精神科Q&A
【0463】31歳の主人が半年前から徐々に人が変わってしまいました
Q:
主人31歳が半年前から徐々に人が変わってしまいました。10年以上長距離のトラックの運転手をしていたのですが、半年前に辞め、クレーンの免許を取得し、最近クレーンの会社に勤めだしました。
ここ半年で、だんだん、常識で考えれば理解できることが、分からなくなってしまいました。職場を決めるのも、私が決めなくては、判断出来ない状態です。夜も、一晩中起きていたり、私も一緒に起きていないと、すごい剣幕で怒り、夜中に24時間開いてるデパートなどに用もないのに、朝方までウロウロしたりします。職についてからは、夜眠る努力はしますが、寝付くのですが、すぐ目が覚めてしまうようです。職場では、社長に少しきつい事を言われて社長を目の前に涙を流してしまい、「気が小さい」と言われたそうです。
半年前までの主人は何事にも負けん気が強く逞しかったのですが、今は自分の判断すること、やることに自信が無いようです。今では、私にまで、申し訳ないと言う態度です。これは、うつ病なのでしょうか? 病院で診察してみたほうが良いのでしょうか?
私は看護婦をしています、うつ病の患者さんとは、あまり、接したことがありませんのでよくわかりません。一日も早く昔の強気な主人に、笑顔を取り戻してあげたいのですが。
林: ご主人の年齢(31歳)で、「半年前から徐々に人が変わってきた」という場合、病気の発症率から考えると、可能性の高いのはうつ病と精神分裂病(統合失調症)です。
この二つの病気を念頭において(つまりご主人がこの二つの病気のどちらかであると仮定して)ご主人の症状を見てみますと、
「夜も、一晩中起きていたり、私も一緒に起きていないと、すごい剣幕で怒り、夜中に24時間開いてるデパートなどに用もないのに、朝方までウロウロしたりする」
というのは、うつ病ではあまり考えられない症状です。精神分裂病なら、比較的よくある症状です。
「社長に少しきつい事を言われて社長を目の前に涙を流してしまった」
これは、自責感が強くなっているとも解釈できますし、感情が変化しやすくなっているとも解釈できます。うつ病、精神分裂病のいずれでもある症状です。
「自分の判断すること、やることに自信が無いようです。今では、私(妻)にまで、申し訳ないと言う態度」
うつ病らしい症状です。ただし、精神分裂病でもありうる症状ではあります。といっても、「自信がない」「申し訳ないという態度」といっても、実際に診察するとうつ病と精神分裂病ではその内容のニュアンスが違うことが多いものです。このニュアンスを言葉で表現することは難しく、精神科医に診てもらってくださいと申し上げるしかないのですが、あえて言えば精神分裂病の方の申し訳ないという態度には現実から微妙にずれた奇妙なものがあるということになるかもしれません。(「現実から微妙にずれた」ということの具体的な説明を求められるかもしれませんが、結局そういうニュアンスであるとしか言いようがありません)
ただし、以上のようなことは、あなたのご主人がうつ病か精神分裂病のどちらかであると仮定してのことにすぎません。そしてこの仮定は、「31歳の男性が、半年で徐々に人が変わってきた」ということのみから導いたものにすぎませんので、仮定自体が間違っている可能性も大いにあります。他の病気かもしれないし、病気でないかもしれない。つまり何もわからないということになるのですが、重大な病気の可能性があり、しかも日常生活に支障をきたしている以上、精神科の受診は必要だと思います。それも、早く受診されたほうがいいでしょう。
それからもうひとつ、「他の病気」の可能性の中に、覚醒剤中毒後遺症(もしくは覚醒剤使用中の症状)があります。これは、症状としては精神分裂病そっくりになります。
いま私がこれを指摘するのは、長距離トラックの運転手という、あなたのご主人の前職のことがあります。
もちろん、長距離トラックの運転手ということだけで、覚醒剤使用を疑うのは偏見というものでしょう。しかし、現実の臨床では、こうした職業の方が精神分裂病に似た症状で受診された場合、覚醒剤の可能性を疑うのはある意味では当然です。
そして覚醒剤を乱用していることは、家族もまったく気づいていないこともよくあるものです。あなたのご主人にそうした徴候がないかも、慎重にチェックすべきだと思います。