精神科Q&A

【0416】新聞紙や拾ってきた物を家にため込む父・・・脳の検査は異常なしでした(【0312】のその後)


Q精神科Q&A【0312】新聞紙や拾ってきた物を家にため込む父ーで回答して頂いた者です。ご回答を本当にありがとうございました。何らかの突破口を捜し求めていた私たち家族は、早速父の通っている大学病院の主治医に、家族で相談に行きました。その結果をご連絡させていただきます。

 この精神科Q&A【0312】の内容を印刷したものを主治医に読んで頂いて、父には悪性リンパ腫の検査の一環だと説明し、定期健診予定の1月に脳のMRI検査を行い、脳器質性の精神障害の可能性を診てもらう事となりました。父は、「今度は嫌な検査をすることになった」と不満を漏らしていたそうです。
 そして、先日その検査結果が出ました。主治医から直接弟に連絡してもらいました。結果は全く異常無しで、主治医が言うには、「もし脳に病変があるならば、頭痛などの症状があるはずですし・・・」ということだったそうです。
 私たち家族は、おかしなものですが正直な気持ち、何か異常があって、それを治療する事により、父のおかしな行為が無くなり、家の内外に積もった物の山を捨てられたらどんなに良かったかーと不謹慎な感情を抱いてしまったほどでした。父と住んでいる母は、父の気に障ることを言うと自分に被害が及ぶので、相変わらず何も言えずにいます。そして私と話すたびに家の惨状を嘆き、動悸がして体調が悪いとか耳鳴りがすると言います。母自身は、もともと鬱になりやすい性質で、父が家に物をため込み始めて一年ほどたった4年前には、歩くこともままならなくなり重い鬱病と診断されて3ヶ月ほど入院治療したことがあります。その時には自殺願望がありとても淋しがっていたため、私も1ヶ月ほど会社を休んで兄弟と交代しながら病室に寝泊りしました。現在は、調子の良くない時に自宅で薬を飲んでいるようです。
 ですから、母には元気な時に「そんなに辛い思いをするくらいならお父さんと離婚してもいいんだよ、別居してみてもいいんだよ」と勧めて見たものの、母は全くそのつもりはないようです。母がこのような状態なので、父の事への対処を考えるにも、母の様子を見ながら兄弟で相談したりーといった状況です。父に、直接私たち子供がため込んだ荷物の事を言うと、子供たちが帰った後で父の怒りが爆発し、母に被害が及びます。

 家族で解決するにはとても難しい、と私は感じています。脳器質性の障害の可能性は無いならば、本人の性格があまりに悪いせいなのでしょうか?どこに相談したら良いかもよくわからず、こうして林先生のHPに相談させていただいています。次なる突破口として、どういった手段をとり得るでしょうか?

(なお、テレビ番組で先日、あまりに父に似たケースを見ました。63歳の男性が自宅の周囲に自転車やその部品を10年に渡り山積みしていました。庭から玄関から山積みにしている所、捨てるのを拒んでいる所が、父とそっくりでした。その番組では、出演者が男性の自宅に出向き、捨てるよう説得し、実際にトラックを用意して数人の若者で捨てていました。男性が最初は捨てるのを拒みながらも、最後には自ら作業をともにし、「ありがとう、助かった」とまで言っていました。同じような人が世の中にはいるものだと思いましたが、我が家の父に関しても、何かのきっかけを通して本人自ら捨てる気持ちになるまで待つしか無いのかなーと思ってしまいました。しかしそれでは母の我慢が持ちそうに無いので、そういうわけにも行きませんが・・・。)



: このメールを頂いて、私はあらためて【0312】の内容を再度よく読んでみました。その結果、やはり私の意見としては、脳器質性の精神障害の可能性が高いと思います。そう考える大きな理由の一つは、60歳前後になってから、それまでとは違った異常な行動が出現したという点です。

「本人の性格があまりに悪いせいなのでしょうか?」

と書いておられますが、そういう可能性は低いと思います。もっとも、元々の性格が、退職という生活上の大きな変化、さらには加齢によって、誇張されて出てくることはあります。お父様の、「癇癪持ち」という面だけが強くなったのであれば、性格の問題と判断するほうが普通かもしれません。

 けれども、【0312】に書かれているような物の集め方は、性格だけで説明できるとは思えません。脳内に何らかの病的な過程が起きている可能性の方が強いと思います。(繰り返しますが、元々お父様にこのような収集癖があったのなら別です。その場合でも、脳器質性障害を否定することはできませんが、性格という解釈もできる、ということになります)

 MRIで異常がなかった、ということは、少なくとも大きな病変はないということが確認されたにすぎません。私なら次にSPECT(脳血流の検査)や脳波も施行したいと思います。MRIで病変がなくても、こうした検査で異常が見つかることはよくあります。

 ですから、今の段階では、

「脳器質性の障害の可能性は無い」

と言い切るのは早すぎます。

「主治医が言うには、「もし脳に病変があるならば、頭痛などの症状があるはずですし・・・」ということだった」

と書いておられますが、これは聞き違いでしょう。脳に病変があっても、頭痛などの症状がないことはいくらでもあります。というより、頭痛などの症状があるほうが例外的です。おそらく主治医の先生は、「頭痛などの症状があってもおかしくない」とおっしゃったのではないでしょうか。

 ところで、
「この精神科Q&A【0312】の内容を印刷したものを主治医に読んで頂いて・・・」
とのことですが、どうか主治医の先生に、横から失礼な助言をして申し訳ないと私が詫びていたとお伝えください。精神科Q&Aに質問される方へにお書きしたように、メールでの情報からのアドバイスには大きな限界があり、直接診ておられる先生の判断の方がはるかに正確だと思います。私が今回、「まだ器質性障害の可能性が強い」と言っているのは、あくまでもメールからの情報を元に判断しているにすぎませんので、主治医の先生の方の判断に従ってください。

 もっとも、それでも私がこうして回答しているのは、メールからの判断という条件つきにおいては、正しい回答だと信じるからです。繰り返します。脳器質性精神障害の可能性はあると思います。検査、治療を含め、精神科医の診断を受けるべきだと思います。

なお、ご質問の最後にテレビ番組のことを書かれていますが、この内容を読んだ限りでは、これは明らかにフィクション(ドラマ)です。仮に(あくまで「仮に」です。ありえないとは思いますが)このようなことがあったとして、それを撮影して番組にまとめることができるとはとうてい考えられません(撮影の手順などを想像していただければ、これが不可能なことは明らかだと思います)。フィクションに惑わされて、現実の対応を誤ってはいけません。

もしこの番組が、実話として放映されていたとしたら、犯罪に近い行為だと思いますが、まあテレビ番組をまともに相手にしても仕方ないですね。 

 


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