりもうつの症状がよくなってきたため、眠気がより強く意識されるようになった可能性はあります。(つまり、以前は症状が重かったため、眠気どころではなかったということです)
あなたのいま困っておられる「眠気」が、本当の眠気であるにせよないにせよ、夜の睡眠にまだ問題があることは確かだと思います。
「私は泊まりでの勤務を免除されているのですが、その分、交代制と異なり逆に不規則になっている」
という文章に意味が私にはわかりかねますが、とにかく主治医の先生の指示のように、規則正しい生活を心がけることが、眠気だけでなく症状全般の改善にプラスになるでしょう。また、夜の睡眠の改善策としては、寝る前の薬を調整するという方法もあります。
寝る前の薬、というのは、睡眠薬の調整はもちろんですが、寝る前に適切な抗うつ薬を飲むことが、睡眠パターンの改善に役立つことはよくあります。あなたの経験されている
「朝方妙に現実っぽい夢、たとえば 「酔っぱらいの喧嘩の現場に行って、仲裁しようとして殴りかかられ振り払おうとするシーン」 などを夢で見て、実際に布団の上を転がって起きあがったり・・・」
という現象は、専門用語でいうと、レム睡眠が関係した症状です。抗うつ薬には、これを改善する作用がありますので、このような症状に対しては、睡眠薬だけでなく、抗うつ薬に効果が期待できるのです。