精神科Q&A
【0469】うつ病から復帰した同僚の私語が限度を超えています
Q: 29歳女です。
現在私の勤めている会社にも「うつ病」で四半期程の休暇を取り、今は職場復帰して仕事をしている30代男性の同僚がいます。
うつ病はストレスが原因だと思っていたため、やはり「頑張ってくださいね」とか「すみませんがお仕事お願いできますか」とか、とにもかくにも負担をかけるような言葉は言わないようにしていました。
ただ、休職する前もかなりひどかったのですが、職場復帰してからというもの、拍車がかかったように私語が多くなり、他の同僚と(自分の)会社の悪口や人の悪口、上司の悪口そして社内だけではありますがお客様の悪口を平然と他の新入社員の前で言ったり、世間話やうつ病の薬の知識についてひけらかすように話し(仕事の話もなくはないのですが)都合が悪くなると「うつだから」とか「あたま狂っちゃったから」と朝から晩まで喋り通しで、私はもとより、他の社員が「仕事にまったく集中できない」、「頭が痛くなる」とこぼすほどの状態になっています。
常識的に考えて、(もし病気でなかったなら)即刻処分の対象になりうると思われます。
このまま病気だからとほうっておけば他の社員の仕事へのやる気をそぐだけでなく、会社全体のモラルや協調性、及び効率にも影響を及ぼしてしまうと思っています。小さい会社なので社員全員が一つのフロアに収まっており、離れた席で仕事をしていても聞こえてしまいます。
「迷惑なので私語するときは人に迷惑をかけない場所まで行って喋りなさい」と注意するのは大丈夫なのでしょうか?
私のためにも、そして私と同じように私語で悩む同僚のためにも、なんとか、彼の病気を悪くすることなく私語をやめさせる注意の仕方、対処の仕方を教えていただけないでしょうか? これは社会人として最低レベルのマナーの話で、病気云々以外の問題かもしれませんがどうぞよろしくお願いいたします。
林: おっしゃるとおり、社会人として最低レベルのマナーの話だと思います。
病気の人には、健康な人にはわからない悩みや苦しみがあります。ですから、職場でも学校でも、あるいは家庭でも、仮に期待される役割を100%はたすことができなくても、あたたかい目で見ていただきたいものです。
しかし、それには限度というものがあります。
この方のように、職場で同僚の迷惑をかえりみず傍若無人のふるまいを続けている。これは社会人として最低レベルのマナーの問題であって、病気だから大目に見るような話ではないでしょう。もし仮に(仮にです)これが病気の症状だったとしても、この段階までくると、「病気を悪くすることなく注意する方法」を考えるのは上司の役割であって、同僚の方がそこまで配慮する必要はないと思います。病気だからといって、言動が無制限に容認されるはずはありません。実際には大部分の病気の方は、周囲に迷惑をかけないよう細心の気をつかい、自分の症状に耐え、時には病気を隠して、懸命に仕事をしておられます。このメールの人のような行動は、そういう方に失礼であるばかりでなく、心の病に対する周囲の方のイメージを著しく悪化させるものだと思います。
なお、この方の病気ですが、うつ病であるとはほとんど考えられません。
仕事中の私語が限度を超えている、しかもその内容は悪口ばかり、こういった傍若無人のふるまいを、うつ病の人がすることはまず考えられないのです。おそらくあなたもこの方が本当にうつ病かどうか、疑問を持っておられるのだと思います。だからこそ病名に「うつ病」とカギ括弧をつけておられるのでしょう。この方はむしろ擬態うつ病と考えるべきでしょう。
うつ病の人は、他人を責めるべき場面でも、自分を責めてしまうことが多いものです。
「他人の悪口ばかり言っている」
というのは、明らかに自分ではなく、他人を責める態度であり、また、
「うつ病の知識についてひけらかすように話す」
「都合が悪くなると「うつだから」と言い訳する」
これらはいずれも擬態うつ病のなかのある一群の人々の特徴であって、本物のうつ病ではほとんど考えられない言動です。
そして話は最初に戻りますが、この方の病名が何かということはこの際本質的な問題でなく、これは社会人としての最低レベルのマナーの問題だと思います。