精神科Q&A
【0418】アル中の父を受診させたのですが、アルコール依存症ではないと押し切られて空振りに終わってしまいました
Q: 67歳の父がアル中で困っています。同居している田舎の母が可哀相でたまらない日々を過ごしています。酔ってわめき散らすのですが、暴力は振るわないので警察は介入できないそうなのです。夏に帰るたびにひどくなっている気がします。で昨日、警察の方のアドバイスに従って、別件(皮膚科)で病院にいってそこでなんとか精神科の医者にということで皮膚科のほうにいってから同じ病院の精神科についでに受診させました。
このごろ酔って騒いで近所からも警察に苦情が言っている状態なので、今は(あまり酔っていない状態に)まともだけれど、酔うと大変になるから念のため、となだめすかしてやっとの思いで受診させたのですが、結局アルコール依存症ではないと押し切られて空振りだったそうです。
シアナマイドとノックビンなどの抗酒剤をネットで知りまして欲しいのですが、どうしたら手に入るでしょうか。
本人を病院へ連れて行くのがとても大変で困っています。毎日頭から離れません。なにか母にしてやれることはないでしょうか?
林:
まず、お父様がアルコール依存症なのか、そうでないのかが問題です。「酔って騒ぐ、暴力をふるう」というだけでは、アルコール依存症とは言えません。病的酩酊や異常酩酊でもそういうことはあり得ます。単に酒癖が悪いというレベルということも考えられます。ですから、このメールの情報だけから、お父様がアルコール依存症かそうでないかを判断するのは難しいです。
いま「判断するのは難しい」と言ったのは、厳密に言えば難しい、という意味です。アルコールのことで家族が非常にお困りの場合は、やはりアルコール依存症の可能性が非常に高いと思います。おそらく、メールには書かれていない問題がたくさんあるのでしょう。ですから、以下、お父様がアルコール依存症であるということを前提にお答えします。
やっとの思いで精神科を受診させたのに、「アルコール依存症でないと押し切られて空振りだった」というのは、本当に残念な思いと脱力感を感じられたと思います。けれども、これは、受診させる方法を誤ったと思います。
ご家族だけが、最初に精神科か保健所にご相談に行くべきだったでしょう。そのうえで、無理にでも本人を連れて行くかどうかのアドバイスを受けるべきでした。
その理由の一つは、初診の時点で本人とご家族が一緒に受診しても、正確な情報を医師に伝えにくいことです。本人の前では、ご家族もなかなか本当のことを言いにくいことがあると思います。
そういうことがないとしても、もう一つの理由は、残念ながら精神科だからといって、アルコール依存症の治療をしてくれるとは限らないということです。これは医師としての務めを果たしていないと言っていいと思いますが、それを言っても現実は解決しないのであって、受診される側としては、はたしてアルコール依存症を診てくれる医者か、診てくれない医者かを判断する必要があります。それには一度話をしてみなければわかりません。そのためにも、まずご家族だけが相談・受診されて、その医師がアルコール依存症の治療を任せられる医師かどうかを判断するべきなのです。それで空振りしたら、確かにそれも徒労ではありますが、本人を無理に連れて行って空振りするよりはずっとましです。
以上のようなことは、今からでも遅くありませんので、実行すべきだと思います。4.で申し上げたように、相談に行くのは精神科でも保健所でもいいと思います。お住いの地域の保健所で、アルコール依存症を対象にした相談(たとえば、「酒害相談」という名前でやっている)があれば、それが一番いいでしょう。保健所なら、どの病院を受診するのがいいかという情報も持っているのが普通です。
それから、最後に、
「シアナマイドとノックビンなどの抗酒剤をネットで知りまして欲しいのですが、どうしたら手に入るでしょうか」
とお書きになっていますが、シアナマイドやノックビンを手に入れて、どうなさるおつもりでしょうか。こうした薬を本人の十分な理解なしに飲ませることは絶対にしてはいけません。もし本人が、シアナマイドやノックビンを飲んだ上でアルコールを飲んだら、大変なことになります。それは殺人にも等しい行為です。絶対にやめてください。