精神科Q&A
【0485】エフェドリン入りのサプリメントを飲み続けてもいいか
Q: 私は56歳の男性です。
二年ほど前、体が非常にだるく、朝起きられない時があり、起きられても体中に鉛を詰め込まれたような感じで会社も休みがちになりました。気分的には落ち込んでいないため、鬱病ではないと診断されましたが、アモキサンが効くようで１年ほど飲みつづけました。その後デプロメールなども飲みましたが、副作用がきつくやめました。ところがダイエットを機会に飲みだしたエフェドリン入りのサプリメントを朝１錠飲むと大変調子よくなり頭スッキリ、積極的で快活になり自分でも人間が変わったように感じます。思うにいわゆる鬱病ではなく、心身症だったような気がしますが、正確にそう診断されたことはありません。ともかく良くなって嬉しい限りですが、一つ心配なのはエフェドリン入りのサプリメントを飲みつづけていることです。このサプリメントのおかげで食欲もある程度抑制され、ダイエットのリバウンドもないのですが、飲まないと２，３日で体がだるくなります。腕が重いような感じになりまた飲み始めると直るので明らかに直接的に効いている感じです。といっても、エフェドリンが良くないことは知っていますので、何か他のもので代替することはできないかと考えています。よろしくお願いいたします。
林: エフェドリンはやめるべきです。また、あなたはうつ病の可能性が強いと思います。あらためて抗うつ薬による治療を開始することをお勧めします。
エフェドリンは、気管支喘息などに使われる薬ですが、エフェドリン精神病と呼ばれる副作用があります。これは、エフェドリンが脳に対して、アンフェタミン(覚醒剤)に似た作用を持つためです。ただしその作用はアンフェタミンに比べて弱いため、治療薬として使われています。といってもそれは定められた使用法や量を守って用いるべきもので、サプリメントの形で服用するのは危険です。そもそも治療薬として認められているのは気管支喘息のためであって、あなたが書かれているような
「頭スッキリ、積極的で快活になり自分でも人間が変わったように感じます」
ということを目的にした使い方は、明らかにエフェドリンの覚醒作用としての効果を享受されているわけで、これは覚醒剤を使用していることと基本的に違いはありません。あなたが現在使っておられるサプリメントは中止し、抗うつ薬による治療を開始すべきです。
サプリメントと呼ばれるものに、いろいろな薬が入っていることが多く、かなりの危険を伴うことは、【0076】、【0282】、擬態うつ病の147ページなどに書いた通りです。あなたのケースでは、エフェドリン入りと明記されていたので、ある意味では誠実なサプリメントだといえるかもしれません(ただし、本当にエフェドリンだけかどうかは疑問をもったほうがいいでしょう。ダイエットに効果があると称するサプリメントに入っていることが多いのは、一に甲状腺ホルモン、二にアンフェタミン、つまり覚醒剤です)。「自然の成分」と称していて実は薬が入っていて、そのために色々な害が出ることは、よくあることで、昔から繰り返されてきたことでもあります。製造元が信頼できないサプリメントを飲むのは非常に危険なことです。
それからあなたの症状についてですが、気分的には落ち込んでいないというのは、うつ病でないという理由にはなりません。確かに気分の落ち込みはうつ病の主症状ですが、その他にも不安焦燥、億劫感などもあり、どの症状が強く出るかは人によっても病気の時期によっても違ってきます。したがって、
「気分的には落ち込んでいないため、鬱病ではないと診断されました」
とすれば、それは不合理なことです。
経過からみて、あなたはうつ病だと思います。うつ病はエフェドリンや覚醒剤に頼らなくても治ります。